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「ネパール-アジアの息吹に触れる/5日間 」
1.旅のきっかけと準備
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ある雨の日曜日のこと。夫が何気なく見ていたドキュメンタリー番組で、ヒマラヤの麓に広がる神秘的な国、ネパールの映像が流れた。エベレストの雄大な姿、カラフルな祈祷旗がはためく寺院、笑顔で出迎えてくれる地元の人々。その瞬間、私たちの心は既にネパールへと飛んでいた。
2.Day1: カトマンズへの到着と古都の息吹
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カトマンズ到着。
トリブバン国際空港に降り立った瞬間、ネパールの空気が私たちを包み込んだ。スパイシーな香りと、どこか懐かしい土の匂いが混ざり合う独特の空気。私たちは思わず深呼吸をした。
空港を出ると、すぐに予約していたタクシーが待っていた。運転手のラメシュさんは、にこやかな笑顔で私たちを出迎えてくれた。「ナマステ!」彼の挨拶に、私たちも「ナマステ」と返す。この言葉一つで、心がほっこりと温かくなるのを感じた。
タクシーは混雑した道路を縫うように進んでいく。窓の外には、色とりどりのサリーを着た女性たち、オートリキシャ、路上で商売をする人々の姿が次々と流れていく。カトマンズの街は、まるで生きた生物のように息づいていた。
「あそこを見てください」ラメシュさんが指さす先には、ダルバール広場が見えてきた。「ネパールの心臓部です」と彼は誇らしげに説明してくれた。
私たちが選んだ宿泊先は、ダルバール広場に程近いドゥルバル・スクエア・ブティックホテル。伝統的なネワール建築様式を取り入れた外観が印象的だ。
チェックインを済ませ、部屋に入ると、窓からダルバール広場の一部が見えた。
荷物を置いてすぐに、私たちはダルバール広場へと向かった。世界遺産に登録されているこの広場は、かつてのネパール王国の中心地。華麗な彫刻が施された寺院や宮殿が立ち並び、その歴史の重みを感じさせる。
広場に足を踏み入れた瞬間、タイムスリップしたような感覚に陥った。赤レンガの建物、木彫りの窓枠、そして至る所に置かれた神々の像。すべてが異国情緒に溢れていた。
私たちは、カストマンダップ寺院を訪れた。カトマンズの名前の由来となったこの寺院は、一本の大木から作られたという。その精巧な彫刻の数々に、私たちは息を呑んだ。
夕暮れ時、広場は地元の人々や観光客で賑わいを見せていた。子供たちが鳩を追いかけて走り回り、お年寄りがベンチに腰掛けておしゃべりを楽しんでいる。その光景を見ていると、ここが単なる観光地ではなく、人々の生活の一部なのだと実感した。
レストラン「OR2K」
住所:Mandala Street, Thamel, Kathmandu 44600
https://www.or2k.com/
ダルバール広場散策の後、夕食は近くのタメル地区にあるレストラン「OR2K」へ。ベジタリアン料理を中心としたメニューが特徴的だ。
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おすすめメニュー:
・モモ(ネパール風蒸し餃子)
・ダルバート(豆カレーとごはんのセット)
ひとことメモ:階下のクッションシートで食事をすると、よりネパールらしい雰囲気を味わえる。
レストランでは、隣のテーブルに座っていたイギリス人カップルと意気投合した。彼らもネパールは初めてで、お互いの旅の計画を語り合った。「明日はパタンに行くんですよ」と私が言うと、彼らは「素晴らしい選択ですね。私たちも行ってきましたが、工芸品の数々に目を奪われましたよ」とアドバイスをくれた。
食事を終え、ホテルに戻る頃には、すっかり夜の帳が下りていた。街頭には、まだ多くの人々の姿があった。屋台の明かりが暖かく灯り、スパイシーな香りが漂う。
3.Day2: パタンの工芸品とヒマラヤの絶景
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翌朝私たちはパタンへと向かった。パタンは、カトマンズから車で約30分。「芸術の街」として知られるこの古都は、私たちの期待を裏切らなかった。
パタンの中心部に位置するダルバール広場は、カトマンズのそれとはまた違った魅力を放っていた。より洗練された雰囲気で、細部にまでこだわった建築物の数々に目を奪われる。
クリシュナ寺院の前に立つと、その荘厳さに圧倒された。55の窓を持つこの寺院は、まるで芸術品のよう。私たちは、地元のガイドさんに案内してもらいながら、寺院の歴史や建築様式について詳しく教えてもらった。
「この寺院は、17世紀に建てられたんですよ」とガイドさんは説明してくれた。「毎年クリシュナ神の誕生日には、この広場で盛大な祭りが行われるんです」
「次はお祭りの時期に来てみたいね」と夫。私も頷いた。
次に訪れたのは、パタン博物館。かつての王宮を改装した博物館には、ネパールの豊かな文化遺産が展示されていた。仏像や仮面、絵画など、どれも息をのむほど美しい。
特に印象的だったのは、チベット仏教の曼荼羅。複雑な図柄と鮮やかな色彩に、時間を忘れて見入ってしまった。「これを描くのに、どれくらいの時間がかかるんだろう」と夫がつぶやいた。
レストラン:ザ・オールド・イン・カフェ
住所:Patan Durbar Square, Lalitpur 44700
https://www.oldinnpatan.com/cafe
博物館を出た後、昼食は広場に面した「ザ・オールド・イン・カフェ」で取ることにした。歴史ある建物を改装したこのカフェは、パタンの雰囲気にぴったりだった。
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おすすめメニュー:
・ネワリ・セット(ネワール族の伝統的な料理の盛り合わせ)
・マサラチャイ
午後は、パタンの路地を歩きながら、工芸品のショッピングを楽しんだ。この街は金属工芸が特に有名で、至る所で職人たちが丁寧に作業をしている姿が見られた。
最終的に、私たちは小さな仏像と、チベタン・シンギング・ボウルを購入した。「これで、家でもネパールの雰囲気を味わえるね」と夫は嬉しそうだった。
夕方、私たちはナガルコット山へと向かった。カトマンズ盆地の東端に位置するこの山は、ヒマラヤの絶景ポイントとして知られている。
宿泊先:クラブ・ヒマラヤ・ナガルコット
https://www.clubhimalaya.com/
山頂近くに位置するこのホテルは、その名の通り、ヒマラヤの絶景を楽しめることで有名だ。
チェックインを済ませ、部屋に入ると、大きな窓からヒマラヤ山脈が一望できた。「明日の朝日が楽しみだね」と私。夫も頷いた。
この日の夕食は、ホテル内のレストランで取ることにした。窓際の席に座り、夕暮れ時のヒマラヤを眺めながらの食事は格別だった。
おすすめメニュー:
・ヤクチーズのモモ
・ダルバート(ネパール定食)
夕食後、テラスに出てヒマラヤの夜景を眺めた。星空が広がり、遠くにはエベレストの影が見える。
4.Day3: ポカラでの癒しと自然体験
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早朝、まだ暗いうちに目覚めた私たちは、ナガルコット山の展望台へと向かった。徐々に空が明るくなり始め、やがて太陽が姿を現した瞬間、息を呑むほどの美しさだった。朝日に照らされたヒマラヤの山々が、まるで黄金に輝いているかのよう。
朝食後、私たちはポカラへ向かうため、カトマンズに戻った。国内線でポカラへ飛ぶ約30分のフライトは、まるで遊覧飛行のよう。窓からはヒマラヤの山々が一望でき、雲海の上を飛ぶ感覚は言葉では表現できないほどだった。
ポカラ空港に降り立つと、カトマンズとは全く異なる空気が私たちを包み込んだ。澄んだ空気と、フェワ湖の爽やかな風。
宿泊先:ウォーターフロント・リゾート
https://waterfronthotelnepal.com/
フェワ湖畔に位置するこのリゾートホテルは、自然に囲まれた癒しの空間だった。部屋のバルコニーからは湖と雪をかぶったアンナプルナ山脈が一望できる。
ひとことメモ:サンセットを眺めながらのバルコニーでのお茶タイムは格別。ホテルのハーブティーがおすすめ。
チェックイン後、私たちはすぐにフェワ湖へ向かった。湖畔では、カラフルな手漕ぎボートが私たちを待っていた。
ボートに乗り込み、静かな湖面を進んでいく。周囲には緑豊かな丘陵が広がり、遠くにはアンナプルナ山脈の雪化粧した峰々が見える。
湖の中央にある小島、タル・バラヒ寺院に立ち寄った。ヒンドゥー教の女神を祀るこの寺院は、湖に浮かぶ宝石のよう。地元の人々が熱心に祈りを捧げる姿に、ネパールの信仰心の深さを感じた。
5.Day4: チトワン国立公園のジャングル探検
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早朝、私たちはポカラを後にし、チトワン国立公園へと向かった。約5時間のドライブは長く感じたが、車窓から見える風景の変化に目を奪われた。緑豊かな丘陵地帯から、次第に平野部へと移り変わり、やがて亜熱帯のジャングルへと姿を変えていく。
国立公園に到着すると、まるで別世界に迷い込んだかのような感覚に襲われた。うっそうとした森、湿度の高い空気、そして耳に届く鳥や虫の鳴き声。
まず私たちはホテルへチェックインした。
宿泊先:ジャングル・ビラ・リゾート
https://junglevillaresort.com/
チトワン国立公園内に位置するこのリゾートは、自然との一体感を味わえる素晴らしい場所だった。バンガロー風の部屋は、ジャングルに溶け込むようなデザイン。
チェックイン後すぐに、ジープサファリに出発した。オープンカーで走るジャングルの中は、まるで映画の一場面のよう。ガイドの説明を聞きながら、野生動物を探す。
運良く、インドサイの親子に遭遇した。「あそこ!」とガイドが指さす方向に目をやると、確かに2頭のサイが水辺にいた。双眼鏡で覗くと、その迫力に圧倒された。
他にも、スポッテッドディアや孔雀、そして運良くロイヤルベンガルタイガーの足跡も見ることができた。「明日の朝のサファリでは、タイガーに会えるかもしれませんよ」とガイドは私たちの期待を高めた。
夕方には、ラプティ川でのカヌーツアーに参加した。伝統的な丸木舟に乗り込み、ゆっくりと川を下っていく。両岸には豊かな植生が広がり、時折野鳥の姿も見える。
最も印象的だったのは、川岸で日光浴をするワニたちだ。「あれはガビアルというワニで、魚しか食べないんですよ」とガイドが説明してくれた。それでも、その鋭い歯を見ると背筋が凍る思いだった。
夜は、近くのタルー族の村を訪れた。タルー族は、チトワン地方の先住民族で、独自の文化を持っている。
村に到着すると、カラフルな衣装を身にまとった村人たちが歓迎のダンスで迎えてくれた。リズミカルな音楽に合わせて踊る彼らの姿に、思わず体が動き出しそうになった。
村の長老が、タルー族の歴史や文化について語ってくれた。「私たちは自然と共に生きてきました。この森は私たちの命そのものなのです」という言葉が心に響いた。
夜は村の人々が準備してくれた伝統的な夕食を楽しんだ。
ひとことメモ:地元で作られた米の蒸留酒「ラクシー」を試すのもおすすめ。独特の風味がありますが、村人たちとの会話が弾む。
食事をしながら、村の若者たちと交流した。彼らは、伝統を守りながらも現代社会とバランスを取ろうとしている様子だった。「大学で勉強しながら、休みには村に戻って伝統文化を学んでいるんです」と一人の青年が教えてくれた。
ホテルに戻る頃には、すっかり夜が更けていた。
6.Day5: 最後の朝とさよならネパール
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早朝、まだ暗いうちに目を覚ました。今日はチトワン国立公園最後の日。朝のジャングルサファリに出発する。
ガイドと共に、静かにジャングルの中を歩き始めた。周囲は霧に包まれ、幻想的な雰囲気。木々の間から差し込む朝日が、霧を金色に染めていく。
「シーッ」とガイドが急に立ち止まった。その先に、一頭のロイヤルベンガルタイガーが水を飲んでいた。息を殺して見つめる私たち。タイガーはゆっくりと顔を上げ、私たちの方を一瞥すると、悠然と森の中へ消えていった。
「一生忘れられない光景になりそう」と夫がつぶやいた。確かに、野生のタイガーとこんなに近い距離で遭遇できるなんて、夢のようだった。
朝食後、国立公園内にある象の繁殖センターを訪れた。ここでは、絶滅の危機にあるアジアゾウの保護活動が行われている。
赤ちゃん象が母象と遊ぶ姿に、思わず笑みがこぼれた。センターのスタッフから、象の生態や保護活動の重要性について詳しく説明を受けた。「観光だけでなく、こういった保護活動にも貢献できるのは素晴らしいことね」と私。
昼過ぎ、私たちはチトワンを後にし、カトマンズへと向かった。車窓から見える景色は、来た時とは異なる印象を与えた。わずか数日間でこの国に愛着が湧いていることに気づいた。
夕方、カトマンズに到着。最後の夜は、タメル地区のホテルに宿泊することにした。
宿泊先:ホテル・ヤク&イエティ
https://www.yakandyeti.com/
カトマンズの中心部に位置する老舗ホテル。ネパールの伝統と現代的な設備が融合した、快適な空間だ。
最後の食事をしたレストランでは、隣のテーブルに座っていたネパール人家族と会話を交わした。彼らは私たちのネパール滞在について興味深そうに尋ねてきた。「カトマンズ、パタン、ポカラ、チトワンと巡りました」と答えると、「素晴らしい選択ですね。ネパールの魅力を十分に味わえたでしょう」と笑顔で言ってくれた。
その家族の娘さんは、日本に留学経験があるそうで、日本語で「また来てくださいね」と言ってくれた。その言葉に、私たちは思わず目を潤ませた。
ホテルに戻る途中、タメル地区の賑やかな通りを歩いた。土産物店やレストラン、バーなどが軒を連ね、観光客と地元の人々で溢れている。
ホテルの屋上バーで、最後のドリンクを楽しみながら、カトマンズの夜景を眺めた。ライトアップされたスワヤンブナート寺院が、丘の上で静かに輝いている。
7.ネパール旅行を振り返って
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帰国の機内で、私たちは5日間の旅を振り返った。
カトマンズの活気あふれる街並み、パタンの芸術的な雰囲気、ポカラの自然の美しさ、そしてチトワンの野生動物との出会い。どれも鮮明に記憶に残っている。
この旅で、私たちは新たな発見をたくさんした。例えば、ネパール料理の奥深さ。ダルバートやモモ、そしてマサラチャイなど、どれも美味しかった。
また、自然の壮大さにも圧倒された。ナガルコットから見たヒマラヤの朝日、ポカラのフェワ湖に映る山々、チトワンのジャングル。どれも言葉では表現しきれないほどの美しさだった。
私たちは、この経験を大切に心に刻み、そして、いつかまた訪れることを約束した。
ネパールよ、ありがとう。そして、また会う日まで。ナマステ。
≪旅行者のための基本情報≫
■入国方法
観光目的で30日以内の滞在の場合、到着ビザ(オンアライバルビザ)の取得が可能。トリブバン国際空港や主要な陸路の国境で取得できる。ただし、パスポートの残存有効期間は、入国日から起算して6か月以上必要。
■現地での移動手段
カトマンズ市内:タクシー、リキシャ(三輪自転車タクシー)、バスが便利。
都市間移動:国内線の飛行機、長距離バス、レンタカー(運転手付き)が一般的。
■通貨
ネパール・ルピー(NPR)
■チップ
レストランやホテルでは、サービス料が含まれていない場合、料金の10%程度が相場。タクシーの場合は、チップは不要だが、端数を切り上げて支払うことが多い。
■その他
・ネパールは、ヒンドゥー教と仏教が混在する国。宗教的な場所を訪れる際は、適切な服装を心がける必要がある。
・水道水は飲めないので、ミネラルウォーターを購入するか、煮沸して飲むこと。
・高山病対策として、十分な水分補給と休息を取ることが大切。
・英語は比較的通じるが、簡単なネパール語(挨拶など)を覚えておくと、より地元の人々と交流しやすい。
・電圧は230V、周波数は50Hz。プラグはCタイプ(ヨーロッパタイプ)が多いが、変換プラグを持参すると安心。
・旅行保険への加入を強く推奨。特にトレッキングや冒険的なアクティビティを予定している場合は必須。
・カトマンズなどの都市部では、大気汚染が深刻な場合がある。マスクの携帯をおすすめする。
※この記事は筆者の主観に基づいて作成されています。旅行前に最新の情報を確認することをおすすめします。