ふつうの人のための不動産投資戦略#2
はじめに
東京に戻る。東北の夏と比べると都会の湿気の籠もった暑さには逃げ場がない。慌てて商業ビルの中に駆け込むが、昨今の光熱費の高騰もあるのだろうか、いまいち冷房の効きが悪い。とはいえ、ジメッとした日本の夏も悪くないと考えよう。汗ばんだ陽気と煩い蝉の声もまた今愉しめる夏の風物詩かもしれない。さて、今日は少し具体的な内容を書いていこう。
下がる価値と下がらない価値
生まれついての性分で僕は酷くせっかちなので前置きの長いYouTubeや商売味の濃い案件記事が苦手である。どのコンテンツにもあることだけれど、重要なのは資産の属性をしっかりと把握することだ。このまま政府の政策が変わらなければ、日本はじっくりと人口が減り続けていくし、東京ですら同じだ。だから、不動産価値のうち下がる価値と下がらない価値をはっきりと区別しておく必要がある。例えば、以下のように不動産の要素を分解してみよう。
築年数 下がる価値
新築 下がる価値
住戸の箇所 下がらない価値
間取り 下がらない価値
外構 下がる価値
採光性 下がらない価値
収納 下がらない価値
駅からの距離 下がらない価値
管理体制 下がらない価値
修繕積立金 下がらない価値
建築工法 下がる価値
ブランド 下がらない価値
異論がある人もいると思う。社会のニーズが変われば求められる間取りは変わるし、インフレが進めば修繕積立金の価値は下がる。ディベロッパーのブランドだって不祥事があれば上下することもあるだろう。しかし、少なくともこの20年に置いては不祥事があったディベロッパーにもトップ層に入れ替えはないし、むしろ、中堅ディベロッパーの優勝劣敗がはっきりしてきている。また、この中で殆ど価値が落ちていないのは駅からの距離だ。都心では人口が増えているので駅からの距離の価値を見出す人も多いし、またまだ通学や通勤のニーズは底堅い。だから、建屋が古くなっても駅からの距離がもたらす価値は不変と見なすことが出来る。少なくとも関東圏のJRや私鉄で廃駅になった事案は全く起きてないし、バスやタクシーならともかく駅からの距離にはまだ絶対的な価値がある。また、窓や家事動線についても同じだ。人間は光を欲する生き物だし、家事をするときは誰でも楽をしたい。もちろん、減価償却のように価値が下がるからこそ節税出来たりとか、価値の低減を逆手に取る戦略もある。ただ、不動産を使った節税目的の投資は、今後も長く働き続ける意志があるか、値上がりして譲渡課税が減免されるタイミングで売りに出せる場合に限る。
不変の属性
このまま書いたことを組み取れば、新築かどうか、築年数が浅いか、見た目が美しいかどうかではなく、とにかく駅からの距離と住戸の箇所そして採光など不変の属性に投資せよということになる。いや、そんなことは分かっているという人も多いだろう。しかし、営業のセールストークや欲しいという気持ちと向き合う時はどうしても冷静な判断は出来にくい。だからこそ、何度でも原理原則と向き合って評価することを忘れないで欲しい。例えば駅から徒歩10分の不動産と11分を比べた時に11分の物件でもいいと思ってしまったことは無いだろうか。鉄道駅からの距離ではなく、バス停から徒歩3分ならば、同等の価値があると思ってしまったことはないだろうか。10分以内と11分以内では遥かに借り手が検索してヒットする確率が違うし、バスは平気で廃線やバス停の移動が行われる。この2つは全く価値の違うものだ。そもそも、鉄道駅とバス停では事業者の投資額が全く違うので、撤退の判断は全く異なる次元で行われることになる。
さりとて道は険しい
ここまで来ると不変の属性を備えた案件と巡り合い、購入に至るのがどれだけ厳しいことが分かるだろう。こんな案件は資本家が大好きだし、そもそも手放すつもりなどない。彼らが大嫌いなことは税と手数料そして資産と地位が脅かされることであって、あなたがそこから這い上がることを望んでいない。反対に言えば、私たちが受動的にセールスを受ける不動産はいかに厳しい提示を受けているかということも分かる。だから、一定の資本と信用能力があれば資本家と同等の戦いが出来る土壌を選ぶ必要がある。彼らと同じステージに立って私たちも不変の属性に投資しよう。
貧者の戦略
これまでの内容を踏まえて最初にお薦めするのは、不変の価値を備えた住戸に住宅ローンで自己使用で投資をする方法になる。何の変哲もない方法だが、ここ数年の都心3区や5区の値上がりを考えると、条件付きの割安物件で売却益を狙いつつ、低金利でローンをして、価値の向上を目指すのは悪い戦略じゃない。過去2年間安定した収入のある個人事業主やサラリーマンならば一定のローンを通すことは難しくない。難しければ属性を上げるように努力する必要があるが、本当の資本家を除けば、新築ならば抽選で購入出来るというのも大きな魅力になる。いや、新築、築年数は下がる価値ではなかったのか。かつての豊洲や晴海のように、もとい都心3区或いは5区ならば上昇するポテンシャルのある物件はある。そして、優良な築古物件の取引にあなたが参入するのは普通は極めて困難だ。だから、私たちは住宅ローンという涙ぐましいフルコミットと抽選という相対的に低い参入障壁を生かして、価格上昇を見すえながら物件を選ぶという作戦になる。苦しい。
まとめ
この方法で住み替えていくやり方をやどかり投資法と言うらしいが、独身者やDINKSでなくてはなかなか難しい。経験的にこのような物件は工業地帯や旧倉庫街に多くマンションから一歩出ると子育てし辛いということもあるだろう。これらのデメリットは何らかのソフトパワーや住宅設備で埋め合わせていくしかない。行政や子育て相談の窓口に話してみるのもありかもしれない。それから、あなたが地方に住んでいる場合も同じような素性の物件が無いか探してみよう。都市単位では人口減でもスポット的に人が増えている場所はあるはず。このNote が少しでも困っている人の役に立ちますように。