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やっぱり、ドラマ「踊る大捜査線」がすごかった話

記憶する限り、踊る大捜査線がTver配信されたのはこれが初めてではないだろうか。
映画は各サブスクで見る気がするが、ドラマ版はFOD premiumのみだと思うから、これを機に初めてドラマ版に触れる方も多いのではと思う。

今期ドラマ最終回が並ぶ中堂々7位の踊る大捜査線

とはいえ、約30年近くも前のドラマで、刑事物だし(刑事もの、医療もの、法律系ドラマはとにかく定番なのでそれだけでごちそうさま感のある方もいるかもという意味で)アイドルもレギュラー出演していないし、映画を観ているからなんとなく知っているしと、さまざまな理由で食指が動かない方もいるだろう。

しかしここは声を大にして言いたい。

踊る大捜査線はドラマこそ観るべき最高の作品であると。

もちろん映画も面白いし、踊るのエッセンスを十分に感じられるけど、ドラマは本当にすごい。

久しぶりに、エンディングの、まだ空き地だらけの東京テレポート駅を、颯爽とあのモッズコートを羽織って歩く青島とともに流れる数々の天才たちのクレジットを観たら、この感動はまとめておかなければと痛烈に思った。

というわけで、ドラマ版踊る大捜査線の「ここがすごい」ポイントを5つまとめてみた。
※若干ネタバレあり。ただネタバレを知って観ても絶対楽しめる。

サラリーマン上がりの青島

主人公の青島俊作(織田裕二)は営業職のサラリーマン上がりの刑事なのだが、この設定が特に後半の事件の解決過程でめちゃくちゃ効いている。

これは設定が変わっているよね〜とかそういう話ではなく、サラリーマンならではの手法が捜査方法に活かされていて、単純に面白いし、とにかく痛快なのだ。これらの回はお気に入りで何度も観てしまう。

1話でもサラリーマン上がりならではのエピソードが出てくるが、こちらはちょっと切ない感じで、この設定がドラマ全体を通じていろんな活かされ方をしているのがとても良い。

そして、青島の一般社会を知っている「普通さ」みたいなものが、視聴者的に、はいはい正義の味方ムーブねみたいなシラケ感を作らない重要な要素でもあると思うので、もうキャラクター設定が天才だし、このキャラクターを超魅力的に演じた織田裕二が改めて凄すぎるとしか言いようがない。

1話でスッと受け入れられて愛着が増していくキャラクターたち

青島のキャラクター設定が天才だったが、何もこれは青島に限らず、主要キャラクター全員に当てはまる。
1話の段階で、この人ってこういうキャラクターなんだなっていうのがすぐ分かるし、話数を重ねるごとに愛着が増すよう、エピソードが準備されていたり、ピックアップされるエピソードがないキャラクターでも、その振る舞いだったり、発言だったりでちゃんと理解と愛着が深まっていく。実に綿密に設計されているように思う。

その中でも個人的には、いかりや長介さん演じる和久さんと、これが連続ドラマほぼ初出演?だったらしいユースケ・サンタマリアさん演じる真下くんが印象的だ。

和久さんはもう誰が見ても納得の存在感だと思うが、改めて見返すと、湾岸署刑事課に和久さんありだなとしみじみ思う。
長年デカとして積み上げてきた経験、人脈、そして周りからの「信頼」が画面越しにこちらまで伝わってくるのだ。

私の中でいかりや長介さんはドリフのいかりやさんでなく、完全に和久さんで、当時、俳優が本業でないと聞いた時には本当に驚いた。
落ち着きのあるこういうキャラクターが得意な本職の俳優さんは数多いると思うが、この和久さんをいかりや長介さんでいこうとキャスティングした人に改めて感謝の意を表したい。

そして真下くん。のちにスピンオフで主役の映画が作られたくらい、広がりある面白いキャラクターに育ったのだが、実はドラマ序盤でフェードアウトする予定だったくらい当初はライトな立ち位置だったとか。
それがあまりにユースケさんがキャラクターを魅力的に育てていくものだから、あのような重要な役回りにまでなったらしい。
確かに、エリートだけど青島やすみれさんが後輩としてこき使う感じとか、おっちょこなところとか、面白いところでエリートの特権を使ってビシッと決めてきたり(なかなかニクイ演出がある)アンバランスな感じの見せ方が、とても深みを出していたように思う。

いつも心に踊るの名言を。

そして改めて、踊るには名言が多すぎた。なんかそこまで良いことを言っている風の名言ではなく、本人が信条として持っているシンプルだけど大事なこと、みたいなものが今聞くとむちゃくちゃ心を打った。
そしてその言葉が物語全体の伏線ではないけど、キャラクターの行動原理と一寸の狂いもないところが、キャラ設定がすごいというところに戻っちゃうけど、物語に説得感やリアル感(踊るのキャラクターが生きている世界のリアル感が増すという意味)が高まるんだよね。
切り抜かれやすいところだから、このセリフ自体は有名だけど、ドラマを丁寧に観ているなかでのこれらの発言は本当にグッときてしまうんだよね…。

・正しいことをしたければ偉くなれ(和久さん)
社会人がずいぶん深まってしまった今のタイミングでは、この和久さんの名言がだいぶぶっ刺さってしまう。
現実社会でも、正しいことだけではやっていけないと思うことが大なり小なりあると思うけど、こう信じて頑張れたらどんなに良いだろう。
難しいかもしれないけど、この思いを持って頑張れることを頑張りたい、となんか純粋に思えて。
その思いを持って困難に立ち向かっていく踊るのキャラクターたちに励まされた感じがする。

・事件に大きいも小さいもない(すみれさん)
これはドラマ版も映画版も全編通して、湾岸署と室井さんがポリシーとして持ち続けている大切なエッセンス。
踊るを観ていない人がこれだけ聞くと綺麗事に聞こえると思うけど、本当、踊るの"願い"というか"祈り"に近い要素なんだよね。だから、この言葉に関してはずっと根底に置いて物語が描かれているように思う。

・偉くなってやる(室井さん)
正しいことをしたければ偉くなれ、という和久さんの言葉のアンサーみたいな室井さんのこの言葉。
そして、事件の大きさによって理不尽な区別が起こらないためにも、偉くならないといけない、というこの世界の一番大きな願いを叶えるために懸命に進んでいく室井さんの物語全てがこの言葉に詰まっている。
初めはいかにも本庁の下っ端には興味がない管理職の室井さんだったけど、青島との出会いで変化していくところも最高である…。

・偉くなくても正しいことはできる(青島)
和久さんの、正しいことをしたければ偉くなれ、室井さんの偉くなってやるに一見反発するような言葉に見えるけど、今現場で自分ができることを精一杯やるという、もう100%青島らしさを感じられるところと、そもそもこう言えるのは、正しいことをしたい人が偉くなればきっと理想が叶うという和久さんの言葉を信じていることに加え、それを叶えてくれる室井さんがいるからこそ、じゃあそれまでにできることを、という信頼のうえで出て来る言葉に感じるから、グッとくるのかなと思う。

10話のあるシーンで、この言葉が最大限に響くシーンが出てきて、もう本当たまらなかった!!(そしてそれに対するモグラの返しがハンパなくおしゃれだった)

シリアスとコメディの絶妙バランス

踊るは基本的にはコメディ寄りのドラマではあるものの、決してキャピキャピしたドラマではない。
笑っちゃうシーンは多いのだけれど、キャラクターが抱える葛藤だったり、警察の構造に対しての葛藤だったり、まぁ警察ものなので毎回犯罪が起きるわけで、シリアスなテーマもたくさん出てくる。
でも暗いだけの話はひとつもなく、シリアスとコメディのバランスが本当に絶妙だと思う。

全体通してその描かれ方をしているけど、特にすぐにそれが感じられるのは2話の復讐の宅配便の回かな。
ドラマは2話目でその後観続けるかどうか分岐点になりがちだと思うけど、この2話は本当ストーリー展開が特にテンポが良くて天才過ぎる。とにかく面白いけど、後々の警官殺しの問題にも深く関わってくるように思うし、すみれさんの問題も笑いどころみたいな感じでカットインしてくるけど、実にシリアスな話だし、もうバランスが神。

本当ハズレ回がなく、飽きずに観られるのは間違いなくこのバランスが異様に長けているからである。

音楽が天才

最後は音楽。オープニングを始めとして(これは映像込み)BGMが物語に華を与えすぎてる。もうそれ以外語ることがない!
サブスクに配信されているので、ドラマを堪能した後はぜひ聴いてみてほしい。

以上、ドラマ版踊る大捜査線の「ここがスゴイ5選」でした。
昨日、10話まで配信されて、オチ知ってるのに後半涙がボロボロ止まらなくなり、あぁ久しぶりに心動かされているなぁと感じ、勢いのままに書きました。
そして最後にものすごい俗っぽい感想で申し訳ないのだが、この青島に惚れないすみれさん&雪乃さんは強靭過ぎる。
カッコ良すぎるもん。普通なのに、勇敢で優しくて頼り甲斐があり、もう主人公そのものだし、なんせ顔は織田裕二だし←

まぁ、雪乃さんはその後の展開があるからあれだとしても、すみれさんと青島はもうお互い好意超えたレベルの愛情があるよね。
とは言え、安易に恋愛描写入れなかったのもこの踊るシリーズの成功要因だと思う。
映画最後にそんなような展開を入れる入れないみたいな話で、織田裕二と深津絵里がそれは違う、みたいに言ったとか言わないとかな噂話がありましたが、それが事実だと仮定すると、さすがにキャラクターの解像度が高すぎて、この2人が青島とすみれさんで良かったと思ってしまったよね。

というわけで、ドラマ版踊る、Tverで本日最終話まで配信されたので←回し者みたいですが、ただのファンですw

この機会にぜひもっともっとたくさんの人に観てほしい。
間違いなくあなたの名作ドラマに仲間入りするはずです。

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