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夫婦別姓に関する神道政治連盟の関与と政教分離への疑義に関する法務委員会での中村敦夫の質疑

平成12年5月25日
第147回国会・参議院法務委員会第17号より

○中村敦夫君
中村敦夫です。
選択的夫婦別姓制度の導入に関しましては、与党を含めた超党派の国会議員で大変賛成者が多いわけですね。また、これはそもそも法制審議会の答申を得て内閣、法務省が準備してきた法案でもあるわけです。法制審議会というのは司法の政策決定の中で大変重みを持つ会でございます。
そこで、まず法務省に質問したいんですけれども、法制審議会が今まで答申を出しながら閣法として提出しなかったのは、この選択的夫婦別姓を導入する民法改正案のほかにあるのかどうか。あるのかないのか、一言で答えてください。

○政府参考人(房村精一君)
法制審議会が答申を出しながら閣法として提出しなかった例は、これ以外にもございます。

○中村敦夫君
幾つぐらいあるんですか。

○政府参考人(房村精一君)
三つございます。

○中村敦夫君
いずれにしても非常に少ないですね。これは異例な形だというふうに判断できるわけですね。
それで、続いて法務省の方に聞きますけれども、以前、法務省民事局が、世論を喚起するために選択的夫婦別姓制度に関する二色刷りのパンフレットを作成して配布していたわけです。(資料を示す)これはコピーですけれども、こういうものを配布していたわけです。非常に積極的にやっていた。ところが、これが途中からストップしてしまった、配布がとまってしまったということがあるわけですね。
これは、与党の有力議員たちからやめろという圧力があったというふうに一般に言われているわけですけれども、この経緯というものを説明していただけませんか。

○政府参考人(細川清君)
御指摘のパンフレットは、二万部ほどつくりまして、すべて配布済みでございます。どこからか反対があったので途中でやめたと、そういう事実はございません。

○中村敦夫君
二万部もまき切れたんです。だから、大変評判いいパンフレットだったわけですね。どうしてそこでやめてしまったのか。

○政府参考人(細川清君)
地方自治体とか公共図書館等にも配布しまして、それでその当時の目的は達したということでございます。

○中村敦夫君
今度は法務大臣に直接お伺いしたいんです。
これは法制審議会の答申からもう既に四年たっている法案ですけれども、それでも閣法として提出できないのはなぜなのかということを簡単に説明してください。
そして、法務大臣は法制審議会の会長でもあるわけです。この法制審議会の答申という重みをどう感じているのか、簡単にお答えいただきたい。

○国務大臣(臼井日出男君)
先ほどもちょっとお答えを申し上げましたけれども、この選択的夫婦別氏制度の導入につきましては、国民各界各層でいろいろ御意見がございます。
そうした状況に現在もあるということを私どもは認識いたしているわけでございまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、平成八年の総理府の統計、世論調査の結果によると、極めて意見が伯仲をしているような状態にある。また、地方自治法第九十九条第二項の規定に基づき地方議会から提出された意見書についても選択的夫婦別氏制度に関するものがあるわけでございますが、現時点までに法務省に提出された意見のうち、導入に積極賛成の意見が五十三件、慎重ないし消極の意見が三百八十八件となっているのでございます。
このように、この問題につきましては国民の意見が大きく分かれていることがうかがわれるわけでございまして、現在のところ、そうした状況を踏まえて、国民各界各層や各方面での御議論がさらに深まることを期待いたしておるのでございます。私どもといたしましては、現在国会でも御論議をいただいておりますが、その動向を見守りつつ適切に対処いたしてまいりたい、このように考えております。
なお、次の、法制審議会の重みについての御意見、御質問がございましたけれども、法制審議会は、法律学者、法律実務家、一般有識者の中から最適任者として選任をされました委員によって構成をされておるわけでございまして、法務大臣の諮問に応じて、民事法、刑事法、その他法務に関する基本的な事項につきましてさまざまな角度から慎重かつ周到な調査審議を行うものでございまして、基本法の整備を行う上で重要な意義を持つものと認識をいたしております。

○中村敦夫君
世論は大事にしなきゃいけませんね。しかし、世論だけで物事を決められないという場合もあるわけです。非常に専門的な問題、国際的なスタンダードとか社会情勢の分析、法的な問題というようなことは、必ずしも世論だけが参考で、それによって何かを決めていたんだったら国会なんか要らないわけですよね。
ですから、この問題は非常に専門的な問題であって、世論がまだ多数ではないからという理由で見送るということは、ちょっと国会というものの権限というものを放棄しているんじゃないかと私は思うんですけれどもね。
実際問題として、これが出てきて、特に自民党の中で反対意見が多くなってきたというのは、一九九六年三月三十一日に開かれた神道政治連盟国会議員懇談会、これ今話題の会ですけれども、ここにおいて選択的夫婦別姓制度の反対が協議されて、それ以来なんですね。それ以降、神道政治連盟及び二百名以上いる同議員懇談会というところでたびたびこの制度への反対が表明されているんですよ。そうすると、いわばここのところが与党の中でも反対の総本山みたいな形になっているということで、臼井法務大臣自体この懇談会の幹事を務められているということがあるわけですね。
これは、政教分離といういろいろな大きな問題でややこしい問題がございますけれども、それはさておいて、神道政治連盟と臼井法務大臣が、当然ここの会員ですから反対だという立場があると思います。それがいい悪いではなくて、なぜ反対するのか、その理由を明確に述べていただきたい。

○国務大臣(臼井日出男君)
御指摘の点につきましては、現在、選択的夫婦別氏制度につきまして法案が議員提案として提案をされておるわけでございまして、御議論をいただいているところでございます。現段階におきまして所管の大臣から賛否等にかかわる御意見を述べるということは適切ではないと考えております。

○中村敦夫君
いや、適切とかなんとか、そんなことを聞いているんじゃないんですよ。なぜ反対しているのかと、この連盟ですね。そして、あなたが幹事をやっている。当然その理由は知っているわけですから、適当とか不適当と言うんじゃなくて、整合性のある、なぜ反対するのか理由は言わないでただ反対だったら昔の何とか党と同じになっちゃうじゃないですか、その理由を教えてほしいんです。

○国務大臣(臼井日出男君)
大変恐縮でございますが、先ほども申し上げたとおり、所管の大臣としての賛否に関する御質問に対しての御意見は差し控えさせていただきます。

○中村敦夫君
あなた日本語がわからないんですか。賛否はいいと言っているんですよ。理由だけ聞きたいんですよ、どういう理解をされているか。ただここに加盟して名前を連ねているだけなんですか。

○国務大臣(臼井日出男君)
さらに、賛否ばかりではなくて、それに対する私的な意見というものは発表を、御披瀝を控えさせていただきたいと思います。

○中村敦夫君
要するに、大臣というのはただの飾り物じゃないんですから、個人としてのリーダーシップ、考え方ということを述べても構わないんですよね、それは個人的責任において。しかも、政治連盟というちゃんとした組織に入っているわけで、そして非常に重要な法案に対して反対をしている。これは反対の理由もなしに反対と言うことはもうあり得ないと思うんです。
この神道政治連盟、私はいい悪いを言っているんじゃないですよ。この綱領を見ますと、「神意を奉じて、経済繁栄、社会公共福祉の発展をはかり、安国の建設を期す。」というふうに言っているんです。神意でもっていろいろなものを考えるということなんですよ。
ですから、夫婦別姓選択に反対する理由というのが説明できない、それはつまり神のお告げなんですか、だから反対できないんですか。もっと人間的な、要するに理性的な理由というものがあって反対しているはずじゃないんですか。

○国務大臣(臼井日出男君)
神道政治連盟の考え方につきましては法務大臣としてお答えをできない。先ほどから申し上げている次第でございます。

○中村敦夫君
それは、自分が所属している団体、そしてその団体の意向については責任はとれないという話なんですか。

○国務大臣(臼井日出男君)
本日、この場に出席させていただいておりますのは、法務大臣として関係の法律についてのお答えをするべく出席をさせていただいているのでございます。

○中村敦夫君
いや、法務大臣はたまたま法務大臣になったわけでしょう。その前に国会議員であり、そして社会に対して明確なメッセージを発している団体の幹事なわけじゃないですか。なぜ法務大臣だと何にも答えられないんですか。

○国務大臣(臼井日出男君)
所轄の大臣でありますから、そういう所轄の問題について今国会で御議論をいただいている、私的な御意見というものは控えさせていただきたいと申し上げているのでございます。

○中村敦夫君
政教分離という問題は大変ややこしい問題ですけれども、私は宗教を否定しているわけではありません。実を言えば大変興味を持っている。専門的に勉強しているぐらいです。そして、文化的な存在、人々の生活の価値観をつくっている、そうしたものとしてかなりいろいろな国で重要な役割を持っていると思っております。私は神社にお参りにも行くし、お寺にも行くし、本当にそういう意味では敬意を持って接している。
しかし、それが、ある部分の方々だと思いますよ、一つの政治に参加してきて、宗教の神意というものを一つの政策の根本に置いてしまって政治参加する。これはやっぱり政教分離の憲法に違反しているというわけです。
ですから、普通の方々がそこへ入っていくならまだしも一つの主張としてわかりますけれども、国会議員がそこに入って、そしてそこで決められた意向に沿って国会の法案というものに賛成だとか反対の立場をとっていくということは、これは憲法違反じゃないかと思うんです。
法務大臣、まさにそういう大きな問題に今差しかかっている、よほどの決意と信念、覚悟がないとそこにはいられないと思うわけです。このことについてどうお考えですか。

○国務大臣(臼井日出男君)
一般論として申し上げるならば、そうした各宗教団体と宗教団体のカウンターパートである議連、必ずしも考え方が一緒であるということではない、それぞれお互いの意見を交換しながらより理解を深めていく、こういう形になろうかと思います。

○中村敦夫君
確かめますけれども、私が調べている限り、この議連、ここに入っている方々はこの法案には反対している、ほぼそうであるというふうに判断しておりますけれども、そのとおりと考えてよろしいですか。

○国務大臣(臼井日出男君)
そうした点については、私からお答えする立場にはございません。

○委員長(風間昶君)
時間オーバーですから簡潔に願います。



○中村敦夫君
何か日本の大臣というのがすべて判断停止の状況にあるということは非常に問題であるというふうな感想を述べて、質問を終わります。

原資料は下記URL

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