両手バックの良いとこ悪いとこ
前回は片手バックハンドについて書きました。
最大のメリットはスライスが上手くなること、最大のデメリットはDTL(ダウンザラインの略)又は逆クロスへ安定して打てないことでしたね。
今回は両手編になりますが、上記から推測すれば両手のメリットデメリットも分かってしまいますね。
両手バックのメリット
両手バックのメリット一つ目は、
です。
もう早速最大のメリットを書きますが、両手ならある程度上達したプレイヤーは、DTL又は逆クロスへコントロールができます。
理由は単純で、片手と違い両手で支えているため、インパクト付近での面が安定するからです。
フォアハンドでもそうですが、面を固定するために手首の背屈を維持してしまうと、いわゆるヘッドダウン(スイング開始時にラケットを下に落とす動作)がやりにくくなってしまいます。
あとこれは、ブロックリターンなんかでは役に立つ技術ですが、通常のストロークでは威力が出しづらくなりますね。
しかし両手であれば、あえて非利き手側を固定したとしても、上手く利き手側を利用すればスイングスピードを上げられますので、面を安定させたままインパクトを迎えることができます。
どのコースにも安定して打てるというのは、ショット精度が高いということで、前回は触れませんでしたが、両手は片手よりも安定していると言うことができます。
二つ目は、
オープンスタンスと言っても、セミオープン~フルオープンと幅広いですが、何にせよこれは片手には難しい両手の専売特許であると思います。
ジョコビッチ選手のイメージから、スライディングショット=オープンスタンスと思われる方もいるかもしれませんが、そうではありません。
(スタンスについては『オープンスタンスと足首』にて触れていますので、そちらを見て頂きたいです)
ただ日本でプレーする場合、オムニコートが多いと思うので、フォアでもバックでもスライディングができればコートカバー力は確実に上がります。
片手もスライディング(オープンスタンスでのドライブ返球)ができない代わりに、スライスで上手く処理ができるので、凌ぐための守備力に関しては両手とイーブンだと思います。
が、やはりドライブ(スピン)でのカウンターショットができるのとできないのでは相手のやりやすさが違います(スライスオンリーより、スピンも混ぜられる方が嫌ですよね)。
三つ目はやはり、
が挙げられると思います。
片手でも技術としてジャックナイフがあるんですが、アマチュアプレイヤーの視点に立って、片手と両手どちらの方が高い打点を克服できるかと言ったら後者の方が簡単です。
(当たり前ですが両手であっても肩口より上の頭付近くらいになると厳しいです)
肩くらいの高い打点は、たとえ初心者帯であっても、ラリー中に必ず一度は来るボールです。
ボールの落ちてくる場所まで下がって処理する方法もありますが、一般的なコートだとベースライン後方が5m以上担保されている所は少ないと思います。
このため、下がらずにライジングで処理するのもありなのですが、跳ね上がりに対応するのは簡単ではありません。
肩付近で取れるのであれば、まだそちらの方がリスクは低いですね。
また、チャンスボールを叩けるという意味でも、両手は強みになります。
両手バックのデメリット
一つ目、
両手はやってると分かるんですが、そこそこ打てるようになってしまうと、よっぽど左右に振られない限りは、スライスを使う場面がありません。
何故ならメリットで指摘した通り、オープンスタンスで攻守共に処理できてしまうからです。
安定して返すことができ、且つその球はドライブで打つことができるため、フットワークさえしっかりしていれば、押されていても明らかに不利となることが少ないと思います。
(上手く打てる限り、チャンスボールが行きにくい)
故に、単調になりがちなのですが、かといって今更安定している両手の代わりにスライスを打とうという気にもなれない、そんなジレンマを抱えています。
二つ目に、
前述したスライスが苦手なので、膝を地面すれすれまで曲げて対応する必要がありますが、これが中々足への疲労に繋がります。
仮に持ち上げたとしても、あまり良いボールは行きませんので、両手打ちの泣き所とも言えるかもしれませんね。
(両手の膝下ボールはパワーの出力が難しいので)
片手打ちのプレイヤーと対戦すると、レベル差がない限りバックの打ち合いで一方的になることは少なく、また片手側は間違いなくスライスを多用するので、両手側は常に低めを取らされます。
結果的に、スライスがボディーブローのように効いてきて、ミスが増え負けるというのも少なくありません。
(バーティー選手やマレー選手のように、両手打ちなのにも関わらずスライスが上手いプレイヤーというのは極めて珍しいです)
また両手打ちは一般的に言われるように、リーチ(この場合は打点の幅)が狭いです。
そのため少しでも浅い場所にボールが来ると、前傾になってしまい、上手く体重移動も使えず、拾いにくくなります。
ですから苦手なスライスで対応せざるを得ないのですが、まあ考えるまでもなくそれは、相手へのチャンスボールへと繋がるわけで……。
片手なら前へのリーチが広く取れるので、処理は簡単ですし、ショートクロスへと運ぶのも自然と上手くなるのでカウンターも狙えたりします。
(そもそもスライスが上手く使えるので、わざわざドライブ返球しなくてもいい)
後者に関しては、両手でも同じことは可能なんですが、後述の理由により獲得までが難しいです。
(両手打ちなのにスライスオンリーの選手と言えば、スティーブ・ジョンソン選手ですよね。
彼は両手で打つ場面もありますが、本当に苦手なようでミスばかりしてしまいます。
大変失礼ながら、プロ選手とは思えないほどに……。
そして恐らく彼の両手打ちは、三つ目のデメリットと同じ理由で上手くないと考えられます)
三つ目のデメリット、
個人的に両手最大のデメリットというか、ネックなポイントなのですが、この感覚が身につけられないなら、正直両手打ちを選ぶ必要がないと思っています。
(両手のメリット全部得られません)
非利き手というのは日常生活で使うことが少ないので、しっかり考えて練習しないと面の感覚が習得できません。
なので両手が上手くいかない方は、利き手の感覚が強く、そちら側でラケットを扱ってしまうので、片手打ちの人がわざと両手で打っているような状態になりやすいです。
そうなるのであれば、片手打ちに転向した方が賢明ではないかと僕は考えています。
(根本的に打ち方が良くないわけなので)
一般的に両手バックは簡単と言われていますが、あくまでそれは非利き手の感覚が掴めるならの話です。
非利き手のフォアだとか、利き手8割非利き手2割の感覚だとか色々な例えがありますが、いまいちピンと来ません。
(非利き手のフォアなのであれば、利き手を外してそのままフォアとして打てばいい筈です。
8割2割というのは、そもそもどこの話をしてるのでしょうか?
グリップの握る強さだとして、どの時点での話なのでしょうか?
グリップチェンジの瞬間、ユニットターン、テイクバック、セミフォワードスイング、フォワードスイング、インパクト、フォロースルー……簡単に挙げるだけでもたくさんありますよね)
ピンとこないまま続けていっても、上手くなりづらく、いつまで経ってもバックでは何もできないというストレスまでも抱えることになります。
それなら片手バックにして、ドライブは面を固定して打つようにし、スライスを磨き、バックはフォアへの布石として考えてやる方が、レベルの上昇ペースは早いと思います。
終わりに
前回の片手編最後で、初心者や勝ちたい人には両手を勧めると書きましたが、とはいえ今回のデメリットで挙げた三つ目が非常に気になる点ですよね。
スクールやテニスオフなんかで見る上級者であっても、せっかく両手打ちなのに当てるだけだったり、回転過多な繋ぎ用スライスしか打たなかったり(それなら片手の方が良いと思うのですが)etc。
多分やっている本人が一番感じてると思いますが、何のために両手打ちをしているのか分からない辛い状況にあると考えられます。
(ちなみに上級者の場合は、両手バックが致命的な状態であっても、サーブorフォアが尋常じゃない程強い方が多く、バックもスライスで補っていたりと、弱点克服よりも強みを全力で鍛えたプレイヤーなので、ちょっと例外といえば例外ですね。
ちなみにジョンソン選手はその典型タイプです)
あくまで今回はメリットデメリットの比較ですので、非利き手の感覚対策は書きません(いずれ書きたいと思ってます)。
最終的には、いつもお伝えしている通り好みで決めれば良いと思います。
片手でも両手でも、格好良い選手はいくらでもいるので、真似したいフォームを探してみて、気に入ったもので決めるのもありですね。
では、この辺りで。
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