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1,240万の共働き世帯に伝えたい。男女賃金格差と妻が働く意義について。

男女賃金格差の開示義務や、企業の女性役員の数を比率であげるニュースに

「数ではなく能力で決めるべき。」
「責任を持つ男性と持ちたくない女性で差がつくのは当然。」
「管理職になりたい人を分母にして計算するべき。」

などの意見を目にするたび、引っ掛かるなぁと思ってきました。

そもそも賃金が能力で決まっているとは感じていないからです。私は育児に手がかかる10年近く正社員の賃金を時間で制限され、時間で自動的に数百万減った年収に対して、成果や能力では可算されても年十万円ほど、という経験をしました。

私の周りにはフルタイムの社員と同じか、ベテランだからとそれ以上の数字目標を持たされても外さず達成し続けた人がいます。

以下は、内閣府の1日あたりの平均育児時間データです。

出産したら毎日育児に8時間かけるようになる、それが多くの女性に起こる生活の変化です。それでもフルタイム社員と同じ目標数字を達成しているなら、もっと能力が高く、給料は減らされるべきではない、と感じませんか。

育児や介護で働く時間が減れば成果を出しても給料は自動減算され、昇進のチャンスも減る、それが当然だというのが多くの日本人の感覚と評価システムです。

女性が働くほど日本の生産性は下がる

日経新聞の記事によれば、2020年にフルタイムで働いた日本の労働者の所定内給与は男性が33万8800円だったのに対し、女性は25万1800円。
フルタイムで1月1日から働き始めた場合、男性の12月末の賃金に追いつくために日本の女性はさらに112日働かなければならないそうです。

日本経済新聞 日本女性、男性の74%しか稼げず 賃金格差の解消に遅れ より

また、東洋経済ONLINEの記事では、男女賃金格差と生産性には相関があり、女性の賃金が低いゆえ、日本は女性が働くほどに生産性がさがってしまうと指摘されています。もし賃金格差が少なければ、女性が働いても日本の生産性は高くなります。

東洋経済ONLINE 女性活躍は「最低賃金引き上げ」で実現可能だ より

安い賃金の相手は見えなくなるかもしれない問題

多くの企業で、給料が高いほど職位や立場が上だと思います。
経営層は、よほどの信念か合理性か外圧でもなければ従業員の待遇を改善しようとは思わないでしょう。

経済的な目標を共にする集団である企業で、賃金経済と役職などの序列が結びついた人事制度では、役職者ほど、賃金が多い人ほど、権力があり能力があると認知されがちです。裏を返せば、人は時短勤務の賃金が安い待遇の人間に価値があるとは感じなくなりがちです。

例えば、賃金だけが理由ではないかもしれませんが、フルタイムの男性が上司であることに違和感はなくても、時短の女性が上司だったら違和感を抱く人は多くなるでしょう。現実的には空きポジションが出ても、人間関係や感情的に面倒くさそうことはあえてやりにくいと想像できます。

もしも昇格の議論にあがるのが賃金の序列の高い人間からになりがちなのであれば、意識して追加しない限り、最初から時短制度利用者はそこにはいません。

無意識の序列の認識は根深いと、慎重に考えなければなりません。

母親になると自動的に減る給料

日本には、働く母に新卒以下の給料しか支払わない会社がたくさんあります。

柔軟な働き方で名前が知れているサイボウズさんでさえ、時短の収入は新卒より安いようです(それを公開していることがスゴイことですよね。みんな積極的に公開したりしません)。

出産前よりさらに工夫して成果を出して働いても、出産前の自分の給料から自動減算される懲罰を受け続ける、そんな感じです。

家事やライフハックで時短をすると褒められます。しかし、仕事は逆です。時間が減る=賃金も減る、です。

思い込みや気遣いで勝手に決めないで

働き方への考え方は様々です。成果を追求するより子育て重視でゆっくり働きたい人もいる、女性は管理職になりたがらない、とはよく言われることですが、それは男性と同じで人によります。管理職のあり方もひとつではありません。

ですが制度として時間で賃金を減らしてしまえば、出産前に社内の経済的な序列で上方にいた人でも、いきなり新卒以下にランクダウンします。

時短がスタートして半年ほどで安定して出産前程度の成果を出せる事が分かったら賃金は戻る、常に出産前もしくはフルタイム勤務の他の社員の成果と比較して是正が行われる、それであれば問題ないと思います。

しかしそうでなければ、能力で評価することに理解がある上司に出会えても、制度を超えてまで采配することは難しく、賃金は戻りません。無意識の序列の認識も失われます。

尚、私がいた企業でも時短制度の利用者は決して黙っていたわけではなく、何度も会社と交渉しましたがフェアな賃金制度に変えることはできませんでした。

経営への外圧ほど強いものはありません。男女賃金格差の開示義務は全面的に支持しますし、時短勤務の賃金体系にもメスを入れて欲しいと思います。

育児や介護の負担を担いがちな女性にとって、今のように時間で自動で賃金カットする時短制度はガラスの天井になっています。

男女の賃金格差は大企業で大きい

こちらは厚生労働省の男女別の賃金カーブです。女性は男性より収入が低く、上昇カーブがほとんど無いという事実があります。これはよく「非正規雇用が多いから」と言われます。

厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概要→性別より

それでは正社員・正職員での男女格差を見てみましょう。
女性のカーブは男性に比べて緩く、格差が最も大きいのは、大企業という結果が出ています。

厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査 結果の概要→雇用形態別にみた賃金より

つまり女性の賃金は正規雇用、非正規雇用の形態の問題だけではなく、大企業をはじめとする企業の正規雇用の評価制度で何が起こっているのか?を考えなければ格差は縮まらないのです。

時短制度はその一角です。

なぜ格差を縮める必要があるかは、冒頭にあげた東洋経済ONLINEで言われるようなことですが、日本人の英語力や国際競争力の低下を考えれば、移民を受け入れてもそんなに都合よく移民が喜んで来てくれない気がしています。

また、時短制度で正規雇用の働く母の賃金が一様に安いことに納得し続ければ、「成果が正当に評価される仕組み」を否定することになってしまいます。

これが生産性が高いとは思いませんし、いわゆる生産年齢人口のど真ん中にいる共働き世帯の世帯収入もあがりません。女性が働くほど生産性が下がるのは幸せですか?

東洋経済新報社「役員四季報」調べによれば、2021年7月末時点の東証一部上場企業の女性役員割合は7.5%、女性役員がいない企業は33.4%です。

「女性は管理職になりたがらない」とか「女性はそもそも役職に向いていない生き物」とか仮説やひとつの研究で結論を出せるほどのことは、まだ日本では成されていませんよね。

評価の構造はひとつの大きな障壁です。

成果や能力で決めることで企業の成果や生産性があがると考えるのであれば、成果や能力で決まらない制度やバイアスにもっと着目すべきではないでしょうか。そしてひとつひとつ、変えていかなければならないと思います。


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かしお 優
LANケーブルが作れる珍種です。プロダクトマネージャーとして多国籍なエンジニアリングアチームをアジャイル移行しようと奮闘→オンラインでよりよく働く未来を追求したい→DX Criteriaを世に広めたい(プロボノ)&オンラインホワイトボードMiroでマーケティング(本職)中。