繊維の種類30:ビクーニャについて
おはようございます。
今日は日中14℃まで上がるようなので比較的東京は暖かい。穏やかな朝陽も一際暖かく感じる。もらった薬を飲んで家で大人しくしていたらだいぶ良くなってきてうっかり薬を飲み忘れるくらい。2024年も残り6日、健やかに楽しみたい。
布の素材として、動物繊維の種類を毛繊維、絹繊維、羽毛繊維それぞれに分けて、まず毛繊維からウール、カシミア、キャメル、アルパカを見てきたが、今日はアルパカの親戚、ビクーニャを見ていこう。
動物の種類
ビクーニャ (学名:Vicugna vicugna) は、哺乳綱偶蹄目ラクダ科に分類される偶蹄類。因みに昨日見たアルパカはVicugna pacos。
南米のペルーの山地に生息する南アメリカ大陸原産の家畜の一種で、ラクダ科のビクーニャ属に属する。南米古来の動物で毛を用いるのは、ビクーニャおよびアルパカ、ラマおよびグアナコの4種である。ビクーニャとアルパカはいずれも毛が重要視されるが、アルパカの場合、毛の品質と量の点で優れており、ビクーニャは柔らかさ、きめ細かさ、希少さと高品質の点で珍重されている。
ラクダ科最小種。アルパカは顔の周りまでモコモコの毛で覆われた羊みたいな見た目なのに対して、かなり体の輪郭がわかるスマートなスタイル。外観はグアナコとよく似ているが、グアナコは頸下に30センチメートル前後の長い毛を有しているため、その点で一見して見分けられる。
産地
アルゼンチン北西部、チリ北部、ペルー南部、ボリビア西部と生息地とされる。
ビキューナの生息地はエクアドルからアルゼンチンへかけての海抜6000m以上というアンデス山脈高地に生息。富士山が海抜3776mなので倍近いの高さに生息しており、この過酷な環境だからこそ美しくすべての人を魅了する毛が育つ。
特徴
ビキューナの毛の太さは7~14ミクロン(7~18ミクロンとも)といわれている。その毛は獣毛中最も細いといわれ、最高クラスの繊維といわれているアンゴラの毛(12~14ミクロン)と並ぶ最高クラスの繊維といえる。あのカシミア(14~18ミクロン)よりも繊維が細い。(因みに 一般羊毛は24~28ミクロンとされる)
また、細いだけではなく保湿性、柔軟性、光沢感に富み、最高の名にふさわしい繊維であります。保湿性は極寒にも耐えられる強さを誇り、柔軟性においては繊維の細さからくるとろけるような肌さわり、光沢感は乱獲を促すような人々を魅了する光沢を醸し出しています。
この希少さと素材としての優秀さからビキューナの毛は「神の繊維」とも呼ばれ、高級獣毛素材として知られている。
生産
ビクーニャは良質な体毛と肉を持つが、牡は繁殖期に縄張りを作って他の牡と闘う習性があるため家畜化しにくく、基本は野生種の捕獲による。その毛がその質の高さから高額な価格でやり取りされるため、乱獲され絶滅危惧種となった。かつては200万頭が生息していたと推定されるが、乱獲により1960年代には1万頭以下まで生息数を減らした。その後、保護意識が高まり、ペルーでの生息数は着実に戻し始めている。
1994年における生息数は6万6559頭、
2000年における生息数は11万8678頭、
2016年における生息数は21万8000頭と推定されている。
ビクーニャは細い体毛を糸に紡いで毛織物は高級品として取引される。
1993年にはインカ帝国時代に行われていた伝統的な囲い込みの技法(チャク)が復活し、ビクーニャを殺さずにビキューナの剪毛(毛を刈り取ること)はペルー政府の保護プログラム下で可能になった。しかし毛織物に十分な長さの毛を確保するため、2年に一度しか毛の刈り込みは許可されておらず、しかも1回の刈り込みで成獣1頭につき250 - 350グラム程度の体毛しか得られない事情もあって、ビクーニャの毛織物は極めて高価となっているのである。
このように貴重なビクーニャに関しては、上記の毛皮目的の密猟、過放牧や採掘による生息地の破壊、家畜との競合、アルパカとの交雑による遺伝子汚染などが懸念されている。このため、1975年のワシントン条約発効時から、ワシントン条約附属書Iに掲載されている。
ワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora、日本では絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約と訳され、頭文字を使ってCITESとも言われる)は、自然のかけがえのない一部をなす野生動植物の一定の種が過度に国際取引に利用されることのないようこれらの種を保護することを目的とした条約のこと。これに登録された動植物は然るべき生産地が証明された書類(これもCITESと呼ばれる)がなけれが輸出入ができない様に厳しく各国の税関でチェックされている。クロコダイルやオーストリッチ(ダチョウ)といった素材が有名だが、その他貴重な鳥類や爬虫類などを種の保存を目的として正規の合法ルートでやり取りされていることを証明して輸出入させるものである。
2019年の時点でアルゼンチン(Catamarca・Jujuy・Saltaの個体群。半飼育状態の個体群も含む。)、エクアドル、チリ(Arica Parinacota・Tarapacáの個体群)、ペルー、ボリビアの個体群は附属書IIに掲載されており、ここで採取されたビクーニャの毛は素材や製品問わずこの証明書無しでは、生産国を出た後も国境を跨ぐたびに必要となる。
これだけ貴重なビクーニャはペルーの国章に描かれるほど大切な動物なのだ。ちなみにライオンやワシなどの鳥などを国旗に入れている国はいくつかあれど、家畜となる動物を国旗に入れているのは、このペルーのビクーニャ、アンドラ(フランスとスペインの間にある小国)の2頭の牛、クロアチアのヤギ(豹やテンと共に)の3カ国のみ。
散々最上級だったり希少などと言ってきたが、初めましてという方も多いだろう。では実際ビクーニャはどれだけ高級なのかというと、スーツやコートで3, 400万、マフラーでさえも50万ほどという価格だ。しかもCITESが必要ということもあってより専門的かつ資本力のある大きなブランドが使う傾向も強く、そうしたブランド力も相まってより高額になる傾向にある。
幸にして実際に触らせてもらったことがあるけれど、カシミアと比べても別格の滑らかさ、マフラーなり顔ですりすりしたらそれだけで幸せにしてくれる、そんな文字通り夢のような手触りだった。
ビクーニャ、ラクダとして最小サイズだしうちで買えないかな、と思う位(いきなりCITESに抵触、そして気性が荒いんだった)素敵な素材なのでした。
明日は、ビクーニャやアルパカの親戚ラマを見ていこう。
こちらの文章は以下のリンクを参考文献として使用しています。
僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。
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