陶磁器20:日本の焼き物(愛知県:常滑焼)
おはようございます。
今日は日差しもある中で気温もそこそこあって晩夏といった程よい熱を帯びた朝。
さて、日本各地の焼き物の名産地をピックアップしたところで、具体的に1つずつ見ていこう。
10回目の今日は、愛知県の常滑焼。
常滑焼(陶器)
常滑焼は、愛知県常滑市周辺で作られている陶器。平安時代の後期に誕生した伝統工芸品で、越前焼、瀬戸焼、信楽焼、丹波焼、備前焼と共に日本六古窯の一つとされていて、中世の時代から長く生産されている陶磁器として知られている。
常滑焼の特徴は知多半島で採れる鉄分を多く含んだ陶土を使用している点。その性質を活かして、鉄分を赤く発色させることを朱泥と言い、常滑焼を特徴付ける色の焼き物になっている。
茶碗や植木鉢など様々な製品が作られるが、その中でも急須は、鉄分がお茶の苦みや渋みをまろやかにすると言われていて現代でも愛用される。
愛知県の知多半島の丘陵地に多くの窯があり、古来より伝統技術を有した職人によって制作されてきた。質の高い製品を作る職人たちが、1,000年の歴史のなかで技術を受け継ぎ、「手ひねり成形」などの技法を伝承している。平安時代から使われる手ひねり成形の中でも、「ヨリコ造り」は大きな壷など大物の製品を制作するときに用いられる手法。ほかにも盆栽鉢を作るときの「押型成形」、電動ロクロを使う「ろくろ成形」などがある。
歴史
常滑焼の起源は、平安時代末期に遡る。当時は3,000基もの穴窯があったと言われており、常滑は日本六古窯のなかでも最大の焼き物産地だった。この時代に制作された古常滑焼が常滑焼の原型で、常滑焼は歴史と共に製品の形を変えていく。
大瓶・大壼など大型貯蔵具が主製品だったが、江戸時代になると大型貯蔵具だけでなく、茶の湯や生け花で使用する器や日用品としての小細工物が登場する。朱泥が登場したのもこの頃で、朱泥の茶器は江戸時代末期から明治初期にかけて、また、常滑焼で人気の高い急須も江戸時代以降に初めて制作されている。
明治時代に入ると近代化が進み、日本人の生活も変わっていくことで新たな変化を遂げる。鉄道が走るようになり、線路の間にあった水路の工事に頑丈な素材が求められ、常滑焼の硬く締まった土管の需要が高まる。大正期には建物用のタイルが広がり、建築陶器で一世を風靡した。
国指定の伝統工芸品として常滑焼の技法は受け継がれ、現在でも多種多様な常滑焼が、さまざまな場面で用いられている。
地理
愛知県の常滑市は中部国際空港(セントレア)を有し、三重県と伊勢湾を挟む様に知多半島の根本から中程に位置する、南北に長い街。
今まで見てきた陶磁器の生産地が川が流れる山間部が多かったのに対して、圧倒的に海に近い、というか海に面しているのが特徴と言っていいだろう。鉄分を含むと言うので同じく山間であることを想像していたので少し意外ではある。
ただ、海に面していたことで、土管や建物用タイルといった大型陶器の運搬もしやすかったという利点が近代の常滑の発展の一因となったかもしれない。
作り方
常滑焼には様々な製品があるため、ここでは朱泥の急須の制作工程を紹介したい。
土を練る まず採取した粘土から、より細かい粘土を抜き取るための作業を行う。選りすぐった粘土をよく練りどろどろの液状にしていく。
ろくろで引く 急須は胴体、ふた、取っ手、口と部品ごとに成形していく。まず、胴体をろくろ台に伏せておき、回転させる。少しずついびつな形をへらなどを使って滑らかにする。胴体が終われば他の部分で、同様にろくろで仕上げていく。滑らかになったら乾かしていくが、それぞれの乾き加減がばらつかないように気をつけなくてはならない。
各部分の仕上げ 乾燥が進み固くなってきたら、余計な部分を削りきれいに整えていく作業。胴体と蓋が完全に合うように、微妙な調整をしていく。完全に乾燥させる前のこの段階でどれだけ細かく仕上げられるかが、質の高い製品となるかのポイントになる。
組み立て 口、取っ手を胴体に取り付ける組み立ての工程。胴体に特殊な道具を使って丸い穴をあけ、他の部分と接合する。丁寧になじませないと仕上がりの状態に影響するので、職人の力量が問われるところ。組み立て時点での乾燥具合、固さも慎重に確認していく。
乾燥 乾燥は気をつけないとひび割れや変形を起こしてしまうため、最終工程に移る前の重要な工程でじっくりと時間をかけ乾燥させていく。気温や湿度など微妙な変化によって乾燥具合は変わってくるので、調整しながら均一に乾燥させる。
素地みがき 素地みがきとは、布などで艶が出るまで磨く作業。磨きの作業を何度も何度も繰り返すことで、最終的にきれいな艶が出していく。
彫刻 窯に入れる前に模様を入れていく工程。ここは職人の技術が光るところで、印刀を用いて様々な彫りを入れる。
焼成 乾燥して彫刻を終えた急須を窯の中に積み上げていく。積み終えたら蓋をして、1,100度ほどの温度で12~18時間ほど焼成。(昔は安定した温度を保つために手動で窯の温度を整えていく必要があったが、現代ではコンピューター制御で温度調整が可能になった。)この温度調整によって焼き色が大きく変わってくる。焼成後、一日ほど冷ましてから窯出し、急須は焼成前と比較して8割ほどの大きさに縮む。
墨入れ、水洗い ここで最後にもう一度急須を磨き上げる。それから急須に彫った模様の輪郭をくっきりと表現するために、彫刻した箇所に墨を入れる。墨を洗い流すと模様がきれいに浮かび上がってくる。
仕上げ 最後の工程は、すり合わせ。常滑焼は、気密性の高さが売りのひとつなので、念入りに蓋と胴体をすり合わせていく。一つひとつ作業していくので蓋と胴体は完全に対になるため、異なる蓋を合わせると少しずれているのが分かる。
*上記の情報は以下のリンクからまとめています。
僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。
皆様も、良い一日を。