繊維の種類43:キュプラ

おはようございます。
週末までは東京でも気温が二桁にはならない冷え込みの厳しい日が続く模様で、きょうもきっちり寒々しい。

さて、今日は化学繊維の再生繊維の最後にキュプラに関して学んでいきたい。

再生繊維

再生繊維は天然の高分子化合物(植物から得られるセルロース繊維)の繊維組織を化学処理によって一度溶解してから再生させて紡糸した繊維。

キュプラの特徴

原料として通常はコットンリンター(綿花の種の周りの短い綿繊維)、場合によっては高純度木材パルプも用いられ、酸化銅アンモニア溶液に溶かし、湿式紡糸法で繊維に再生される(※湿式紡糸法:原料を溶かした溶液の中から押し出して化学反応させ、溶剤を取り除いて繊維状にする方法)。
キュプラの原料である綿は「天然繊維」だが、キュプラ自体は人工的に作られた「化学繊維」に分類される。つまり"天然繊維の肌や環境への優しさ"と"機能的な化学繊維"のハイブリットであるとも言える。また、キュプラの断面は表面も滑らかな円形なので美しい光沢を持った素材でもある。

銅アンモニアレーヨン(銅シルク)とも呼ばれるキュプラはベンベルグ®と言う商標で、現在は旭化成が製造販売している唯一のベンベルグメーカーです。

メリット・デメリット

メリットとしては、ビスコースレーヨンに較べて耐久性・耐摩耗性に優れている。同時に、吸湿性、放湿性があるので着用によるべとつきがなく、静電気も起きにくい。また、高級感のある光沢に加えて柔らかくしなやかでドレープ性に富む、また染色性が高く美しい色合いが出しやすいなど、着心地も見た目も良いことが挙げられる。
また、上記の通り旭化成が銅の再生利用技術を確立していることや生分解性であること、原料にコットンリンターを使用していることから、土に埋めると短期で自然分解されるなど環境負荷の低い繊維としても注目されている。

一方で、摩擦により毛羽立ちが目立ちやすく(白化)燃えやすい。また、レーヨンと似て洗濯による摩擦に弱く家庭でのケアが難しいため、他素材と混紡の製品が多い。基本的には家庭での洗濯はできず、できたとしても洗濯表示には「手洗い」を示す記号が付いていることが多いはず。水が苦手なキュプラにはお湯も禁物。手洗いはあくまでも"日ごろの着用のメンテナンス"として、シミや具体的な汚れがある場合はクリーニング店にお任せするのがいいだろう。

薄手の生地が多いのでコートやスーツのツルツルした裏地は(一部はシルクやポリエステルの場合もあるが)ほとんど場合キュプラが使用されている。
キュプラはツルツルとした滑らかな肌触りと吸湿性・保湿性に加えて、強度も高く静電気が起きにくい。他にも似た特徴を持つ素材はあるが、高級感を保ちつつ実用性を総合的に鑑みて、キュプラが裏地に最も適した素材として広く使われている。

キュプラが生まれた経緯

キュプラは1897年にドイツの化学者マックス・フレメリーとヨハン・ウルバンが、白熱電球のフィラメント用として発明した。2人はハインスベルグ近郊に工場を建て本格的な生産に乗り出したが、本来のフィラメント用の用途としては売れずに失敗した。結局、特許はドイツのJ・P・ベンベルク社が取得し、服地として広く使われるようになった。

日本では日本窒素肥料(現在の旭化成およびチッソ、JNC)が、ベンベルク社と提携して1931年(昭和6年)から生産を開始。このため日本では銅アンモニアレーヨンの呼び名として、ベンベルグが広く知れ渡ることになった。
銅やアンモニアの処理に難点があり、各国は次々と製造から撤退したが、旭化成は銅などの再利用技術を確立し、世界唯一のベンベルグ製造メーカーとなっている。

製法

銅アンモニアレーヨンの生産には銅アンモニア溶液(シュバイツァー溶液)を用いる。これは硫酸銅水溶液に水酸化ナトリウムを加えて沈殿させた水酸化銅(II) にアンモニア水を加えて溶解させたものである。この溶液は銅アンモニア錯体により濃い青色を呈し、セルロースを溶解させることができる。セルロースを溶解させた銅アンモニア溶液を酸性の水中に押し出すとセルロースが再生し、繊維を生じる。
化学式を持ってみてもなかなかに難しいが、コットンの種の周りの短い綿繊維をそのままでは使えないので、溶液で溶かして流動体にして再度固めなおしたもの、という理解でいいはずだろう(たぶん笑)

明日は、合成繊維に関して見ていこう。


こちらの文章は以下のリンクを参考文献として使用しています。


僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。


皆様も、良い一日を。

いいなと思ったら応援しよう!