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光のほうへ

これは、
あの時、絶望の暗闇にいたわたしに
向けたエールでもある。
想像していなかった未来に
いるわたしから
あなたへ。

わたしは、父親を生まれてすぐ亡くしたので
父の記憶は無い。
母親と二人暮らしで、
幼稚園に通う頃には、
半身不随の祖母との三人暮らしが始まった。

子どもを一人で育てながらの介護は
想像を絶する大変さだっただろう。
と今となっては思う。

親戚付き合いや
交友関係は狭く少なく
わたしの日々は、とても
静かな世界だった。
本を読むのが大好きで、暇さえあれば
本の世界にいた。本を開けば
いろんな世界が広がっていた。

不自由な体の祖母を一人にして
長時間の外出はできず
そして、
ペーパードライバーである
母とどこかに出かけた記憶は少ない。
なんで
わたしはどこにも遊びに連れていって
もらえないんだと
母を責めたこともあった。

そんなわたしは、成長していくにつれ
自由を手にしていった。
バイトをして、好きな服を買い
友達と遊び、恋もした。

通信の学校で学びながら、
美容師の見習いとして働く日々のなかで
恋に遊びにと夢中だった。

そして、その彼と結婚。
子どもを授かった時に、心配したのは
彼の持病のこと。
毎日飲んでいる薬の影響は
あるのか、大学病院の遺伝外来に
相談に行った。

問題はないと思うと
言われて、はぁ…と安堵の声が漏れた。

彼の病気は難病指定のもので
いつ悪くなるかは分からず
もしかしたら、そのまま
症状が悪化せず過ごせるケースも
あるという。

付き合う時に病気のことを聞いた。
だから、
1人で生きていくことも
考えている、と
言いながら
きっと強がりな笑顔の彼。

好きな人と生きていく。
それしか考えられなかった。
きっと、大丈夫!
今こんなに元気すぎるほど
元気だし、大丈夫!!
そう信じることしかできない。
誰しも明日のことは分からない。

日毎に大きくなっていくお腹を撫でながら
話しかけながら
幸せな未来を思い描き、
希望に溢れていた。

そんな日々を過ごしていた
ある日。
あれ、今日はあまり赤ちゃん動かないなぁと
感じて少し不安になる。
寝てるのかな、なんて思うも
あんなに動き回っていたのに
なんだかおかしいかも、と産婦人科に行く。

その時のことは、あまり覚えていない。
赤ちゃんの心臓が止まっています。
という医師の言葉が現実のものとは
思えなかった。
妊娠9ヶ月、もうあと少しで会えると
思っていた矢先のことだった。

陣痛の痛みに耐えても
元気な赤ちゃんには会えない。
こんなに静かで
悲しい苦しい出産があるなんて
知らなかった。

彼は、赤ちゃんの顔を見るなり
大きな声をあげて
咽び泣いた。
生まれてくるまでは、もしかしたらって
希望をもっていたと後で聞いた。

彼がいてくれたから
また頑張って生きていこうと思った。

きっとまた会える。

その数ヶ月後に
彼は帰らぬ人となった。
持病の病が急に悪くなり
入院して数日後のことだった。

わたしは、ひとりぼっちに
なった。

大きな大きな喪失感を抱え
どこを向いて歩いていけば
いいのかすら
分からない
どう生きていけばいいのか
ほんとに真っ白だった。

生きることを
諦めようかとぼんやり思う
廃人のようになった
わたしを支えてくれたのは
本だった。本の世界に没頭した。
そして、わたしがいないと生きていけないと泣く母だった。
一人じゃない
また生きていこう
生きていかなきゃと決心した。

二人の分も強く生きなきゃ
頑張らなきゃと
ガチガチに鎧をつけて
外に出るようになった。
一見、明るく笑い、遊び、仕事をして。
そして
家に帰ると寂しくて寂しくて
どうしようもなく
寂しくて泣いた。

空いた穴は大きくて
大きすぎて抱えきれず、、
誰かに何かにその穴を埋めて欲しかった。

でも、
その穴が埋まることはなかった。
それでいい、と分かった。

誰かに幸せにしてもらうのではなく
自分の幸せは
自分が感じるもの。
幸せは自分の中にある。

失ったものは大きい
でも
生きていること
いろんな感情を感じられること。
幸せなんだ。

そう思えた頃
少しずつ肩の力が抜けて
自分の人生を歩もうと思えるように。
時間はとても優しい。
無我夢中で生きた
大きな喪失の年から
10年の月日が流れていた。

今の夫と出会い
現在、
3人の子どもと夫と暮らしている。
賑やかで騒々しくて
そして愛おしさで溢れている。

一人っ子で
本の世界に浸ることが喜びだった
幼少期のわたしが今のわたしを
知ると、
さぞ、
びっくりするだろう。

夫と、ようちえんを開園したこと。
それも想像もしなかったことの、ひとつ!
家でもどこでも
いつもたくさんの
子どもたちに囲まれ笑っているわたし。
今でも不思議な感じ。

あのどうしようもなく苦しい
真っ暗な絶望の中にいた
あの頃のわたしには
想像していなかった未来だ。

どんなに打ちのめされても
諦めなかった
自分の人生を生きることを。

これからも想像もつかない
わたしの人生
楽しんで生きるつもりだ。

そう、未来は分からないから
面白い。
そして、自分の捉え方次第で
どんな風にも変わっていける。

今まで
出会ってくれた全ての人や出来事に
心から感謝している。

わたしは、
わたしの人生を愛している


#想像していなかった未来





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