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Jewelry Box Ep.4 プロポーズ大作戦
ジュエリーには記憶が刻まれます。
ジュエリー業界一筋の私が、これまで垣間見たエピソードを紹介させていただきます。
今回のエピソードはサプライズ大好きの大学時代の後輩が、やっぱりサプライズでプロポーズしたいという相談でした。
登場する方々には了承を得ておりますが、携わったジュエリーは個人所有のものですので、デザイン画や画像を公開することは致しません。
Ep.4 プロポーズ大作戦
人生において結婚は大きな節目である。
そして男性にとってプロポーズは重要な一大イベントということになりましょう。
大学時代の後輩からその重要なイベントについて相談したいと連絡があったので、私は快諾しました。
ふと彼が昔から悪戯っ子のような子供っぽさのあるところを思い出し、きっとまたサプライズを企てているのだろうと察しがついて、思わず頬が緩んでしまいました。
「やっぱりサプライズですよね~」
開口一番彼はやはり予想通りの言葉を。
「それでどんなサプライズにするつもりなの?」
「彼女、韓国ドラマ好きだから、やっぱりバースデーケーキから指輪が・・・、とか?」
「全然ダメ。そもそもダイヤモンドってのはね、親油性という特徴があって油を吸収して光が損なわれるの。生クリームとかムリ」
「そうなんですか。じゃあ、ラップで包んで入れておくとか」
「飲み込んじゃったりしたらどうすんの?」
「あ~、それは考えなかった」
彼はサプライズのことばかりで、肝心なことを失念している。
「あのねぇ、指輪を用意するっていうのが前提だけど、どんな指輪を用意する気?」
「そりゃぁ、普通のシンプルな6本爪のやつでしょ。ザ・婚約指輪的な?」
「あーあ、勝手に決めちゃって。プロポーズ断られちゃうかもよ」
「彼女は絶対オッケーしてくれますよ」
「君は女心がわかってないな。好みじゃない指輪をもらったって喜ばないの。悪いこといわないから、せめて彼女と一緒に指輪を選んだ方がいいわよ。独断専行すると後々なにかあるたびにネチネチいわれることになるからね」
「ええ~。でも指輪のないプロポーズなんてありえないですよ。指輪のケースをパカッてやりたいんです」
「じゃあルースでプレゼントしなさいよ。パカッとできるルースケースあるから」
「へぇ」
「リングのデザインは絶対彼女に選ばせてあげなさい。サプライズは他の演出でね」
「はい。先輩!」
とまぁ、こんな感じで私はパカッとできるルースケースと彼の予算に見合うダイヤモンドを用意しました。
後日、彼からお礼の電話とうれしい報告があったのは言うまでもありません。
「先輩、彼女すごく喜んでくれて、好きなデザインにしていい、っていうアドバイス当たりでした。デザインの相談もあるし、今度彼女を会わせたいんでぜひ食事しましょうよ」
「おめでとう。よかったね☆」
晴れて婚約した二人は本当に幸せそうで。
彼女は小柄で大きな瞳が印象的なとても可愛らしい人だった。
「彼にいいアドバイスをしてくださったみたいで、ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げるのもリスっぽくてかわいい。
「俺はさ、やっぱりケーキからサプライズがよかったんだけどね」
「それサイアクだから(怒」
「うーん、フラッシュモブとかも考えたんだけどね」
「それもダメ」
あらあら、彼女は柔らかい外観とは違い、なかなかはっきり物を言うタイプらしい。
「それでどんなプロポーズだったの?」
「ピアノ演奏してくれるお店で、ケーキが出て来た時にハッピーバースデーの後に安室ちゃんのCan you celebrateが流れて、パカッて感じです。意外と普通でしたね」
彼はとても照れていた。
「私の好きな曲だったのでいい思い出になりました」
「二人ともおめでとう」
「ありがとうございます。先輩も式にでてくださいね」
「もちろん」
それから彼女が選んだデザインというのは、センターストーンをメレダイヤで取り巻き、リングの腕にメレを一列に留めた可愛らしくも華やかなものでした。
彼のイメージとはまったく違っていましたね(笑)
※巻頭の画像のようなデザインです。
男性諸君、女性にとって結婚は憧れのものです。
いずれ尻に敷かれるにしても、何よりも彼女の意志を尊重した方が後々うまくいくものですぞ。