この夏、排卵していなかった私へ
つい先日まで金木犀が香った…と思ったら、突如の残暑。「9月って、まだぶっちゃけ夏だかんね?」と言わんばかりの最後の最後のトドメの残暑。
9月さんもどうもお疲れ様でした(ちょっと早めに)。
金木犀に、どどっと低気圧の台風に、トドメの残暑。束の間の夏と秋の往復書簡。そう、もう夏も終わりなのです(9月は私の中では夏おまけ期間)。
季節の変わり目も一瞬、四季の移り変わりも一瞬。32歳、2021年の夏も例年通り一瞬でした。振り返れば、オリンピック開会式なんぞ遠い記憶の彼方。ありがたいことに、個人事業主としてはせっせかと汗水流して、忙しい夏を過ごすことができました。
忙しいと健康は紙一重
気がつけば、夏の予兆を感じる5月から7月末までの記憶がない私。そろそろ夏本番、と思った8月頭。とてつもない倦怠感と、頭痛…まるでコロナの様な症状で一瞬焦ったものの、PCR検査は陰性。むしろいつもより低めの平熱。なんだ、夏風邪か。なんて思いたかったものの、ひとついつもと違うことが。
ー とっくに終わったはずの生理。だけど謎に続く出血。
「ああ、これはやばいやつかもしれない。」
流石に焦って、婦人科の扉を叩くことに。
まずは問診。
そこで出てくるのは「子宮筋腫」に「卵巣がん」「子宮がん」
今まで正直他人事だって思っていたワードがじんわりじんわり近寄ってくる。
「頼む、お願いだからこっち来ないで!!!」
なんて不安な気持ちMAXの中、問診を終えて、そこからエコーを使って内診。お股を開きながら、画面に映し出される自分の子宮を眺め、最悪の事態を想像するそんな時間。
すると先生が、
「ああ、排卵されてないですね。ほら、ぱんぱん。見て。」
と言ってエコーを(本当にパンパンの)右側の卵巣に向ける。そこには排卵できずに膨れ上がった卵巣が。なんだかごめんね、って気持ちになってカーテン越しのエコーで卵巣を眺める私。
原因は極度の疲労とストレス。それらによるホルモンバランスの乱れによる不正出血。
先生はとても心配そうな顔をして私を見て
「働きすぎなんじゃないかしら?卵巣に負担がかかるって、相当なんですよ。」
と言う。心底思い当たる節しかない私。
急に5月から猛スピードで駆け抜けた今日までの自分が、走馬灯のように蘇る。
ここ数ヶ月、“仕事だから”と言い聞かせ、全力を尽くしてきて「よかった」「ありがとう」の言葉で走り抜けてきたけど、本当に欲しかった言葉は「ちょっとゆっくり休んでみたら?」だったのかもしれない。先生の「ちょっと頑張りすぎかもね」の言葉に、初めて「あなた忙しすぎです認定印」をもらった気持ちになって、気持ちが一気にドミノ状態。
とはいえ、診察室で涙を流すなんて恥ずかしくて、何よりここまで至らないと「やばいよ」のサインに気づかない自分自身のアンコントロールっぷりに情けない気持ちでいっぱいだった。
そして念の為の「がん検査」もしてもらい、検査結果を待つことに。
きっと大丈夫だろう、なんてことはない
検査結果が出るのはお盆休みも挟んで約10日ほど。
その間に、ホルモンを整えるために中容量ピルを約1ヶ月飲むことに。中容量ピルは、旅行前の生理スケジュール調整のために数日飲むくらいで、こんなに長期で飲むのは初めて。
まるで1日中車酔いのような感覚で、食事も今ひとつ喉を通らず。体調は悪いまま。本当に最悪だった。そこに加えて出張、移動、ホテル、落ち着かなさに追い討ちがかかる。胸もぱつぱつ爆乳になるし、むくみっぱなし。加えて副作用特有の、上半身の痒みに四六時中気を取られる。気がつけば上半身は掻き傷でいっぱい、爆乳おっぱい。いいんだか悪いんだか。
そして慣れないピル生活に加えて、ちょっとぼーっとする瞬間に訪れる
「私、癌だったらどうしよう?」の不安
これが正直一番落ち着かなかった。32歳独身、フリーランスの私にとって、今後のしかかる治療の精神負担や、治療費もろもろ。これまで入院すら人生でしたことのない私には、計り知れない不安と恐怖が、ピル一粒一粒と共に身体と心に蓄積し、のしかかる。
人間のイマジネーションとはいい時も悪い時にも全力を尽くす。慌てて、自分の保険を見直したり、はたまた貯金の計算を始めたり。それに加えて、万が一があったら誰に連絡して欲しいか?そんなことまで考える。私が残された家族に残せるものってなんだろう?とか。
ー 1人で生きていくってきっとこう言うことなのかも
と、彼氏なしの現状も考慮して、このまま生涯独身の可能性も否定できないまま、ひとり、ポツンと部屋の中でぼーっとそんなことを考える(だいたい23時頃)。それはそれは生き心地の悪い10日間。
それでも不正出血は止まることなく、毎日おりものシートを変えては、ため息をつく。
いつになったら排卵する気になるんだ、私の卵巣。もう、やめてくれよ。
そんなことを思ってまた、赤く染まったおりものシートを付け変える日々。
ひと夏排卵しなかった私の卵巣がいいたかったこと
検査結果は陰性。ひとまず、がんではなかった。
すごくホッとした。本当に本当にホッとした。
けれども、私の身体にストレス負荷とダメージがかかっていることは間違いなく、その事実は何も変わらない。
不正出血は、ピルの服用をやめて生理を起こして、やっと止まった。
その最後の安心感を得るまで、生理が終わり落ち着くまでのおよそ1ヶ月以上。短かったけど、正直長かった。
そして、こうして私の夏は終わりを迎えようとしている。
ほとんどが体調の悪かった夏、をやっと終える。
改めて、仕事への時間配分・容量配分も考えた。結局、すぐに!とはいかず、9月中は忙しいままだけど、気分転換のランニングやヨガ、瞑想、のんびり入る長風呂を適宜入れることにした。あとは気晴らしにカフェに行ってぼーっとする時間も。
ちょっと顎周りにニキビが出始めたのは気になるけれど、概ねバランスよく、忙しくも楽しく過ごしていると思う。
1日1日、死に向かって生きている私たち。最悪、いつどんなことがあっても焦りたくない。実はそんなこともこの夏、病院で股を広げながら、エコーに映る自分の子宮を見て、車酔いならぬピル酔いをしながら考えた。いつの日か、がいつ来るかわからない。だったら、毎日がエンディングノートの連続だと思って、やりたいこと・会いたい人・伝えたいことをひとつひとつ解消しておきたい。
これまたイマジネーションが行き過ぎなのかもしれないけれど、どれもこれも後悔しないように。
そんな風に残りの人生を生きたいと思った夏のおまけ、9月。
おかげさまで、私は元気に2021年の夏を終えようとしている。そして10月はちゃんと休もう。そんなことを考えながら、今日も卵巣にありがとうを込めて。
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