人工授精は5回以上試みてもうまくいかないのでしょうか?
妊活・不妊治療をおこなっていると、
タイミング法は約1年、人工授精は約半年を目途に
クリニックから次の治療のステップへ進むことを促されることがあると思います。
ゆかり堂にお越しの方々の中にも
「次が人工授精5回目なので最後です」
「人工授精を5回おこなったら、次は体外受精に進むしかありません」
などとお話される方も多くいらっしゃいます。
「人工授精は5回以上試みてもうまくいかないのでしょうか?」
人工授精は5回程度を目途に
その根拠となっているのは、論文等の臨床データになります。
・1周期あたりの妊娠率は5〜10%
・人工授精を 4周期以上おこなった累積妊娠率
40歳未満で約20%
40歳以上で10〜15%
→80%以上が人工授精では妊娠が難しい
・人工授精で妊娠した場合、88.0%が 4周期以内に妊娠
・若年女性でも人工授精を5周期以上続けても、3〜5%しか妊娠を期待できない
これらのデータから、人工授精は5回程度を目途にされることが多いようです。
人工授精の適応
・軽度乏精子症、精子無力症
→少なくとも2回以上WHOの精液検査の基準値を満たしていない場合は、タイミング法での十分な妊娠率は期待できないため、人工授精を検討
【WHOの基準値】
〇性液量 1.5ml以上
〇精液濃度 1,500万/ml以上
〇運動率 40%以上
〇総精子数 3,900万以上
〇正常形態率 4%以上
・性交障害
→勃起障害や射精障害、性交痛、精神的な問題などで性交ができず、マスターベーションによる射精が可能な場合、人工授精の適応
・頸管粘液不適合
→ヒューナーテスト(フーナーテスト)で頸管粘液内に運動精子が少なく、かつ精液所見が正常な場合、人工授精の適応
・原因不明不妊
タイミング法でも妊娠に至らない場合、生殖補助医療(ART)をおこなう前段階として人工授精がおこなわれる
通常、原因不明不妊は、一般診療精査では診断できず、腹腔鏡等で検査しないとわからない不妊原因がある可能性が高い(ピックアップ障害、子宮内膜症など)
→性交障害や頸管粘液不適合とは異なり、妊娠率はあまり期待できない
人工授精が効果的なケース
・性交障害やヒューナーテストで頸管粘液不適合など
→治療効果が期待できる
・排卵障害、性交障害などの明らかな不妊原因がある場合
→人工授精などの一般不妊治療でも十分治療効果が期待できる
●原因不明不妊症と考えられている受精障害や卵子のピックアップ障害など
→あまり期待できない
人工授精を5回以上試みてもうまくいかないのでしょうか?
◎5回以上試みて妊娠・出産するケースは、もちろんあります
ゆかり堂にお越しの方では、
・これまでに6回人工授精をおこなうも妊娠せず
・妊活と体質改善のために鍼灸治療をご希望され来院
・来院されてから2回目の人工授精(通算8回目)で妊娠・出産
というケースもあります。
◎データの読み取り方
・5周期以上人工授精を続けても可能性が低い
→生殖補助医療へ移行したほうが可能性が高まる
☆見方を変えると
・多くのクリニック・医師が5周期を目途に生殖補助医療へと促す
→6周期以上人工授精を試みる人数が減少
→当然 妊娠・出産に至る人数も減少
※データとして妊娠率が上がりにくい状況になっていることも考慮したほうが良いと思います。
〇体外受精・顕微授精などの生殖補助医療にまだ進みたくない
〇生殖補助医療をおこなうつもりはない
など、ご夫婦・カップル間での意思をクリニックに伝えれば、人工授精を何回おこなっても良いと思います。
※5周期以上人工授精を続ける場合の注意点
●エビデンスとして、5周期以上人工授精を続けても可能性がどんどん上がっていくというデータではありません
→生殖補助医療へ移行したほうが可能性が高まるかもしれません
●年齢(個人によります)やAMHが低いなど 時間的な面を考慮したほうがいい場合
→早めに生殖補助医療へ移行したほうが良いかもしれません
●原因不明不妊と考えられている受精障害や卵子のピックアップ障害などがある場合
→人工授精での妊娠・出産の可能性はあまり期待できません
※人工授精の治療段階で、受精障害やピックアップ障害を確認する方法はあまりありません。
体外受精・顕微授精のステップに進むと
・治療費等の経済的負担
・通院回数増加、新たな検査や治療法などに対する不安などの精神的負担
・多くのケースで使用するホルモン剤などによる身体的負担
・通院回数が増えることによる時間的負担
・お仕事との両立の難しさ
など、個人差はありますが、負担と感じることが多くなることがあります。
今回お伝えしたかったのは、
「必ずしも人工授精は5回目までで、6回目以降に可能性が無いわけではない」
「人工授精を5回目までおこなうと、次のステップへ進まなければ可能性が無いわけではない」
ということです。
人工授精を続ける場合の注意点なども考慮していただいたうえで、ご夫婦・カップル間でどのようにしていくかご相談いただければと思います。
ゆかり堂治療院