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1年経ち、東京の山で100mileを走った話

2024年5/24-26
第2回Tokyo grand trail@100mile

東京の山を繋いだ100mile。
そんな構想があることを数年前に小耳に挟んでから、実現したら絶対走ろうと思い続けてきた。

6度目の100mile。
4度目の完走を目指す。
48時間制限、累積標高11,000m。
誘導・目印無しのノンマーキングレース。

昨年3月、左乳房全切除と13個のリンパ節郭清手術をした。
手術の1年後にmileを走る。
それが私の生きる目標となった。
そして復帰の舞台に選んだのが、Tokyo grand trailだ。

試走は1周+100km。
十分とは言えないけど、コースイメージはほぼ頭に叩き込まれていた。
恐ろしいボリューム感もわかっていた。
自分の体がどこまで持ち堪えられるかは未知数。

ゴール関門:48時間
ゴール想定タイム:46時間30分

眠気、胃腸トラブル、ロストなど何かしらのトラブルが起きたら、リカバリーが難しい。さらに87km佐野川の関門がタイトである。ロングレースで序盤突っ込まないのは鉄則だけど、体力のあるうちに貯金を作る作戦を立てた。

46時間30分のタイムスケジュール
スマホの待ち受け画面にして頭に叩き込んだ

ストックを使うかどうかも、私にとっては大きな問題だった。左胸から腕にかけて残る神経痛と攣れ。40時間以上の長丁場に耐えられるのか。迷った末、使う決断。結論から言うと、心配していた上半身は問題無かった。むしろ自分の脚だけでは到底歯が立たないコースだった。TGT制覇にストックは必須である。

緊張のまま迎えた当日。
真っ先にガーニーグーブースへ。
昨年、私はガーニーグーの売り子しながら選手を見送る側だった。重鎮さんとウッチーさん、お二人の顔見て「今年は選手で走ります」と言うと、同時に涙が溢れてきた。遠慮なくワンワン泣かせてもらった。

16:00スタート
レース序盤は、ボリュームのある奥多摩山域。初日ちょっと頑張っておきたい私は、力量をよく知る女子達に混じって進んだ。経験値高く、絶対完走するだろうという顔ぶれ。今の自分の体力を見極めながらも、予定より速い展開で進んでいった。

御岳エイドのスパイスカレー

A1御岳(27km)を出た所から、千鶴号(井上千鶴さん昨年女子4位)にご乗車させてもらう。良いペースで引っ張ってもらった。CP2梅郷(44km)で2時間の貯金ができたことを確認し、千鶴号を下車。ここからは自分ペースに戻し、貯金を崩しながら佐野川関門通過を目指す。

通矢尾根で朝を迎えた


日の出セブンで朝ごはん。カップ麺、おにぎり、ザバスプロテイン。3日も動き続けるのだから、一日3度の食事はエイド(コンビニ含む)でしっかり摂ると決めていた。行動中の過剰な摂取は控え、食べた物をちゃんと消化させ、次の食事をしっかり摂る。日常的なサイクルを極力維持することで、脳のコントロールと胃腸トラブルを起こさない対策の一つとした。それが上手くいったのか、今回は大きな胃のダメージなく最後まで進むことができた。ちなみに、ランナー仕様のジェルは一度も使わなかった。

A2十里木(70km) in 9:15
ドロップバック。考えなくていいように、やるべきことは紙に書いて入れてある。その通りに作業。けど手際が悪い。

十里木を出ると、臼杵山→市道山→醍醐丸→生藤山。ちっとも距離が進まない。地味なアップダウンの連続に体力精神力とも削られてく。時計を見て絶望し、ため息。この区間は応援のトレイルランナーと多くすれ違うのが救い。keiさんやJunさんも来てくれて、愚痴をいっぱい聞いてもらったw

市道山手前の登りでJunさん
Keiさんいい所で現れてくれたな~

A3佐野川(87km)  in 15:32
関門は17:00。序盤に貯金できたおかげで、焦らず着実に間に合った。佐野川へ向かう大きなモチベーションになったのは、他の選手のペーサーとして待機しているちえちゃんと応援のぐれさんがいてくれたこと。服部先生にも励ましていただき元気をチャージ。ペーサーを付けない私は1人で佐野川を出発。ここからようやくゴールを意識する。

ちえ&ぐれ♪
ラーメン2杯、プリン3個、温かいカフェオレ
ちえちゃん差し入れのフルーツ
佐野川エイド

2回目の夜が来た。「日影沢林道で待ってるよ」とカズさんからLINE。よーし、そこまでガンバロウ。真っ暗な日影沢林道をヘッデン点けて逆走してきたカズさんと合流。この安堵感。一緒に走って下る。自然と笑顔になる。1人だったら絶対歩いてたな。仲間の力は偉大。

闇の木下沢林道。頭ぼんやり、集中力無し。進んでるのにずっと同じ所にいるような錯覚。人の気配まったく無し。gpxは間違っていないのに、違う所にいるんじゃないかという不安。ゴウゴウと激しい沢の音に飲み込まれそう。「もう長いこと前にも後ろにも誰もいないんだけど、大会やってるよね?」とまきさんにLINE。返信無し。衝動的に、来た道を300mほど戻った。疲労のせいか弱気になっていた。心細かった。

戻った軌跡w

遠くに一つの灯りが見えた。ヨカッタ!近づいてきた男性ランナーに登山道まで引っ張ってもらった。山の道標を見て安心し、その場でしゃがみ込んで5分間目を閉じた。

A5和田峠(118km) in 0:33
強烈な睡魔はないけど、集中力がない。疲れてる。このまま進み続けるのはリスクがあると考え、仮眠を取ることにした。ウッチーさんに10分後に起こしてとお願いして、シューズを脱ぎ、簡易ベッドに横になった。寝たのはこの1回だけ。鶏がゆ2杯、熱いブラックコーヒー。気持ち切り替えて出発。

醍醐丸→市道分岐→入山峠→今熊山とハセツネの逆走。熟知しているはずのハセツネが、逆になるとまったく別物。ぼんやりした脳みそでgpxを細かく見ながら、時には後続ランナーを待って確かめ合いながら、慎重に進んだ。気持ち、体力、時間、大ダメージになるロストは絶対に避けたかった。

今熊山を過ぎた所で2度目の朝


A6十里木(134km) in 6:10
2回目の十里木エイドに戻ってきた。相当な疲労。口数少ない。余力なんてまったくない。が、実はここからがTGTの真の核心部なのだ。
あの言葉を思い出す。

今までのことは全部忘れて
ここからが始まり

待ち受けるのは、最後にして最大のボス、馬頭刈尾根→大岳→御前山。

一歩出す→踏み締める。超超スローモードでそれをただただ繰り返す。とてつもなく時間がかかった気がする。それでも立ち止まることなく、長い長い御前山避難小屋までを登り切った。
とうとう登りはすべて終わった。あとはゴールに向かって下るだけ。とはいえ、斜度キツめで10km以上続く拷問のような下り。この崩壊してる足で、もう走れるはずがない。。

あれ?
走れる!
ウソでしょ?

歩いているランナーに追いつき、抜いてく。信じられない。まだこんなに動ける自分がいたなんて。精神が体力の限界を越えたのか。本当の限界って何だろう、とまた思う。

最後の林道。眠気、疲労、表情無しw

ゴールに向かう最後の坂道を登る。
ようやく来た。私は帰ってきたんだ。気持ちは満たされていた。
ワカオカさんが拍手しながら駆け寄ってきてくれた。え?え?幻覚?
なんと、その後ろにはたくさんのトレラン仲間が!笑顔で出迎えてくれた。
なんて!なんて幸せなゴールなんだろう。


たくさんの仲間に見届けてもらいながら、私は100mileの世界に戻ってきた。
1年前を思えば、すべてが奇跡☆
周りの人達に支えられてきたここまでの軌跡。
いろんなことが、すべて報われた瞬間だった。

Tokyo grand trail@100mile☆完走☆

45時間41分44秒
 全体:60位/94人
 女子:16位/24人

[完走率] 全体:57% 女子:77%