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そして伝説へと
HD-2Dでリメイクされた『ドラゴンクエスト3』を、発売日に早速遊んでみた。楽しい。以前のリメイク作で何度かクリアしているゲームにもかかわらず、久しぶりに遊ぶとやっぱり楽しいのだから名作中の名作に違いない。
ファミコンソフトの発売が社会現象を巻き起こしたのがもう36年も前だという。当時はまだRPGの概念自体がわからずに遊べなかった。しかしその後のドラクエ4・5・6を経てスーパーファミコンに初移植された『3』を、めいっぱい遊んだ記憶がある。中学生の頃のことだ。
その後もゲームボーイカラーやWiiへの移植、スマホアプリ版など時代とともに異なるハードで遊び継がれながら、満を持してHD-2Dでのフルリメイクとなった。HD-2Dの描画力は先のライブアライブでも存分に堪能したが、新たに描き直されたグラフィックは、SFC版の延長線上でしかなかったこれまでの移植・リメイクと比べるとやはり圧倒的に美しい。配置や構造そのものはあまり変わっていないにもかかわらず、全然別のマップを歩いているかのようだ。
今の時点ではこれが最高の出来で間違いないだろう。ただ技術は進歩していくもの、ここが究極だとは考えたくない。これからも時代は移り変わっていく。やがては最初の製作スタッフの人も、ファミコン版の熱狂を目の当たりにした世代の人たちもいなくなっていくのだ。体験談・思い出といったものから、きちんと歴史に変わっていくものかどうか、まだ分からないところもある。
何百年も前から存在している書物や本に比べて、ゲームはまだまだ若いメディアだ。紙と違って、ソフトを動作させられるハードが無くなれば中身を知ることもできない。結局のところ数多ある娯楽の中のひとつでしかないから、歴史ある寺社仏閣や、その地に長く暮らす名家で代々伝えられる……なんてことも、今のところはないだろう。遊ぶ者がいなくなれば自然と消えていく、それは全てのゲームの宿命でもあるかもしれない。
しかしそういった媒体の弱点や文化としての浅さを超えてなお様々な人にプレイされ、名作として後世に残り、百年二百年先まで『ドラゴンクエスト』というタイトルが語り継がれたなら、そのとき勇者ロトの物語は本当の『伝説』となるのではないだろうか。優れた書物や、五線譜に記された音楽が時代を越えて愛されるように、ゲームソフトにも、もうそういった名作が存在しているものと信じてみたい。
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