「脱会したい」退院のことをそう話した父
内科の病気で入院した父が、退院直前に病院内で転倒し、外科病棟に転棟した父。この転倒のせいで、3日くらいで退院する予定が、既に1か月半が過ぎようとしている。毎日毎日リハビリを繰り返し、規則正しい生活はいいのだが、だんだんつらくなってきたのか、妹が面会した時に「ここを脱会したい」と言い出した。
認知症なので言葉は間違っているが、なんとなく伝えたいことが分かった妹。すでに家族と病院側の話し合いで退院の日は決めたばかり。そのことを伝えると、少年のような目になったそう。
車椅子に座り、歩行器と杖でリハビリを受けているが、このままでは家に帰れない。家は家で、手すりをつけるリフォームの相談中だが、
デイサービスで乗るために、車の乗り降りができなくてはいけないし、玄関から家に上がるのに、数センチの段差を上がれなくてはいけない。
ベッドに自力で寝られなくちゃいけないし、トイレの便座に一人で座れなくちゃいけない。
それよりなにより、オムツに失禁するようになってしまったのを元に戻さなくちゃいけない。
段差はただの段差じゃない。家の段差を想定してリハビリをする。
手すりも病院のように全部の部屋や全ての廊下にあるわけじゃない。家の家具を伝って歩けなくちゃいけないから、家具での練習も。
今までは、途方もないゴールに思えたそれらのリハビリも「帰宅」という目標ができると、がぜん目の輝きが違ってくるのは当たり前だ。
これって、誰にでも言えるよね。何のために勉強しているのか分からない子どもたちとか、何のために働いているか分からない大人とか。
私たちはそんないつの間にか目的を見失った行為から、今こそ「脱会」しなくちゃいけないのかもしれない。