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リンゴの焼き菓子の話

青森といえばリンゴだよね

青森出身という話題になると、青森があまり馴染み深くない方には大抵「青森といえばリンゴだよね」と言われます。
ご期待通り、青森といえばリンゴです。冬になると、おそらくどの家にも一箱二箱あります。実家から離れて暮らしていてもそれは変わらず、誰からかネットがけで丁寧に並べられた贈答用のおこぼれが段ボール一箱二箱、または出荷用にそのまま無造作に詰め込まれたままような木箱で届きます。毎朝のフルーツとして、また小腹が空いた時はおやつとして食べます。

日持ちのする果物とはいえ、温かい場所は苦手で、少しずつ鮮度は落ちていきます。生食したときのシャキッとしたフレッシュな食感が衰えてきたリンゴのことは「ボケている」と言います。青森だけかな、と思ったら、北海道や長野の人も言うそうで、この表現が一番しっくりくるのはどの地域も同じようです。

ボケてきたリンゴは、大抵、文字通り煮たり焼いたりします。私はこの、火を入れたリンゴもとても好きです。加熱している間の甘酸っぱい香りは素晴らしく、家中を幸せな香りに包みます。

リンゴのレモン煮は、我が家の常備菜ともいえるもので、冬の子どものお弁当の定番でした。子供たちが通った園は、冬になると温飯器でお弁当を温めます。だから、冬場はお弁当にミニトマトが入れられませんでした。その代わりに入れたのが、リンゴのレモン煮。皮を剥いて、適当な大きさに切って、砂糖少しとレモンの輪切りを入れたら蓋をして10分おき、りんごの水気が出てきたら火にかけます。シナモンはあってもなくてもお好みで、我が家は息子がすごく好きなのでシナモンも1本入れます。沸騰したら弱火にして5分煮て火を止め、蓋をしたまま冷めるまで待つだけです。急ぎの時は、リンゴを少し小さめに切って、水を少しだけ入れてすぐに火にかけます。出来上がった煮リンゴは、冷凍保存ができます。

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これがあると、パイのフィリングに、お茶請けに、ヨーグルトのトッピングに、ホットサンドの具にしたり、となにかと重宝します。

我が家でいちばんよく作るリンゴの焼き菓子は、アップルクランブルだと思います。戦時中にパイ生地の代わりに考案されたのが始まりというだけあって、パイ生地つくるよりもずっと簡単です。パイ生地代わりのクランブルは一度にたくさん作って冷凍しておくことができます。

アップルクランブルの作り方

<材料>※オーブンは200度に設定して温めておく。
◯クランブル:バター30g、薄力粉20g、アーモンドパウダー30g、きび砂糖 30g、シナモンパウダー少々
※アーモンドパウダーを使うと、香ばしい香りがさらによくなります。なければ、同量の薄力粉で代用可。

◯フィリング:上記に記した煮リンゴを好きな量 または
りんご 3個(450g)、きび砂糖 大さじ2、レモン 1/2個、バター 30g、シナモンパウダー 少々
※紅玉など酸味の強いリンゴを使用する場合はレモンを省略してもいいです。

<つくりかた>
❶ りんごは8等分のくし形にして皮を剥いて芯を取り、1cm程度の厚さのいちょう切りにする。
❷ 耐熱皿に❶を移し、砂糖とレモン、バター、シナモンパウダーを加えて全体をまんべんなく混ぜておく。
※煮リンゴを使う場合は、工程❶❷は省略する。

❸ ボウルに、バター以外の<クランブル>の材料を入れて全体を軽く混ぜ合わせる。そこに直前までよく冷やしておいたバターをさいの目に切って加え、指の腹でバターをすりつぶすようにして粉をまぶしていく。小豆サイズの粒が残り、全体がポロポロになるまで混ぜる。

❹ 用意しておいた❷に❸をかけて表面を覆い、200度に予熱したオーブンで20〜25分焼く。

出来上がり

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話の中のリンゴの焼き菓子

51のごくごく短い篇からなる『或阿呆の一生』芥川龍之介著。
その三十九番目の場面

彼は或カッフェの隅に彼の友だちと話していた。彼の友だちは焼林檎(やきりんご)を食い、この頃の寒さの話などをした。彼はこう云う話の中に急に矛盾を感じ出した。

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「君はまだ独身だったね」
「いや、もう来月結婚する」
 彼は思わず黙ってしまった。カッフェの壁に嵌(は)めこんだ鏡は無数の彼自身を映していた。冷えびえと、何か脅(おびやか)すように。……

「発表する可否は勿論、発表する時や機関も君に一任したい」という書簡を寄せて、『新思潮』の創刊仲間で友人の小説家・久米正雄に委ねた、昭和2年の作品。作品自体は自殺後にその書簡と共に発見されていて、書簡の日付が昭和二年六月二十日。それが正しければ、自殺したのは約ひと月後(昭和二年七月二十四日没)。

自叙伝的に自身の人生の断片を客観的に冷視し、詩的に、端的に語っていて、死が間近にあるような雰囲気がずっと漂っていると思うのは、先入観も多分にあるんだろうなあ。

カフェのメニューが焼リンゴなんて素敵です。私個人は、焼リンゴは焼き餅と同じぐらい家のおやつという印象がとても強いのですが、当時は珍しかったのかなあ。芥川もよく訪れた神保町ですが、神保町にあるスマトラカレーの老舗店では、秋から冬にかけての間だけ、焼きリンゴがメニューに登場します。カレー目当てではなく、それが食べたくてカレーを食べに行ってしまったりします。

 



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