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記憶に蓋をしていたアダルトチルドレンのはなし
歳の離れた兄弟が生まれた時から、わたしは母親代わりだった。
初めは、着る物がなかったから自分で洗濯をしたところから。そこからいつのまにか私がするのが当たり前になって、洗濯物が溜まっているとイライラされるようになった。
料理を手伝うのが好きだった。でも、一人で作れと言われても、当時スマホもなくてパソコンも触れないので、何をどうすれば良いのか全く分からなかった。
いつも肉と野菜を炒めて酒と醤油で味付けしていた。
皿洗いは父がしていた。
掃除は、多分誰もしていなかった。
ある日、多分、わたしが9歳くらいの時。弟がノロウイルスになった。
母親はイライラしている。弟には優しく声をかけているけど、たぶんとってもイライラしている。
2日が経った頃、私はいきなり吐き気がした。弟の症状は治ってきていて、母も少し余裕がありそうな時だった。
わたしは「また迷惑かけちゃいけない」と思って、2階に行って、吐いた。(トイレがリビングと近かったので気づかれると思った)
吐いたものを捨てる時に、バレた。「なんで隠すの!??」と泣きながら怒鳴られた。(今思えば母が泣きたいのもわかる。)
でも私は、"正直に言えばよかった"よりも"バレないように夜中に捨てればよかった"なんて冷静に思っていた。
そこからどうなったのかは覚えていない。でもそのエピソードは、たまに夢に見るくらい鮮明に覚えている。
何が一番嫌だったかって、私の出来次第で母親の機嫌が左右されること。
料理が美味しければ機嫌が良くなり、そうでなければ「まずい」と言われる。
鶏肉に火が通り切ってなかった時には、「ママを殺す気なの???!」ってキレられた。
わたしは自然に、自分の気持ちより母親の気持ちを優先するようになった。
自分の洗濯物は適当に干していたけど、母親のものと弟のものはシワができないように、叩いて、伸ばして、綺麗に干した。
「お昼に適当にお弁当買ってきて」とお使いを頼まれたときは、できるだけ脂っこくなくて、魚が入っていて、高くないものを探した。自分が食べたいものより母親が食べたそうなものを選んだ。
「センス悪」って言われると泣きたくなった。
(泣くとイライラされるから意地でも泣かなかった)
私が怒られたときは、必ず弟に「こんな人間になっちゃダメだからね〜」と言った。自分は悪い人間なんだと思うようになった。
怒られたくなかった。認められたかった。褒めて欲しかった。
…全てわたしが小学生の時の話。
中学以降は、家事をせずに普通に生活してたと思う。
弟が大きくなるにつれてわたしへの当たりも弱くなった。今まで家事をやっていたことに対して感謝もされるようになった。
でも、でも私は言われた傷つく言葉一つ一つを覚えていて、良い言葉はほとんど思い出せない。
今更もう無理だった。
母親に対して正直になったり、本音を言ったり、相談したり、真正面からぶつかったり、甘えたり、することはできなかった。
顔色を伺う癖は抜けない。
…今だに本音で相談することはないし、これからもないと思う。
大学の時のこと、就職してからのこと、引っ越しの時のこと、まだたくさんエピソードはあるけど、今回はこの辺で。
被害妄想といえばそうなのかもしれないし、周りから見れば、家のことを手伝う良い子なのかもしれないけど、、、
でもそう言って済ませたくない。
関係を修復したいとか、謝ってほしいとかじゃないけど、誰かに話して「大変だったね。辛かったね。」って言って欲しかった。
(たぶんこの話はこれまでもこの先も誰にもしない)
書いてスッキリしたのでまた記憶に蓋をする。