映画「舟を編む」の感想

映画「舟を編む」を通勤電車の中で観てしまって泣きました。2013年公開で各種映画賞も受賞している大ヒット映画なので感想を書くのもいまさらですが、残します。

企画から出版まで10年以上をかける辞書編纂の、編集部の話です。原作は読んでいないのですが、場面も台詞も相当絞り込まれているようです。公開された分しかしらないので推測するしかないけど、脚本もよいのだと思う。

とにかくキャスティングがすばらしい。特に主役の馬締光也役に松田龍平を置いた人、本当にすごい。対面コミュニケーションが苦手だけれど、辞書づくりを「一生の仕事」と決めて真摯に打ち込み、周囲の人との関わり合いを持ちながら年齢を重ねた馬締がいる。

宮崎あおい、オダギリジョー、池脇千鶴、黒木華といった若手俳優?の演じるキャラクターも息づいているなあと思ったし、さらに脇を固めるベテラン勢の小林薫、加藤剛、渡辺美佐子、八千草薫が作品全体の落ち着きや品位を増している。

なんなの?もう、こんなに作品にぴったりな配役できるってすごくない?一体どなたの仕事ですか???

そして監督の石井裕也は、公開当時30歳。30歳!

30歳でこんなに抑制された演出ができるなんてすごい。特に雪の日に傘をさして帰宅し、喪服のままそばを食べ、嗚咽をかみしめる馬締の背にかぐやが手を置くところ。2人が接触するのってこのシーンだけなんですよね。かぐや役の宮崎あおいをあんまり笑わせないのも大正解でしょう。(監督の、笑顔はいらないという演出だったらしい)(かぐや登場シーンのお月さまは、なんでやってしまったんだ……と思ったけど)

これもまた、なぜこの原作をこの脚本で、このキャストで、この監督に任せて、結果みごとに全部のピースがはまってすばらしい作品になって、って、しかも辞書編纂ですよ辞書編纂。超地味! 普通に考えたら地味でしかない話なのに、大ヒットしたわけじゃないですか。どういう人たちがどうやって働いたらこんな仕事ができるようになるのか知りたい。ほんともう尊敬しかないです。この映画を広く世に送り出してくださりありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?