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「憧れのバラ」で終わってしまうかどうか、それが問題だ

今年もバラのシーズンがやってきた。

サボテンも枯らす「THE★干物オンナ」なわたしだが、
実はベランダで鉢植えのバラを育てている。
 
3年前に恐る恐るバラデビューしてからというもの
増やすまい、と思いながら気づいたら7鉢になっていた。
 
あろうことか、このズボラなわたしが、バラにハマってしまった。
 
この庶民のわたしの家のベランダに、高貴で優雅な花が咲くのである。
ときめかないはずはない。俗にいう「沼」である。
 
美しさや香りの良さにうっとりするのはもちろんだが、損得勘定が激しいわたしは、「このバラを切り花で買ったら1本300円するかな、うひひ」と想像すると、おトク感も増してゾクゾクする。

ちなみにバラの大苗、一鉢だいたい3000円~5000円程度だ。10個花が咲けば元が取れ、しかも鉢なら毎年咲いて、鉢を大きくしてやる気を出せばグングンと大きくなり、ドラえもんのバイバインのように増え続けて、永遠のフィーバータイムとなるのである。
 
そんな感じで絶賛「沼ってる」私だが、
3年前までは、まさか自分がバラを育てるなんて思ってもみなかった。
 
理由は大きくわけて2つある。

1つは、今までに何度かベランダで植物を育てたことがあるのだが、大体の場合失敗に終わっていることだ。
 
結婚当初にウキウキとナチュラルベランダガーデンを作ろうと張り切って、ハーブだの花だのを植えたのだが、手入れの仕方が分からず、さらにアブラムシなどの虫害や、大嫌いなアゲハの幼虫だの、ニョロニョロ系の毛虫だの、テントウムシの幼虫など、幼虫の巣窟となってしまい、せっかく育てたハーブの葉を全部幼虫に食われてしまい、ハーブを育てているのか幼虫を育てているのかわからなくなって辞めた過去がある。
 
その後息子が生まれて低学年の頃に、家庭菜園にチャレンジし、夏野菜のトマト、なす、ピーマン、きゅうりなどにチャレンジしたが、なぜか全然実がならず、枯れてしまう。日さえ当たれば育つといわれるかなり簡単なものに挑戦したはずで、理由を考えてみると、どうやら日照時間不足だったようだ。

悲しいことに我が家のマンションは人間様に都合のいいように作られており、ベランダが日差しを遮るようにコンクリートでできていて、日の高い夏は限られた場所しか日が当たらない。その分高温にならずに助かるが、夏野菜にとっては環境が悪すぎた。かろうじてキュウリが数本とれたものの、トマトやなすに至っては花も咲かずにアブラムシにたかられて枯れてしまった。
 
そんなこんなで我が家のベランダは日照条件があまりよくなく、育つ植物は限られているので、息子が家庭菜園も喜ばなくなったあたりから、しばらく植物とは距離を置いていた。

さらに、毎回奮起してガーデニングに挑むも、キッチンで水を汲み、ベランダまで運んでの毎日の水やりや虫との格闘、そしてマンションの上層階ならではの「土を捨てる問題」などに直面し、人工的なコンクリートのベランダでの園芸に限界を感じ、「やっぱめんどい」と自分の不向きさにも直面しており、自分の人生では素敵なガーデンライフなどもう望めないと思っていたのだ。

ずぼらな私は他人が作った花を眺めるに限る、
とガーデンライフをすっかりあきらめていた。
 
けれどある日、Facebookでつながっている人が、バラのシーズンに連日美しく咲いたバラの写真を投稿していて「いいなぁ」と思った。
 
きっとその人の家は広いおうちで庭があるんだろうなと思ってコメントをしたら、「うちもベランダで育ててるよ」と返信があってビックリした。
さらに、その人もサボテンは枯らすらしい。
でもバラは好きでせっせと世話をするんだろうだ。
 
ベランダでバラを育てられるんだ。
ちょっとやってみたい。と興味がわいた。
 
けれど、それでもなかなか手を出せなかったのは
バラは難しい、という「先入観」のせいだ。

これが2つ目の理由。

一般的にバラは「育てるのが難しい」「病気や害虫に弱い」「繊細で手をかけないと育たない」と聞いていたし、そう言われると、あんなに優雅な花を家で咲かせるのは相当の努力が必要なんだろうなという気になってしまう。

過去にもハーブは幼虫育てに変わり、水をあげるだけのはずの家庭菜園も失敗し、それでも結構頑張ったのだが、もともとの性格はサボテンを枯らす女である。よほどのモチベーションが持てないとキツイ。
 
けれど憧れは募る。
自分の家にあんな花が咲いたら人生変わるんじゃないか。
やれるならやってみたい。でもめんどい。
 
そしてもうひとつの懸念として、毎年夏に旦那の実家である北海道に
帰省するのだが、長い時は1週間にもなる。水やりを頼める人もいないし、だからといってバラを枯らすのはつらいし、かといって行かないわけにもいかないし、どうしたものかとグルグル考えて悶々としていた。

そうやって、Facebookから流れてくる美しいバラの開花写真を眺めて、ついついその投稿主に

「やってみたいけどできなさそうで迷っている」
「難しそうなので初心者向けのバラを教えてほしい」

などと湿っぽいコメントを残すようになってしまった。
 
するとその方がこういった返信をくれた。

「好きでもない初心者向けのバラを買うより、自分が本気で気に入ったバラを手に入れたら、面倒でも、なんとしても、育てたいと思って頑張るんじゃない?」
 
わたしはハッとした。
 
順番が間違っていたのだ。
 
わたしは、自分の好きな色とか香りのバラを自分の家に迎えたいのであって、バラの育て方を知るためにバラを買うのではない。
 
そして、ズボラだろうが、サボテンを枯らそうが、今まで何度ガーデニングに失敗しようが、これは枯らせたくない、絶対に育てたいと思うほどの花を身の回りに置けばいいのだ。育てられるかどうかはそこからの自分次第だ。

目からウロコが、およそ数千枚は落ちただろう。
 
だったら、もしそんな私を狂わせるようなバラに出会ったときには、迎え入れよう。と思いながら日々を過ごしていたある日。

割とすぐに、その瞬間は訪れた。

習い事帰りの道すがら、小さいけど可愛い花ばかり置いている花屋さんを通りがかったときのこと。
 
バラの花をつけた鉢が1つだけ置いてあった。
 
そのバラは、紫とモーヴピンクとシルバーが混ざったような繊細な色合いでたたずんでいた。鼻を近づけると、私の好きな沈丁花の花のような、少し酸っぱいけど、バラのエッセンシャルオイルで嗅いだことがあるような「いかにもバラ」の上品で優雅な香りがした。
 
時はきた。
 
花屋の優しそうなオーナーの女性に、バラを育ててみたいのだけど、ズボラで植物を育てる適性がなさそうなのだがどうしたものかと相談してみる。
 
するとオーナーの女性はにこやかにこういった。
 
「バラって、基本的に “木” なので・・・今まで育ててこられた草花よりも乾燥にも環境にも強いと思いますよ」
 
ビックリした。
 
そもそも植物のことなんてロクに知識がないので、草と木の区別もついていなかった。
 
そういわれてみれば、木かもしれない。違いは茎の雰囲気だけだが、そういわれてみれば、木っぽい。
 
果てしなくバカっぽい発言だが、それくらい植物について考えたことがなかったのだ。
 
木と言えば、誰も水やりしてないはずの公園でも元気に育っている、あの「木」を思い浮かべる。あそこまで大きくなくても、私の中での「木」のイメージは非常に手間がかからず、公園で勝手に大きくなっているイメージだ。

それならできるかもしれない。
これが出会いだ。チャンスだ。
迷いに迷った挙句、そのお気に入りを持ち帰ることにした。


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これが記念すべき我が家のバラ第一号。
品種は「エンチャッテッド・イブニング」
魅惑的な夜という意味だ。なんと素敵な名前なんだろう。
 
心を躍らせながら持ち帰り、バラの育て方をググり、新しい花が咲くたびに狂喜乱舞してFacebookに投稿しまくった。
 
勢いでネットでバラをまた2つほどポチってしまった。
頭の中が正真正銘のお花畑だ。
 
そうこうしているうちに夏が近づき、うやむやにしたまま見切り発車でデビューしてしまったバラライフ。

いよいよ北海道の帰省で家を空けるときの水やり対策について本気で考えなければならなくなった。
 
以前、家庭菜園のときに使った水やり当番という浸透圧を利用した陶器の水やりグッズは、以前大失敗をして帰宅したときには全部枯れていたので、ほかの方法をググりまくった。
 
わたしの愛するあの子を枯らしてはいけない。
 
そして必死の検索でたどりついた「これならできそう」な解。

それは
「鉢ごとプールにドボンと漬けておく作戦」である。
 
子ども会で使うような縁日用の1000円程度のビニールプールを楽天でぽちり、膨らませてたっぷりと水を張る。
 
そこに愛しいバラの鉢をドボンと漬ける。
水を与えすぎると心配なのは「根腐れ」だが、ググって見つけた投稿によると、その方のバラは、家を空けて帰宅したら、根腐れどころか毎日の水やりがあほらしくなるほど生き生きしていたそうだ。
 
これならいけそうだ。
 
と、北海道出発の前日にしっかりとビニールプールに水を張り、水が茹らないように日陰に置いて、鉢をプールにつけて旅立った。
 
やはり少し心配しながら帰宅したが、1週間後、私の愛しいバラたちは、その投稿と同じように「元気ですが何か?」な感じで生き生きとしていた。
 
なんだ。
 
確かに毎日の水やりでは不十分だったのではないかというくらい
葉が元気に生い茂っている。
なんならもう水やりをやめて、ずっとプールの中でいいんじゃないかというほど元気だ。
 
とはいえ根腐れしても嫌なので、プールから引き揚げようとしたら、驚いたことに鉢底から根が少しはみ出していた。やる気満々である。
 
あんなに悩んだわたしはなんだったのだろう。
求めればそこに方法はあったのだ。
 
ここで改めて、バラの先輩の一言に感謝した。
 
本当に好きなことなら、多少苦労しても頑張れる。
なのに、できないことばかり考えて、あれこれ悩む。

けれど
本当にやってみたければ、
やりながら必死で考えればなんとかなるのだ。
 
バラに関していえば、愛好家が多く、ノウハウも豊富で、専門家や自宅でローズガーデンを作る本格派も多いので、普通の植物扱いをすると怒られるという側面もあり、それが「バラは難しい」「簡単に手を出してはいけない」という先入観につながっていたのだろう。

植物を育てても育てなくてもたいしたことではないが、
わたしにはとても大きな発見だった。
 
「難しそう」「できる気がしない」
そんなことであきらめてしまうことが世の中なんと多いことか。
 

イメージと実際が違うのは、乳がんの治療でも感じていたことなのに
またもわたしは「先入観」に足元をすくわれてしまっていたのだ。
 

それからというもの、
なにかを始める前はかなり慎重な私だったが
もう少しお気楽に「迷ったらやってみる」を選べるようになった。
 
 
迷っている、というのは、わたしの場合は
「やりたい」という気持ちが強いけれど
「失敗したらどうしよう」というブレーキがかかっている状態だ。
 
 
要は「やりたい」のだ。
 
 
世の中にはリスクを考えずに飛び込んで大けがをする人もいるが、
わたしはリスクを考えすぎて迷うほうだ。
 
 
そしてこれも個人差があるが

あまりやりたいことに貪欲ではなく
「やれなさそうならやめておく」という方が安心な、うちの旦那のような保守派タイプと、

とにかくやりたいことが多くて
「やった後悔よりやらない後悔が強い」という、わたしのようなつまみ食いタイプといるのだが、

わたしのようなタイプの人間は、始めてしまったらとりあえずやれるだけ頑張ってみるし、迷っているということはリスクヘッジもしているということなので「やってみる」を選んだ方がいいのではないかと思う。
 
人生をなるべく波風立てずに穏やかに過ごしたい人もいれば、
短い人生、できるだけいろいろ経験したいと思う人もいる。
 
どちらが良いとか悪いとかはないが、わたしは明らかに後者だ。
 
だからバラも突撃である。そして現状、相変わらずズボラなわたいだが、愛好家のように手をかけてはいないが、ググったり本を買ったりの生半可な知識で多少の殺虫剤や植え替え、剪定にトライし、3年目のバラを見ることができている。
 
わたしに限って言えば、
バラが弱いなんて誰が言ったのだ、と思うほどバラたちの生命力は強いと感じる。

うっかり剪定をしすぎても、強風で鉢ごとひっくり返っても、雨風にさらされても、頑張って新芽を出す。冬には葉を落とし丸ハゲになっても、ほんの少し暖かくなればドヤ顔で芽を出す。

 
こちらがビビっているよりも、あちらの生命力のほうが強い。うっかっりバラは愛好家が多く、ノウハウも豊富なだけに、こだわって育てようと思えば虫対策も剪定も植え替えもやることは山ほどある。


でも、最低限の空気と水と日光があれば、育つのだ。
とても基本的なことだ。
 

些細な情報にとらわれて、大事な根幹を見ることを忘れてしまいがちだ。
大事なのは基本だ。

 
そして何事も、頭の中のイメージや、世間で言われていることと
自分の見る現実は違うことが多い。


それを確認するには、自分の目で確かめるしかないのだ。
 
小さなことから大きなことまで、今後もいろんな迷いが出てくると思うが、迷っても、自分を信じてやってみる方向に舵を切る人生がいいな、と思う。


ブログチャレンジ8日目達成!
今日もお読みいただきありがとうございました!



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