たいして興味なかった「植物」展が面白すぎてどハマりした件@国立科学博物館
夏休みは毎年、息子と上野の国立科学博物館で特別展を見に行く。
毎年テーマは変わるのだが、夏は昆虫や恐竜など、息子の好きなジャンルが来ることが多いので、おそらく小学校低学年くらいから行っているのだが、今回はビミョーに地味な「植物」がテーマだった。
恐竜や怪獣、モンスターなどが好きな息子にしては地味なテーマだ。果たして刺さるか分からないし、わたしも家でバラとか花を育ててはいるが、わざわざ見るか微妙だったので、いちおう息子に「植物だけど行く?」と聞いたら、「行く」と即答。
結果から言うと、行って大正解。
今回はプログラムがうちわになっている。かわいい。
そんな植物展について、熱く語ってみようと思う。
植物展の公式ホームページはこちら
1.とにかく企画者の「植物愛」がすごい
何がすごいって、この植物展を企画しているメンバーの「植物への愛」がすごい。
今回の植物というテーマが地味、ということは当然主催側もわかっていて、この地味なテーマを、子どもたちが集まる夏休みに、天下の国立科学博物館でやる、ということで、「いかに興味をない人に面白がってもらえるか?」というところが徹底的に考えられていたと思う。
すべてのチャプターの切り口がキャッチーで、まったく興味がない人でも「ん?」と思うようなキャッチコピー。
パンフレットの装丁もかわいくて女子受けもしそうだ。
入ってすぐのつかみは、植物という「生き方」
植物は自ら動かないから、石とか土とかと同じような地味な存在で、植物本体に意志がないように思われがちだが、この展覧会での主張は、植物はあえて「動かない生き方を選んでいる」というものだ。
そもそも昆虫も動物も、動いてエサを求めないと生きていけないから動いているだけで、植物は太陽と水さえあれば自分で光合成をして栄養を作れるのだから「動く必要がない」のだ。
さらに、その動かない生き方を選んだうえで、自らを繁殖させるために昆虫を使って受粉させたり、種を軽くしたり綿毛にしたりで遠くまで飛ばしたりして、「他者を利用して」繁殖をしている。
そもそも植物がないとわたしたち人間は呼吸さえできないわけだし、さらに稲や野菜など、わたしたちが食物として取り入れることで、生活そのものが植物に依存している状態になっている。そういわれてみればそうだ。
さらに、植物は動いてないと思いがちだが、食虫植物のように動くものはもちろん、つる性の植物など、実は結構動いているものも多くて、その速さが違うだけで植物も結構アクティブだ。
とにかく地味で存在を忘れられている植物に、実はわたしたちが操られていた、というような事実を最初に突き付けられて愕然とする。
植物、すげぇ。
わたしの中の知的好奇心が刺激されまくっている。
2.植物にも「五感」がある!?
畳みかけるように、植物にも五感がある、という展示へ。
オジギソウは触られた瞬間に葉を閉じる。(触覚)
シロイヌナズナは、鉢をひっくり返しても上に伸びる。(重力を感じている)
アサガオのツルは、ぐるんぐるんツルを回して何かに触ったら、それにつかまるべくツルを絡ませる(触覚)
キャベツの葉は、アオムシに食べられると特殊なニオイを出して、アオムシに寄生するハチを呼びよせ、アオムシに幼虫を寄生させて食害を避ける。
さらにそんな個体があると、隣のキャベツがそれを察知して防御のニオイを出すらしい。(嗅覚)
虫でもよく聞かれるが、擬態して虫を呼び寄せ、受粉を促したりする植物もある。
展示室に入って数分で、すでにわたしは植物が人間よりもはるかに高次元な生命体な気がしてきた。あっという間に植物のとりこ。
植物には脳みそがないが、高次元生命体なんじゃないか?という事実を突きつけられる。
そういわれてみれば、うちで育てていたネモフィラという青い花も、
朝は東、昼は南、夕方は西と太陽の方向を向いて動いていた。
写真真ん中の青い花がネモフィラ。
ネモフィラを育ててみて分かったが、かわいい顔して結構肉食系だ。
あっという間に繁殖するので、ネモフィラ畑というのがあって人気なようだ(国営ひたち海浜公園の画像をお借りしました)
3.大きすぎ、小さすぎ、どんなところにも植物はある
植物といって分かりやすいのは世界最大の花「ラフレシア」と、世界最大の花の集まり、「ショクダイオオコンニャク」だろう。
ラフレシアも、ショクダイオオコンニャクも模型が展示されている。
やはりリアルに大きさを体感できるというのは楽しいものだ。
無駄にでかいとか、無駄に小さいとか、そういうのはやっぱり人の興味を引く。しかもショクダイオオコンニャクなんて、2年に一度しか咲かないのに、咲いたら2日で終了するという。なんのために・・・?と思ってしまう。
逆に小さすぎる植物や、南極や山岳地帯で極限状態に生息する植物、そんなに頑張らなくても、そこに住まなくてもいいんじゃない?と思ってしまうほど、工夫に満ち溢れた生態で興味深い。
4.植物にも個体差、性格がある!
まさかここまで踏み込んでくるとは思わなかったが、植物への愛が満ち満ちているので、結構突っ込んだ話題が展開されていく。じつは、植物の受粉と成長の家庭は、人の受精と受精卵の成長とほぼ同じだ、というのだ。
だから同じ種類でも種ごとに個性がある、という。
それはわたしも何となく感じていて、
薔薇も何種か育てていたり、以前は息子に見せるのにキュウリを育てたり、いろんな花を育てていて思うが、花ごとに性格があるなぁと思う。
さらに個体差もあり、以前育てていたキュウリの中で、ひとつだけ、ツルが、どう誘引しても次の日にはベランダの手すりにつかまろうと伸びている個体があった。あれは跳ね返りの強い性格だったのだろう。
植物を育てると、毎日水やりをするので、植物が擬人化されるというか、性格がわかってきて、「あの子」みたいな言い方になる。
だから、種ごとに性格が違うのもすごく納得がいく。人間も犬も猫も個体差があるのと同じで、植物も個体差があって当然だ。
それを究極まで突き詰めた、ガチの研究者たちが、面白おかしく深くて最先端の情報をわかりやすく展示してくれている。
流し見できる場所がないくらい、全部じっくり見た。
その次はまさかの「DNAのおべんきょう」だ。
花を形成するには3種類のDNA情報があって、それをいじると花弁のない花が出来たり、一重の花が八重になったりするらしい。その研究をしている内容をじっくり展示していて、みんな頭の中が「?」だらけになりながら、でもなんだかとっても面白そうなのでパネルの前であれこれ考えながら実際の花を見ていた。
この世のすべての生物はDNA情報でできているそうだが、なんと人間よりもDNA情報が多い植物もいるらしい。
植物なめんなよ、と言わんばかりだ。
5.植物がいなければ生物がいなかったという真実
そもそも植物がなければ、生物が生まれようがなかった。
といきなり言われると、そう??と疑問に思うが、
植物が光合成をして、太陽と水から酸素を出すから地球にオゾン層ができたわけで、酸素がいっぱいできたのだ。
そして酸素があるから酸素を取り込む生物ができて、植物が、その生物が出す二酸化酸素を吸って、酸素に変えるから生きていられるのだ。
植物さまさまではないか。
植物の進化なども太古の時代から追って紹介されているが、わたしはそれよりも、「植物さん、、なめててすみませんでした」の気持ちが強く、完全に「植物教」になっていた。
6.食虫、毒、凶器、なんでもござれ
食虫植物は、ワイルドな植物としてポピュラーだが、食虫植物がめちゃくちゃ賢いことについても思い知らされた。
ハエが止まった瞬間にパックリいっちゃうハエトリグサは、誤作動を防ぐために「30秒以内に2回」触られないと、口が閉じないそうだ。セキュリティすげぇ。
そのツボの蓋の裏に甘い蜜を仕込み、アリをおびきよせてツボに落とすウツボカズラは、ちゃんと人工的に栄養を与えれば、ツボを作らないそうだ。なんかすげぇ。
そしてそれ以外にも、実がマキビシみたいになって、刺さると抜けない「かえし」までご丁寧についている凶器みたいな植物があったり、
みなさんご存じ猛毒トリカブトがあったり。
おとなしいとか癒しとか言ってんじゃねぇよ、と植物のダークサイドを見せてくれる楽しいコーナーだ。
7.そもそもわたしたちの生活は植物ありき
言われてみればわたしたちの衣食住は植物なしでは生きていけないくらい依存している。なのになぜか軽視しがちだ。
着るもの(綿、麻)、食べ物(米、野菜)、住むところ(木、畳)
特に日本人は稲作はかなり昔からされていたし、住宅事情もすべて自然素材で、木造家屋に畳を敷き、和紙で障子を貼っていた。着物も絹は動物性だが桑の葉を食べるし、綿や麻の天然素材で作っていた。
昆虫展のときにも、あの何も考えてなさそうで、気持ち悪くて鬱陶しいだけの昆虫たちの叡智、そして自然のすごさに驚いたが、今回も、めっちゃ軽視していた「植物」さんのたくましさ、賢さ、そしてそれを作った自然の叡智に完敗である。
期待値が低いほど満足度があがるのかもしれないが、本当にあんまり興味がない人にもおすすめの特別展だ。
8.国立科学博物館の特別展は、どんなテーマでもテッパンに面白い
ここ最近、中学生になり、だんだんものが分かってきた息子と話すのだが、どんなテーマでも、科博(国立科学博物館)の特別展はめっちゃクオリティが高い。
確か息子が初めて科博に行ったのが「生命大躍進」というあらゆる生命の源をたどる壮大なスケールの特別展だったのだが、息子はその関連番組であるNHKの「生命大躍進」をいたく気に入り、暗記するほどヘビロテして見ていた。わたしも息子を持つまで、科学なんて一切興味がなかったのに、付き合ってみているうちに「進化すげぇ」となり、博物館に行くのが楽しくなってしまったのだ。
息子は特に恐竜展が好きなので、科博以外の恐竜展も行ってはみるのだが、なんとなく「子供だまし」感がぬぐえない。化石と復元模型を展示して、はい、あとはお土産コーナー。という感じ。恐竜好きな息子からすれば、だいたいの知識は「もう知ってる」みたいな。
しかし、科博の展示はさすが国立、本格的な研究者が集合して最新の研究でわかったことをいち早く、わかりやすく、展示してくれる。
とりあえず特別展だけ通っておけば、なんかいろいろ知識が入るし、この地球に生きていることが楽しくなる。
9.国立科学博物館の特別展でマストなもの
さて、かなり長年、科博の特別展に行っているが、マストなアイテムが二つある。
9-1.イヤホンガイドのレンタル
まずは入り口でイヤホンガイドは絶対に借りたほうが良い。
とにかくわたしのような科学に興味がないドシロウトでも楽しく聞けるようにイヤホンガイドが構成されている。特に夏の企画は子どもも多いので、非常にわかりやすく、聞きやすい。
今回は滝藤賢一さんと、声優さんの掛け合いで進んでいったが、滝藤さんは植物マニアだそうで今回ナビゲーターを務めているそうだ。
9-2.特別展の図録(公式ガイドブック)
公式ガイドブックは2000円程度でまあまあ値が張るが、展示されていて、面白くて見直したくなって、自分のスマホ写真に収めたようなパネルはほとんどすべて収録されているし、目玉の展示も当然収録されている。
さらに今回は、研究者のプロフィールや対談など、展示だけれは知れなかったことも載っていて、めちゃくちゃ楽しめた。
このふたつは絶対におすすめだ。
10.ミュージアムショップでうっかり足元をすくわれる
毎回息子が沈没する、展示の最後にある特設グッズ販売会場。恐竜や昆虫だと息子が粘ってわたしが飽きるのだが、今回は息子よりもわたしがハマってしまった。
毎回、「それはちょっとやりすぎ」な特別アイテムが出るのだが、今回は「ラフレシアのぬいぐるみ」が登場していることは事前にツイッターで知っていた。
けれど、どうせ無駄に大きくてネタにしかならないのだろうと踏んでいたら、意外や意外。めちゃくちゃ可愛い。けど高い。約5000円。
大きさも絶妙で、色もサーモンピンクと赤の中間色で大好きな色味で、ああ欲しい、でも高いし、いつもは息子に「そんな高いもん買えん!」と言って却下してるのに、ああどうしようと迷っていたら、息子が「俺も欲しいし買えば?」と背中を押してくれて、うっかりゲット。
人気商品らしく、会場内でも何人か購入していた。
持って帰っても、やっぱりかわいい。
この写真より実物の方が可愛いので、ぜひ特別展で見てみてほしい。
図録(公式ガイドブック)の装丁も可愛い。愛が伝わってくる。
中学になったら忙しくなり、息子とがっつりお出かけもしていなかったので、テンションが上がりまくってしまい、帰りに常設のミュー事務ショップでもカワウソのぬいぐるみを買ってしまった。パソコンの前に置いている。めちゃくちゃ癒される。
11.最後に
もともと知的好奇心が旺盛だが、科学には本当に興味がなくて、虫なんかどうでもよかったし、地球とか宇宙とか、古代も何も全然興味がなかった。美術は好きだったので、上野の美術館には行けども、科学博物館なんて存在も知らなかった私だ。
だが息子のおかげで科学にも興味がわいて、子どもに付き合うつもりで訪れた科学博物館が、いまではすっかり新しい知識の吸収の場となっている。
そしてわたしが若いころをすごした昭和の時代に比べると、地震や台風、水害などの天災も増え、地球環境もどんどん変わっている。だからこそ地球とか自然とか、そういう自然科学についての知識も知っておくことで、自分が生かされている存在なんだな、と気づけるし、日々の生活でも感じることが変わってくるなと思っている。
国立科学博物館は、現在予約制。けれど予約は余裕でできてしまう。コロナのせいか、それとも植物がテーマのせいか、やはりいつもより来館者が少ないのかもしれない。
せっかくなのでぜひ、この夏訪れてみてほしい。
開催概要(東京・大阪)
◆東京
特別展「植物 地球を支える仲間たち」
会期 2021年7月10日(土)~9月20日(月・祝)
※会期等は変更になる場合がございます。
開館時間 9時~17時(入場は16時30分まで)
休館日 7月12日(月)、9月6日(月)
会場 国立科学博物館(東京・上野公園)
◆大阪
会期 2022年1月14日(金)~4月3日(日)
※会期等は変更になる場合がございます。
会場 大阪市立自然史博物館
植物展の公式ホームページはこちら
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