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乳がん治療の病院選びで一番大事なこと【乳がん体験談 その4】


2016年の年末に小さなクリニックで
いきなり乳がん宣告を受けたわたし。

年明けまでに治療を受けたい病院を探してくるようにと言われ
ネットで病院探しに明け暮れた年末年始。

家族にがん経験者もなく、まったくの手探りから、
なんとか都内にある、がん専門病院にお世話になることを決めた。

けれど、病院選びは本当に大変で、何をポイントにしてよいのかさっぱり分からなかったため、もし乳がんを宣告され、治療する病院選びに困っている方がいたら、参考になるかと思いこの記事を書いてみる。

乳がん手術、抗がん剤、放射線、そして経過観察。
一通り治療を受けてからしみじみ感じたことだが、


病院を選ぶ際に一番大事なことは

「病院とあなたの相性」だ。

「相性」というと、ぼんやりしているように思われるかもしれないが、要は自分が大事にしたいことと、病院の方針が根本的に合致しているかどうか。

そうはいっても病院の方針なんて、ホームページには良いことしか書いてないし、どうやって調べるのか難しいと思うかもしれない。

確かにどこも病院は混んでいるし、短い時間で相性を見極めるのは大変かもしれないが、いまは病院の口コミなどもネットで見られる時代。

口コミはもちろん「個人の感想」であるし、そのときに接した医師や看護師によってもかなり印象は変わる。そして当然、良い口コミ、悪い口コミがあるし、それを書いた人の性格にもよる。

あてにならないような気もするが、じっくりと「良い口コミ」「悪い口コミ」を読んで、良いポイントが自分の価値観に合致しているか、考えてみると、うっすらとその病院の「カラー」みたいなものが見えてくることがある。

口コミサイトは例えばこんなサイトだ。

相性も大事だが、通えないと意味がない。
わたしの場合は、まず絞り込むために以下の条件を絞り込んだ。
これは病院のホームページでわかることだ。

1、病院に通えるかどうか

いくら良い病院でも通えないと意味がない。手術だけならよいが、乳がんの抗がん剤治療は、毎週通院する場合もある。家族のお見舞いも負担になるし、なにより自分ががんを患いながら通院するのが、どの距離までなら大丈夫なのかは考えておいたほうが良い。そして、自分が「近くて通いやすい」ほうが良いのか、「多少遠くても気に入った病院で治療を受けたい」のか、そのあたりも自分の優先順位を大事にしたほうが良いと思う。

わたしは近さよりも、多少遠くてもしっかりと症例数があって、さまざまなケースに対応できるほうが良いと考えた。

2.病院の設備、規模、症例数

これは先日の記事にも書いたが、ホームページで調べることが出来るので調べておいたほうが良いだろう。

症例が多いほど経験値が高いというのはやはりそう思う。

わたしは病院選びに悩んでいた時、たまたま医師の知り合いが別件で連絡をくれてアドバイスを求めたところ、乳がんのことに詳しい医師に聞いてくださり、とにかく今お世話になっている病院は、症例数がとにかく多いことと、病理チームの優秀さが際立っているので間違いないと思う、と教えていただいた。

症例数が多ければ多いほど経験のデータベースが溜まる。人の細胞は千差万別で、同じ「乳がん」でも人それぞれだ。だからこそある程度の症例数があったほうが臨機応変に対応できるだろうと思う。

3.病院との相性

これはなかなか見極めるのが難しいが、一番、大事。だと思う。

乳がん治療はガイドラインが決められて、「基本的には」同じような治療を受けることが出来ることになっている。

ただし、病院のカラーや院長の方針などにより、
割とベクトルが違ったりする。

ほんの少しの違いにしか感じなかったのだが、治療中にほかの病院から移ってきた人とも話を聞く機会があり、病院の方針と自分の考えが大枠で会っているかどうかはすごく大事だと思った。

実はわたしも病院を選ぶ際、実際に治療でお世話になった病院とは別に、もうひとつの病院でも話を聞いていた。

その病院はわたしの家から近くて通いやすいこともあるが、何よりも際立った特徴が「乳房自家再建」

つまり切り取ったおっぱいの部分に、自分の腹や尻の肉を移植して、疑似おっぱいを作るというものだ。

この自分の肉でおっぱいを再建するという技術も、いくつかやり方があるのだが、そこの病院でやっていたのは穿通枝皮弁法というやつで、

肉をくっつけるだけではなく、お腹から肉を取る際に細い動脈も取って、それを胸の動脈につなげるという、とんでもない緻密で繊細、かつ技術力が必要な手術だ。

穿通枝皮弁法(せんつうしひべんほう)
筋肉を使わず、お腹などの脂肪組織を組織につながった細い血管をつけて胸に移植し、乳房をつくる方法です。筋肉を取らないので、身体機能への影響が少なくてすみ、乳房が下垂気味でも自然な再建が行えます。

他の方法についても、こちらのサイトに詳しく掲載されている。


わたしの乳がんは、自分で見つけられたくらい、つまり2~3センチのしこりになっていたし、腋下リンパ節にも転移があったので、部分摘出ではなく、片側の乳房を全摘手術であることは、どこの病院に行っても変わらなかったと思う。

その際にわたしは、どうせ胸を切るなら、手術ついでに腹の肉を移植できれば一石二鳥だな、と考えて、こちらの乳房再建に長けた形成外科のある病院の乳腺外科にも相談に行ったのだ。

わたしの乳がんは全摘手術、抗がん剤が必要というところまではどの病院でも同じ方針だったが、乳房再建に関しては2つの病院で意見が異なった。

がんの手術と同時に、おっぱいを作ることを「同時再建」というのだが、

現在お世話になっている病院は、
「同時再建は、絶対に反対」なスタンスだった。

理由としては、がんを取り切るように手術はするが、それでもがんの芽がまだ残っているかもしれない。取り切ったといっても、その皮膚細胞から再発のリスクもあるし、再建しておっぱいを作ってしまうと、せっかく取ったガンの患部の上に、余計な肉が乗ってしまい、術後の検査がしにくくなるというもの。

そして、もし今後再建を考えるにしても、わたしの治療はおそらく最後の仕上げに放射線治療もするため、手術と同時に自分の肉でおっぱいを作っても、その新生おっぱいに放射線を当てることになり、黒く固く、ひきつったものになってしまうとのこと。

さらに乳がんの手術単体でもかなり体力を使い、免疫が落ちる可能性が高いというのに、ほかの腹肉まで切ってしまっては感染症のリスクも高い。断固反対。ということだった。

一方、形成外科にスーパードクターを抱える病院では、乳がん手術と同時に乳房再建する件数も多く、感染症のリスクなどのことを聞いても「あまりありません」とのことだった。再建後の検査のリスクに関しても、そこまで再発の心配も多くないし、乳房再建してもきちんと検査はできるので大丈夫、とのことだ。

どちらも大きな病院の医師が話していることだ。

がんの治療方針は、どこも同じではないんだな、と気づいたが、
どちらも大きな実績ある病院の医師が話していることだ。

どちらもその先生から見て、まっとうだと思う意見をくださっているわけだし、親身になって話してくれていたと思う。

となると、もう自分が選択するしかない。

こうなったときにどちらを信じるか、どちらに身をゆだねるか。
これは本当に正解はなく「自分次第」だと思う。

わたしは悩みに悩んで、最終的に「限りなくリスクを避ける」方法を薦めてくれた病院にお世話になることにした。

自分が納得して決めたので後悔はないし、わたしはこの病院でお世話になって本当に良かったと思っている。

でも、もうひとつの病院でお世話になっても治療はできたし、それはそれでよかったのかもしれない。

ただし、自分が少しでも引っかかる部分があるまま進んでしまうと、何かあったときの不信感がとんでもなく膨らんでしまうと思う。

わたしの場合は、いろいろと迷ったが
「できる限り安全な方法を採用する」
という方針が自分に一番しっくりきたので、

乳房同時再建は諦め、全摘手術のみを受けた。
なので、いまだにわたしの右胸はまっ平らだ。
けれど確かに定期検査でも右胸のマンモは必要ないし、余計な肉がないのでエコーも見やすい。変な細胞もすぐに見つかる。

乳がん、特にわたしのがんのタイプは、乳がん手術後5年までは再発率が割と高く、それ以降は比較的再発しにくいといわれている。主治医の先生は決して押し付けはなく、わたしの不安なことはすべて聞いてくれ、納得がいくまで説明してくれるような先生だったが、再建に関してだけはきっぱりと「反対」だった。

「再建は、5年の経過を見てからでも遅くはない」と断言した。

医師も人間だ、自分の意見を押し付ける医者もいれば、患者に寄りそう委者もいる。わたしの主治医は本当にラッキーなことに、付き合いの良い、親身になってくれるスーパー優しく、かつ優秀で、かつ手術の腕もピカイチの先生だった。わたしはあれこれネットで調べては、根掘り葉掘り質問しても、すべてスパッと答えが返ってくる。

結局、この先生についていこう。と思えるかどうかがカギなのだなと思った。わたしはこの先生の人柄が好きだし、本当に信頼している。

わたしのように、一つのことをこだわってトコトン調べる人は少ないかもしれないが、自分に合うかどうかを感じて、違和感を感じたら冷静に考えてみることは大事だと思う。

実際、病院が合わずにわたしの通う病院に転院してきている人も複数いたし、いくつも病院を転々としているうちにがんが大きくなってしまったという人もいた。

それでは元も子もないが、「がん」という病気を治療するにあたり、当然患者の自分は不安でいっぱいになる。その不安をどの病院なら解消してくれそうか、それは個人差がある。だからやはり自分なりの「相性」を大事にしたほうが良いなと思う。

乳がんつながりで知り合った人から聞いた話では、こんな病院があったそうだ。

・胸を失いたくない患者さんに、なるべく乳房を残すように尽力してくれる病院

・全摘手術をする人には、人口乳房(つまりシリコン)での再建を薦める方針の病院

・わたしが相談をした病院のように、自家再建を得意としていて、再建前提で治療方針を決める病院

ちなみにわたしのお世話になっている病院は、

・できるだけ再発を防ぐべく全力を注ぐ病院

といえるだろう。

リスクを減らそうとすれば、必然的に患部を大きく取る方向に行く。なので見栄えは悪い。わたしは結婚もしていて息子もいるし、おっぱいの役目は果たし切ったのであまり未練はなかったから、この「全部とっちゃえ」に賛同できたのだと思う。

たとえば未婚の方はこれからのこともあるし、そうでなくても、自分の姿が変わることで非常に心を痛める人もいる。

乳房という「女性らしさ」を代表する部位であるだけに、デリケートな扱いをしてくれる病院も多い。ただし切除する患部を小さくすることによる、再発リスクについては、当然、各病院の症例でデータを取っているのだろうが、確認したほうが良い気がする。

また、病院自体のカラーもかなり違うようだ。

わたしがお世話になっている病院は、国立ということもあり、すごくアッサリしている。がん専門病院ということもあり、がんは特別扱いされないので、塩対応な医師や看護師さんもいる。偉そうで上から目線の医師もいる。


わたしも今の病院に初めて訪れたときの先生は、とんでもなく上から目線で、わたしが質問をしようものなら「素人が何言ってんだ」的な感じで怒られ、なんだか怒りと悲しみが湧き上がってきて、看護師さんに「がんで不安な人に向かって言う言葉か!」と怒りをぶつけ、看護師さんも心当たりがあるのか、「悪い先生じゃないんですけど、言い方がねぇ・・・」と困った顔でなぐさめてくれた。先生の方も私とは相性が悪いと思ったのか、次回以降は別の医師に変更されていた。それが大当たりのわたしの執刀医。

なので、病院との相性もあるが、先生との相性もある。
もし自分がどうにもしんどい、となれば医師との相性について相談してみても良いかもしれない。

そんな淡白気味なわたしの病院だが、他の病院はもっと優しいらしい(笑)

クリスチャン系の病院では、特に手厚い待遇をしてくれるそうで、神のご慈悲がありますように、とハグをしてくれたり、なんてのもあるようだ。

病院によっては部屋が個室オンリーで1泊ウン万円なんてところもあるらしく、わたしは入院費のことまで考えないまま、たまたま国立病院にお世話になったが、逆に何も考えずにその病院で治療を受けることにした方は、入院費でぶったまげたそうだ。

精密検査して、治療方針を決めて、いざ入院まできてしまったら、なかなか「高いからやめます」とは言いにくいと思う。ちなみに手術などの医療行為は保険適用、高額医療費適用があるが、病室のグレードは保険適用外なので実費でかかる。豪華なご飯が出れば、その分豪華にお金が消えていくので要注意だ。

わたしは基本、入院するときに病室にひとりでいるのが怖くて耐えられない(お化けが怖い)ので、絶対相部屋でお願いします!というタイプなので、希望通りの相部屋、しかも隣のベッドの人はトイレに介助が必要でひっきりなしに看護師さんが来る。さらにナースステーションの目の前で、夜中でも蛍光灯の光がまぶしくて眠れないほどで、アイピローを持ってくればよいと思ったほどだ。だけど一人で眠るよりは怖くなくて良かった。

逆に、入院生活、費用はかかっても、誰にも邪魔されずにゆったり個室で、と考える人もいるし、そうなれば個室があるのはうってつけだ。

乳がんを宣告されて、ただでさえパニックなのに、病室の費用なんて目がいかないと思うが、この記事を読んだ人は一応病院選びの際に一応参考にしたほうが良いと思う。

長くなったがこのように、治療の病院選びは「病院との相性」が一番大事だと思う。自分の考え方と、病院の考え方がずれていると、何かあったときにとても後悔してしまう気がする。

あまり時間がない中で病院を選ぶのも大変だが、この記事を読んでくださっている人が納得のいく治療ができるような選択ができればよいなと思うし、もしわたしの話で参考になる部分があれば嬉しい。

今日も最後までお読みくださりありがとうございました!

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