未知の自分へ、変化を楽しむ。歴史ある香水に心奪われるアラフィフの話
わたしの鼻はとても敏感だ。
妊娠前までタバコを吸っていたのであまり鼻が良いという自覚はなかったが、妊娠を機に禁煙。鼻が特に敏感になると言われているつわり期を迎え、本格的に鼻が良くなった。別室で寝ていてもご飯が炊ける匂いが分かるくらい。
出産後もその鼻の良さは変わらず、いまに至る。鼻が良いというのはいいことばかりではない。人工的な香りが強い洗濯洗剤などに気持ち悪くなってしまうなど困りごとが増えた。
電車の隣に座った人、映画館で隣に座った人などの香りがきついとそれをこらえるのが辛い。逆にほのかな出汁の香りなどを楽しむという意味では他の人よりは楽しめているのかもしれないけれど、比較にならないのでどちらかというとデメリットの方が際立ってしまうわたしの鼻。
家の洗濯洗剤は無香料、シャンプーや洗顔料、化粧品などもできるだけ香りが控えめですぐに飛ぶものを選んでいた。母の家に行くとバリバリ香料だらけの「〇タック」の香りで洗濯させてもらうために洗剤を買って行く始末。
強すぎる香りに気持ち悪くなる「香害」なんていう言葉も出てきたので、においに敏感な人はわたしだけではないのかもしれないけど、あれだけ香料まみれの洗剤でみんな文句を言わず買うのだから、まだニオイに敏感な人が少数派なのは確実だろう。
そんな自分の敏感すぎる鼻に手を焼き、できるだけなんでも無香料を選んでいたわたしが、突如「香水」に興味を持ち始めた。
どういう心境の変化か分からないが、なんとなく自分て周りに匂いを発しているのだろうと思う瞬間がときどき訪れるようになった。50だし、オジサンほどの加齢臭はないにせよ、もしかして頭皮のニオイとか加齢臭的な何かとか、自分では分からない謎の異臭を発しているのではないかと思い始めたのだ。
自分のニオイって自分では分からないというからなおさら心配。よく、シャンプーや洗濯洗剤の香りであろう香りを漂わせている人がいるが、わたしの場合洗濯洗剤もシャンプーも無香料を使っているので、自分のニオイをかき消せない。それはそれで困るなぁ、何か良い方法はないかなぁと考え始めた。
誰、とハッキリ思い浮かばないのだが、ときどき、ふわっと風に乗ってめちゃくちゃいい香りがする人がいて、そんな風にふわっといい香りがさせられる香水をまとうのはどうか?と思いついた。
ただ香水って結構きついニオイのものも多く、パート先で香水をブン撒いて歩いているバイトの男の子の近くにいると気持ち悪くなるし、そんな風に自分が「香害」の元になるのはごめんだ。
学生時代には喫煙していたので鼻がバカになっていていろいろ香水をつけていたが、当時はカルバン・クラインのCK1とか、ラルフローレンの「サファリ」だとかを付けていた記憶がある。けれど「香水くさい」と言われたことがあるので今の自分がかいだら「オエ」ってなっちゃうんだろうなというのも想像できたし、過去のものに引きずられずに一から「自然な香り」を探してみようと考えた。
とはいえあまりに知らなさ過ぎるのでとっかかりがない。何かヒントはないかと思って推しが使っている香水を調べてみることにした。現在の推しはK-POPグループ「SEVENTEEN」のミンギュ。
泣く子も黙るイケメンぶりと、顔に似合わない優しい性格が好きなのだけど、インスタにあげる写真や着ている服のセンスも好きで「この人っていい匂いしそうだな」と思ったので調べてみた。
するとミンギュが使っている香水のひとつにイタリア最古の薬局が発祥となっているサンタ・マリア・ノヴェッラの香水があった。
このメーカーは聞いたことがあった。かなり昔にコスメフリークの友人がイタリアに行ったとき、世界最古の薬局で、香りのいいコスメがたくさんあると教えてくれたので覚えていた。
こちらはなんと1200年代創業で、なんと800年続く老舗ブランド。当時は薬品としてハーブなどの調合を行っていたいわば「漢方薬局」的な立ち位置だったそう。当時イタリアを支配していたメディチ家御用達の香水は今でも伝統的な製法のまま販売されているのだとか。
これだけ古くからの歴史あるメーカーのため、香水も天然栽培の草花や天然油脂を用いて伝統的レシピで作られているという。
天然の香料であれば、鼻が敏感なわたしでも大丈夫そうだなと思い、とりあえずお店に見に行ってみることにした。
横浜駅の駅ビル、NEWOMANに入っている店舗に恐る恐る足を踏み入れる。だって香水屋さんなんて入ったことないんだもん。
横浜店は小さなスペースだけど、親切な店員さんが対応してくれた。鼻が敏感だけど使える香水を探していると伝えて、いくつかの香水をお試しさせてもらった。
最初に狙ったのはミンギュ愛用の「ザクロ」。なんとも濃厚なパウダリーな香りで、最初はムワっとするのだが、徐々に高級なヨーロッパの石鹸のような香りに落ち着いてきていい感じ。
もうひとつ店員さんが自然な香りと言って勧めてくれたのが「ポットポプリ」という香り。本物のポプリも販売しているのだが、それをイメージして作られた香りらしい。こちらは確かに自然な香りで、薬草みたいな香り。嫌味じゃなくてこちらも気に入った。
香水はアルコールを使うし、体温に載せるため、最初の香りから最後の香りまで、徐々に変化を楽しむもの。できれば今この瞬間の香りではなく、時間がたってからの香りも確認して購入したほうがいいとのことで、片方にザクロ、片方にポプリの香りをつけてくれた。押し売りしない余裕も好きだわ。
解説によると
ザクロは
ポプリは
らしいので、やっぱりザクロのほうがムスクとかイランイランが入ってる分、むわっとする感じが強い。
ウキウキしながら帰ろうと思ったNEWOMAN、よくよく見ると他にもたくさんの香水を取り扱うショップが入っていた。その中でもひときわ気になったのが、アンティークな店構えのショップ。ひとりひとり接客するために順番待ちの行列ができているので、気になって調べてみると、こちらはフランスのブランド「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」という店らしい。
クラシカルな雰囲気のものに弱いので、こちらにも興味が湧いたがあまりの行列に並ぶ気力をなくし、とりあえず帰宅。
どっちの手首もくんくんしながら一日過ごしたが、なんかどっちもいい。どっちも欲しいけどなかなかのお値段。どうにも決められず、もうちょっと使ってみたいなといろいろ検索したら出てきたのが「香水の量り売り」サイト。
1回分、10回分など、ほんの少量を安価で試したいというわたしの希望をそのまま叶えてくれるではないか!
香水ってやっぱり身体につけるものだし、片方ずつではなくその香りをまとってみたいよねぇ。
ということでこちらでザクロとポプリ、そして帰りに気になったビュリーをはじめ、他のブランドでも気になるものをいくつかチョイスして注文。
小さな容器に入ってあれこれ届き、ザクロとポプリ、どちらも試した結果、やっぱれい決められない!両方欲しいけど、1本1万超えるので、両方はちょっと、、、と迷って結局ミンギュとお揃いに軍配があがる。
ちょっと濃いめの香りなので、夏になったらポプリに変えたらいいかな、というのもあって今回はミンギュと同じ香りをまとうことにした。妄想も膨らむし。(と知り合いに話したら「推しの力ってすごいな」と言われた。確かに。)
そうと決まればあとは買うのみ。ただ心地よい接客と素敵な店構えの店舗を持つというのにネットで買うのは味気ないので、またいそいそと横浜店を訪れる。そしてドキドキしながら「ザクロ」のオーデコロンをゲット。時期的にクリスマスだったこともあり、言い訳は「自分へのクリスマスプレゼント」だ。
紙袋も可愛いし、箱も可愛い。
ボトルも可愛い!
ザクロをゲットしてご満悦だったのだが、お試し香水で買ってみてもうひとつすごく気に入った香りが、先日NEWOMANで立ち寄りそこねた「ビュリー」の香水。
「イリス・ド・マルト」という香りで、かいだ瞬間に「うわーーー石鹸っ!!!!」という感動が広がる香り。
嫌味がなくて、自然な香りが気に入ったのでやはり一度店舗を訪れていろいろな香りを試してみたくなった。
「オフィシーヌ・ユニベルセル・ビュリー」はフランスで1800年初頭に創業されたらしい。
レトロでクラシカルな店構えとパッケージに、もう少し古いのかと思いきや、19世紀発祥。だけれど伝統的で質の良い香料にこだわり、さらに身体に優しい製法にこだわって作られているというのに好感を持った。
年明け、いそいそと店舗へ向かう。
こちらも感じの良い店員さんがひとつひとつ丁寧に説明してくれる。わたしがイリス・ド・マルトの香りが気に入っているが他の香りも試したいと伝えると、写真左にあるポンプで片っ端から香りを試してよいとのこと。
香りは20種ほどあったけれど、やっぱりわたしは「イリス・ド・マルト」の香りがやっぱりいい。あといっぱい試しすぎてわからない・・・となってしまったので店員さんがチョイスしておすすめしてくれた香りが「リケン・デコス」という香り。なんでもスコットランド渓谷のイメージで「苔」の香りがメインなんだとか。系統としてはイリス・ド・マルトと似ているとのこと。
確かにそう言われればそんな気もするけど、ちょっと香りの中に土臭さが入っている感じ。まぁ「苔」だから当たり前?ビュリーのアイコニックな香りですと言われてこちらも揺らいだけれど、やっぱり香りこそ第一印象が大事と「イリス・ド・マルト」が好きかなぁ。ちなみに「イリス」はアイリスのことらしい。アイリスってこんないい香りするの??嗅いだことないよ。
こちらビュリーの香水には、他にはない特徴がある。それは、アルコール不使用テクスチャーが乳液状の水性香水であること。
アルコールを使わないので最初のムワっとした感じがなく、ダイレクトに本来の香りを楽しめることと、アルコールにかぶれてしまうような肌の弱い人でも使えること、髪などにもつけられることなどメリットがたくさんあるそうだ。揮発性が低いので、香り方も控えめで、自分のパーソナルスペースに入ったときに「ふわっと香る」というのが特徴だとのこと。そんなこと聞いたら欲しくなっちゃうじゃん。
で、こちらもなかなかのお値段(2万超え)でかなり迷ったのだけれど、「自分へのお年玉」ということで購入した。自分へのご褒美多すぎやしないか?と自分で突っ込みながら、今年も頑張ろうと自分を奮い立たせるつもりで。
ちなみにそれぞれの香りの解説。
イリス・ド・マルト
リケン・デコス
袋がかわいすぎる。
箱にカリグラフィーで名前を入れてくれる。この箱捨てられないじゃん。
ボトルが素敵すぎる。プラじゃなくて陶器の重みがあるのが好き。
思い切って購入した二つの香水は、どちらも見た目も素敵すぎて飾っておくにも最高。香水を並べて、クラシカルな雰囲気の一角を作ってみた。うーん、幸せ。
ちなみにこの後ろに置いたボトルは、たまたまキッチンストアを覗いたときに目についたボトル。用途がハッキリしないので売れなかったのか値下がりしていて、可愛いので即ゲット。隣の額に入っているのは、マルシェで面白いテキスタイルをブックカバーにして売っていたおじさんから買ったもの。文庫本にかけるのがもったいなくて額に入れて飾ってみた。
たまたま全部、年末から年始にかけて手に取ったものなのだが、今の気分がこんな感じなのかなぁ。
そうそう、以前、子どもの頃から欲しくてやっと購入したシルバニアファミリーは卒業し、リユースショップにお返しした。もう満足した。という感じだった。
なんとなくそのあたりも自分の中での変化かなぁと思った。
だけど、こういうクラシカルでラグジュアリーな雰囲気のものが好きなんだってわかったのは40代入ってから。なんとなく目を引かれることはあったし、西洋絵画もバラも好きだし、世界史も割と好きだしで要素はあったのかもしれないけれど、気づかなかったんだよねぇ。好きなものを見て心が躍るってこういう感じなのね。
やっぱりヨーロッパのクラシカルな雰囲気が好きだなぁと改めて思ったので、そのうちこの二つのお店の本店にも行ってみたいなぁ。サンタマリアノヴェッラの本店はフィレンツェ。フィレンツェ行きたい・・・
産後ずっと無香料人生を送ってきたわたしが、急に香りに目覚めるだなんてなんだか不思議な感じ。子育ても落ち着いてきて、なんとなく50歳を節目にして自分のことにもう少し手を入れようという気持ちの変化なのかなぁという気はする。
この変化が何につながるのかはわからないけれど、自分のアンテナが立つ方へ歩いて行けば、自分が想像できないような自分に出会えるかもしれない。変化を恐れず、それを楽しみに、自分の気持ちの向く方へ進んでいこうと思う2024年のはじめである。
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