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坂本龍一|音を視る、時を聴く|感想散文録
昨日、東京都現代美術館にて、坂本龍一さんの展覧会に行ってまいりました。綺麗な言葉で感想を述べようと思ったのですが、感情そのままに書き殴った文章をそのまま載せたほうが臨場感があって良いような気がして、メモとして残していた言葉をそのまま載せます。
昨日からずっと
私の大好きな【Aqua】を聴いています。
娘さんがお生まれになった時に作った曲である【Aqua】はとても温かくて、いつも涙が溢れます。
私の中から溢れるように、音が流れるように出てきた言葉は、きっと私の奏でる言葉。
どうか届きますように。
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坂本龍一さんの展示を見て
音の生き様をひしひしと感じた
音が呼吸をしていた
音が泣いていた
音が微笑んでいた
音が踊っていた
音が弾んでいた
音が包み込んでくれた
【Art is long,life is shortー芸術は長く、人生は短し】
彼は確かにそこに生きていた
【LIFE-fluid,invisible,inaudible…】
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流動する霧と水の動き
ライティングの色によって感情が変化していくようだ
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水が燃える
煙のように霧が立ち込める
感情がグッと掻き乱されるが
それでも染まらぬ青は揺るがない冷静な何か
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木々が揺れる
木漏れ日が輝く
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眼下に広がる水の波紋は
朝露なのか 落ち葉なのか
それとも水面に佇む私の足跡なのか
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私は見上げる
空を泳いだらどんな音がするのだろう
泳ぎ続けたらどんな転調をするのだろう
どこまで浮遊するのだろう
天国はその先にあるのだろうか
それを知って
またこの世に戻ってきたところで
私の人生はきっと
今以上に面白くなくなってしまうだろう
ほんの少し前まで
答えの出ない悩みに頭を占領されていたのに
なんともくだらない考えが頭をよぎる
fluidー流動する
invisibleー見えない
inaudibleー聞こえない
流動するものに身を任せ
見えないもの、聞こえないものは
ただ感じるだけでいい
わからないことはわからないからこそ
愛おしいのかもしれない
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大きく息を吸い込んで
大きく吐き出した時
どんな音がするだろう
どんな音階で どんな音色で
どんな強弱をしているだろう
【霧の彫刻】
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霧の中で考えた
これが霧の音であり呼吸の音なのだと
身体中に優しくまとわりついて
次第にまわりが見えなくなって
少しだけ怖いけれど
それが心地よくて
このまま消えてしまったら
私はどこへ行くのだろうと考えた
なんとも形容し難い感情だ
喜怒哀楽の感情を水に溶かして
ほとんど透明に近い色まで薄めたような
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私は大きく息を吸った
それを吐き出すとゆらりと霧が動いて
そのまま溶けて消えていった
ずっとこのまま ここにいたら
私の心を丸ごと無に返してはくれないだろうかと
無謀な願いが頭をよぎる
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霧は晴れる 否応なく
この悲しみや苦しみから抜け出したいのならまだいい
悲しみや苦しみに包まれて
それに安心しきっている人間には
耐え難いものだろう
このまま霧に包まれてしまえば
これ以上なにも感じることはないのだから
それでも霧は晴れる
これが生きるということだ
最後の展示がこの霧の彫刻である意味が
なんとなくだけどわかったような気がした
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