出版絡みの入力:内職のような仕事をどう捉えるか?

 ずいぶん前の話だけれど、母が在宅で仕事をしていたことがあった。ノートパソコンまで用意して、内職みたいな仕事――要するに、文字を入力する作業をしていたわけだけれども、手書きの原稿数枚、脇に置いて、ひたすら打ち込んでいく。頻繁に出かけて行っては、次の原稿を持ち帰る。

 当時の私は知らなかったけれど、しばらくしてから「騙された」のだと聞いた。おそらく、研修とか、自分専用のパソコンを入手するのとかで、お金を払わされていたのだろうと思う。その割に仕事量はたいしたことなさそうだったので、結局、お金にならず、マイナスになって終わったのだと思われる。

 今ではパソコンも当たり前に普及していて、改めてパソコンを入手したり、タイピングスキルをマスターし直したりしなくても、この程度の仕事はできそうに見える。

 ただし、出版絡みは注意が必要だ。必要な知識は漢字程度ではない。JISから外字、校正や申し送りまで、知らないといけないことが結構ある。
 本が完成するまでには、不可欠な作業だが、その末端の仕事は、非常に地味で、スキルが必要なハードワークである。

 社員としてオフィスで働く場合、こうしたことは問題にならない。その場できちんと研修を受け、必要な知識を身につけて働くことになるし、難しければ質問することもできる。時間労働で対価が支払われるため、内職のような低賃金になることもない。
 在宅では、わからないときにその場で質問ができない。原稿を見せなければ質問すること自体が難しく、できる量が人によって異なるため、少量しかこなせない人の指導まで、いちいち手が回るわけでもない。

 そのため、必要な指導を働く本人の負担で行う制度になっているところが存在するんだろう。スキルを持った人が少ないうえ、社員ではないため、いつ辞めても不思議ではないのだから、リスクは負えないというわけだろう。

 実際には、スキルを自分で身につけることはできるらしい。とはいえ、校正を学ぶ動機がない人が、気楽にできる仕事ではないのも事実だろう。もともと適性のない人にこなせるような仕事ではないはずだ。

 「騙された」という不信感が先に出てしまうと、慣れによってスピードが上がる、というところへ到達する前に辞めてしまうかもしれない。ほかに校正などを学ぶ理由もない場合、本が好きでも大変な入力作業をするのには向かないかもしれない。

 出版部の活動を広げようとしているので、校正を学ぶのは、今の私にとって、やっておいて損はないことかもしれない。プロの原稿を見ることもできるとなると、ノルマがきつくない出版作業を請けて、紙ベースの出版業界について学んでおくのも悪くない。

 まだ少し迷いはあるが、先日、挑戦した入力テストでは、適正ありの判定が出ている。

 現在、大阪にいる彼から、「遊びに来ないか」というお誘いを受けている。移動が多すぎるので、悩むところではあるが、5月までにJALのポイントを消費しないと消えてしまうので、行ってもいいかもしれない。
 こういう相手に臨機応変に対応できればと思って前の職場を休み、結局、接客だったため、コロナの影響を受けてそのまま離れてしまったわけだが、書きものしながら、新しい勉強をしながら出かけるのは、悪くない気もする。


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