彼の自転車と独り言
ここ数日、彼から大量の写真が送られてくる。
京都にしばらく滞在した後、いったん千葉のほうまで来ていたんだけれど、再び旅立ち、今度は滋賀、三重、和歌山と自転車で移動していたらしい。
自転車?
ロードレースやサイクリングが好きなのは知っていたけれど、部屋に自転車が置いてある写真には、ちょっと驚いた。黒い手袋も見えるし、どっかのプロチームのユニフォームまで、ご丁寧にハンガーにかかってる。
「部屋に自転車あるけど、前はそんなの、なかったよね?」
「日本でも5、6台買ったよ」
じゃあ、普段は外にあったのか。
ときどきサイクリングに出かけるのに、借りてるんだと思っていたんだけれど。
だって、日本が拠点ってわけじゃないし。移動も頻繁だから、そのたびに持ち歩くなんて手間はかけないだろう。話を続けてみると、やっぱり移動のときに買い替えていそうだった。
ロードバイクではなさそうだけれど、一日中乗り回す自転車なんて、そんなに安いわけでもないと思うのに。
日本が拠点じゃないと言っても、コロナの影響で海外を飛び回りづらくなっているのも事実かもしれない。
故郷を離れて、しばらくこちらに滞在中。もう半年くらいになるか。さすがにこれだけの期間滞在するには、長期滞在ビザがないといけないはずだ。たぶんビジネス用のビザ。
今度、東京来たら、「ほかに移動するときは私の家に置いていっちゃえば?」と言ってみようか。どうするかな。毎回、離れた場所に移動するたびに買い替えてたら、無駄な経費かかるし、めんどくさいでしょ。
相変わらず、謎が多い人。仕事の話なんて、してくれないし。話の内容の大半が趣味。音楽とか、アートとか、自転車とか。移動が多すぎて、ついていけないし。
いったい今後、どうするつもりなのか、見当もつかない。一緒に生活するイメージなんて、湧かないんだけど。
まあ、なんかおもしろいから。