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すきだよの資金調達の裏側

2ヶ月前の2024年10月、すきだよは資金調達を発表した。

創業から4年。これまで自己資本とずっと事業を行ってから初の資金調達。

別に大型調達でもなんでもない。ただ、カップルTechのスタートアップとして伸ばしていくことを決意した。

なぜいま資金調達したのか。逆に言えば、「なぜこれまで4年間、資金調達しなかったのか」という問いのほうがシンプルだ。

思い起こすのもしんどいので詳しくは書かないが、創業時にスタートアップ界隈からは距離を置こうと思う出来事があり、自己資本で伸ばす以外の選択肢しかなかったという方が正しい。

資金調達している女性はたった2%。直近でも話題になったが、女性起業家の半数以上がハラスメントに遭っている状況があり、私も数年間、ずっと資金調達から遠ざかっていた1人だ。

数年間は「調達するか自己資本で伸ばすか」という悩みの間をずっと彷徨っていた。

絶望の連続だった投資家との壁打ち


スタートアップ界隈から距離を置いていた私だったが、市場の変化やメンターからの助言もあり、「資金調達も検討してもいいかも」と思うようになり、軽い気持ちで投資家との壁打ちを再開した。

しかし、投資家との壁打ちは絶望の連続だった。

当初は私の伝え方が拙かったこともあり、「離婚寸前の人の方が金払いがよくて儲かるよね」「コミュ障の恋愛弱者を狙った高単価サービスにすれば」等、実現したい世界観とまったく違うアドバイスをいただくことが多く、何度も挫折した。

ちがう。ちがうんだ。

離婚寸前のほうがペインが大きく儲かるのは間違いないが、関係性が険悪になってから修復を試みても遅すぎる場合が多いことは何百ものケースを見てわかっている。

自分たちが実現したいのは、カップル夫婦の関係性悪化の予防であり、すでに悪化している人たちからお金を巻き上げることではないことを繰り返し伝える必要があった。

絶望の先に見えた光


心から株主にしたいと思う人がいないんです

そんな相談をG-STARTUPの投資担当の澤渡美帆さんにしたのは、梅雨の時期だった。

資金調達は仲間探しだ。ただお金が入ればいいわけではない。すきだよのビジョンに共感しない株主を入れるくらいなら、自己資本でやり抜くと決めていた。

出資つきアクセラのG-STARTUPに採択されたはいいものの、辞退も考えています……と相談しようと思っていた。

そこで澤渡さんから紹介されたのが、East Venturesの大柴貴紀さんだった。

同じ家族領域のスタートアップに出資しているとのことで、ポートフォリオ上はたしかに相性が良さそうに見えた。

でも、まだわからない。ビジョンが理解されないのにはもう慣れっこだった。期待値を上げすぎないようにして面談に臨んだ。

緊張しながら面談に臨んだ私は、拍子抜けした。

「あつたさんは、なぜこの領域をやりたいんですか」

大柴さんは、市場規模でもなく、売上でもなく、
「なぜこの領域をやりたいのか」をひたすら聞いてきた。

そして大柴さんは、初対面の私に

・自分は結婚して19年目であること
・途中で関係性がかなり危機的になったことがあること
・そこからすごく大変だったけどたくさん向き合って、今は関係性が改善されたこと

を話してくれた。

パートナーとの関係性が悪化した時のしんどさ、大変さ。

分かり合えない中でも相手と本気で向き合い、絆が深まった時の、自分たちにしかわからない深い喜び。

気づいたら1時間半はとっくに超えていた。

本気でパートナーシップに向き合ったことのある人にしかわからない会話だった。

パートナーシップに関する原体験をこれほど深く語ってくれたのは、投資家の中でも大柴さんが初めてだった。

心から株主にしたいと思う人、見つけたかも」と思った。

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次に仲間になってくださったのが、ANRIだ。

ANRIの川口りほさんとは、talikiの中村タカさんからご縁をいただき、一緒にIVSのセッションで登壇したことがきっかけで出会い、投資検討につながった。

初回から「想像以上に市場の広がりがあると思った」と言ってくださり、川口さんと目指すべき事業進捗やKPIを密にディスカッションする中で、理想とするサービスの構想が見えてきたのも大きかった。

投資委員会の直前、

投資委員会の結果がどうだったとしても、私は川口さんと出会えてよかったと心から思っています

とお伝えしたのを今でも覚えている。ダイバーシティー&インクルージョンに積極的に取り組んでいるVCというのも決め手になった。

悩みも弱さも、仲間と共に乗り越える


資金調達の苦しみをあまりメンバーに言わず、社内では平然と振る舞う起業家も多いが、すきだよでは基本、資金調達の苦しみも社内でオープンに共有するようにしていた。

「今日はこんなことを言われて落ち込んだ」「納得できないことがあったので、腹落ちするまで質問した」「このアドバイスはなるほどと思った」など、日々アップダウンする気持ちを共有した。

日々状況が変わる中で、社内のメンバーは

「何を言われても、私たちにはユーザーがついてきてるから大丈夫」
「私たちは日本一この領域について考えている」

と動じずにいてくれて、とても心強かった。 

一人じゃないと気づかせてくれた人たち


心強かったのは社内のメンバーだけではない。

紆余曲折あった資金調達の過程で、本当に多くの方にお世話になった。

まずは資金調達のきっかけをくださった、中小機構BusiNestのメンターの皆様。特に濱地健史さん・島田茂樹さんには、「資金調達する or しない」を悩んでいる頃から現在までずっと伴走いただいている。Carstayの宮下晃樹さんは知見や経験を惜しみなくシェアしてくださり、怖いと思って閉ざしていた資金調達の扉を開いてくれた。

そして、「世界を目指そう」と思わせてくれたG-STARTUPコミュニティ。田村菜津紀さん・澤渡美帆さん・林彩⾹さんによる起業家ファーストな運営にが感嘆するばかりだった。そして何より、自分より遥かに難しい社会課題に取り組みながらインパクトを出している同期や先輩起業家の姿に刺激を受け、私も「もっと遠くを目指せる」と思えるようになった。

壁打ちしてくださった投資家の皆様。右も左もわからなかった私をさまざまな投資家に繋げてくださったジェネシア・ベンチャーズの田島聡一さん。男性キャピタリストにわかってもらえないことが多く絶望していた中で「私このサービス一緒にやりたい!」と第一声で言ってくださったYazawa Venturesの矢澤麻里子さん。「絶対に投資したい」と何度も言ってくださり、事業計画やKPIなどあらゆる角度で全力を尽くしてくださったANOBAKAの小田紘生さん。資金調達で悩んだ時にインパクト志向の投資家に繋いでくださったKIBOWファンドの山中礼二さん。絶望と葛藤を繰り返す中で、出資に至らなかったとしても応援してくれるキャピタリストがいることがとても励みになった。

女性起業家の存在にも救われることが多かった。1相談したら10返してくださるiibaの逢澤奈菜さんは同じtoC×家族領域で急成長されており、自分も頑張ろうと思わされた。同時期に資金調達活動をしていたCOREの尾崎莉緒さんとは、毎週朝活をして悩みや喜びを分かち合った。

無条件で応援してくれる人の存在に、何度も力をもらった。創業時から応援してくださり、投資先でもないのにいつも即レスで相談に乗ってくださるエンジェル投資家の寺田龍二さん。社会性と経済性の間で悩む私に「絶対にうまくいく」と言ってくださり、インパクトスタートアップへの道を拓いてくれたUNERIの河合将樹さん。IVSのカンファレンスで席が隣になっただけの私に、「あといくら調達できればいいの?」と会場中を回ってさまざまな投資家に繋いでくださった住友不動産の佐藤亮さん。StartupListの池田瑠偉さんは「あつたさんの調達が成功するためにみんなで頑張ろう!」と社内のメンバーにも声をかけてまで人の紹介をしてくださった。

メンタルの安定を支える基盤となったのは、Social Coach佐伯早織さんと山田瑠人さん。コーチングの時間で言葉にすることで、心が軽くなり、再び前に進む力が生まれた。

実務面では、契約書の交渉が初めてで何もわからない中、弁護士の長尾卓先生が力強くサポートしてくださり、頼もしい味方となった。

誰1人欠けても、このスタートラインに立つことはできなかった。

ここに書ききれない沢山の方々にフィードバックや応援をいただき、そのすべてが前に進む気力となった。

「自分も悩んだことあるので、このサービスは絶対に必要だ」「応援したい」と言っていただける機会が増え、出資に至る・至らないの結果に関わらず、出会えてよかったと心から思うご縁が多くあった。

怖い怖いと敬遠していたスタートアップ業界だが、熱量を持ってビジョンを伝えれば、みなさん心から応援してくださったり、惜しみなく自分の知見や人脈をシェアしてくださったり、そのあたたかさに救われることも多かった。 

この先、事業を成長させていく上で何度も心が折れそうになる場面はあるだろう。

でも、私は一人じゃない。

これから直面するであろうあらゆるハードシングスを見据えた上で、家族の関係性という領域から世界を変えていく覚悟ができた、というのが今回の資金調達で一番の大きな収穫だった。

今回いただいた資金は、ただの手段ではない。ビジョンを叶えるための「覚悟」と「信頼」そのものだ。

今回調達した資金は、すべてふたり会議ユーザーさんのために使いたいと思っている。

「毎週の質問が楽しみ」「ふたり会議のおかげで産後も円満です」「2年以上言えてなかったことを初めて伝えることができた」「普段聞けない話をするきっかけができてすごく良い」というお声をいただくと本当に嬉しい。

夫からも「ゆかは本当にユーザーさんが大好きなんだね」と言われる。

相手の考えを知れて嬉しい瞬間、「自分たちっていいチームだな」と思える瞬間、聞きづらいけど勇気を出して話し合えた瞬間、そんな瞬間を増やしていきたいと思っている。

新しく挑戦したいこと・改善したいことは山のようにある。すきだよは3分に1組が離婚を選択する中、「大切な人との関係性を悪化させたくない」という人類規模の課題に挑戦している。でも、理想の世界にはまだまだ遠い。共感する人がいたら、ぜひ仲間になってほしい。

2024年は絶望と葛藤の中で何度も手を差し伸べてもらった、感謝の尽きない一年だった。2025年は、いただいた恩や応援を、成果という形で返していきたい。

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あつたゆか
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