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【ゆる批評】『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』が最高だったので原作本を買ってしまった。

修論研究が煮詰まってきたので(まあ言い訳なんだが)、無性に映画館に行きたくなった。家でDVDやNetflixで観るのもいいが、それでは十分な「逃避」にならない。

映画を観るのは、もちろんその映像やストーリーを楽しむためだが、私の場合はむしろ映画館の真っ暗な空間の中でドでかいスクリーンと大音量で観ることによる「現実逃避」、「脳リセット」の意味合いが大きいかもしれない。

※日曜なのに映画館にはあまり人がいなかった。このような時期なので、あまりうろうろしない方がいいですね。マスクと消毒をおすすめします、と書いておきます。

さて、実はちょい前からTLでなかなか高評価で、気になっていたのが『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』!!!!
・エンパワメント
・女性間連帯
・家父長制へのカウンター
等々。

エンパワメント系ガールズ映画超好き(ガールズ映画、とジャンルを振るのは誤りかもしれないが、一応女性へのエンパワメントの意)。気になる。でも、実は『スーサイド・スクワッド』も、昨年話題になった『ジョーカー』も、なんならバットマン系列の映画一個も観たことない。すみません。ライトユーザーです。

でも、ジャンルはさておき、私がこの映画を観た最大のモチベは、
超カワイイ、こと。(バカです。申し訳ない。)
主人公ハーレイ・クイン役はオーストラリア人女優、マーゴット・ロビー。
wikiで調べて、あーあの人ね!『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で超イケイケモデルとして登場、ディカプリオの不倫相手➡正妻➡彼を捨てる「ブルックリン」公爵夫人役の。もちろんキレイなんだけど、彼女のちょっとハスキーっぽい声が好きです。
そして、ハーレイ・クインのコスチューム、アメコミそのままのフキダシや
テロップ
が最高にカワイイ。

そういうわけでチケットとフライドポテト(洋画はポテト、邦画でもポテトと相場が決まっている。アニメ映画の時はあまり食べないかも。)を購入し、シアターへ。大学院生の華麗なる逃避。

(以下、少しネタバレあります。)
もう冒頭から、大乱闘、大爆破、大暴走。そして大破壊
バカでかいスケール。

あらすじは、予告編等ご参照頂ければ詳しいですが、一応わたしの所感もいれつつ(ジャマだな)超初級者向けに。

バットマン(アメコミのヒーロー。そういえば小さい頃、オーストラリアの映画をテーマにした遊園地、ムービーワールドに行ったときに親に連れられて写真を一緒に撮ったが、batがbadに聞こえたことと、そもそもスーツが黒いのでどう考えても悪役だろ、と思っていた。)の最大の敵にして、コミック内のサイコパス系悪役ジョーカーの恋人であったハーレイ・クイン。そもそも彼女はコミック内のオリジンによると心理学で博士号を取得した精神科医。凶悪犯の精神分析のインターン生として勤務していた時に、収監されていたジョーカーと出会い、その巧みな話術と涙を誘う生い立ちの話に引き込まれ恋に落ちる。彼と逃走し、その後はパートナーとして共犯関係に。しかし(こっから映画!!!)、なんとそのジョーカーと破局。涙に暮れ乱痴気騒ぎをするハーレイだったが、これまでの数々の悪行が原因で自分への復讐を企む人間が多数いることに気が付く。しかも、もうジョーカーは守ってくれない!そもそも住む家から自分でなんとかしなくちゃいけなくなったハーレイ。協力者と共に、自分の命を狙う奴らに一発(もっと?)お見舞いするアクション。

以下、この映画に関するサイコーな点。

①しっかり悲しみ、自暴自棄になるハーレイ
なんかさ、失恋から始まるストーリーって古今東西多々ありますが、現実逃避だったり傷心旅行だったり、そういう自分をcalm downさせる方法よりもとことん自暴自棄になって乱痴気騒ぎを起こすほうが人間らしくないですか??
ハーレイの元カレ供養は、今まで見た数々の洋画の中で一番スゴかった&最大のスケールだったかも。
・暴飲暴食 ・髪をバッサリ(ここまでなら分かるよね♡)
・大乱闘 
・女友達と飲むも、彼女らの陰口を耳にしてグラスをクラッシュ
・殺傷能力の高いペットを購入
・酒に飲まれて連れ去られそうになる
・元カレとの思い出の場所を大爆破

いや、最高じゃないっすか。いやまあ、これリアルなら犯罪に類するものも多いんだが、でも申し訳程度に飲んで、飲まれて、シクシク泣いて、別の男とデート、とかじゃないところが最高だ。(だってそれは、同じことの繰り返しなので。)元カレ供養、というかマジで、元カレに染まってた自分の供養、つまり自己改革のために一度自己を破壊する儀式なんだよな。まあ、髪を切るとかは分かりやすい自己破壊だけれども、乱闘、ペット、爆破辺りはもはや「次の男」とかそういう男のペアである自分の再生産ではなくて、もはや新たに「マッチョ」な自分を生み出す行為に近い。
そう、台詞にも出てくるがハーレイがジョーカーと別れて模索するのは「新しい男」ではなくて、"independent"、自分の足で立ってる自分。

②割とリアルに「生活」。
この話はもともとアメコミが原作。
なんていうか、まあリアルと完全なるファンタジーの間くらいに位置する。
しばしば、アメコミのキャラクターって、「こいつ、どうやって生計たててんだ?」と思うこと多い。
し、そこを考えること自体野暮、ということでそこは不問にされがちだったんじゃないかと思う。

でも、このハーレイのお話は、割と生活密着型
まず、ジョーカーと別れて住むところを失ったハーレイが部屋を借りるところから始まる。
しかし、どうやったって彼女はアメコミの悪役である以上「犯罪者」なので、お金がない。ツケでの買い物や、窃盗を繰り返します。(そこは、アメコミのご都合主義で無罪放免!)

しかし、ラストには敵の一掃だけではなく、ビジネスでの成功の兆しも見えます。つまり、ここまでコミック、アニメ、実写においてリアル度が増すにつれて触れざるを得なくなるのが、彼らの生活。
ハーレイが、ジョーカーに依存していたのは心、行動のみでなく、生活もそうだったのですね。
そこからの自立、そしてそれはこれまでのようなリアルには犯罪!ではなく、そこそこ正攻法になっていくのが面白いところ。
現実とファンタジーの乖離が絶妙に埋められているところが楽しいです。
「クレイジー」とかコピーにあるけど、最後か結構マトモなんじゃね?という。

③一貫した”emancipation”「解放」。ハニトラとかないっすよ。
さて、この映画の副題は「華麗なる覚醒」。
原題では、”the Fantabulous Emancipation”
fantabulousは、fantasticとfabulousを掛け合わせた、「もうマジ最高な」って感じ。まあ、正式な邦題は「華麗なる」。いいですよね、一族とかギャツビーとかいろいろありましたけれど。

で、emancipation。
これは「解放」とか「離脱」とかいう意味がありますが、特に何らかの抑圧、支配からの「解放」によく使用されます。(例えば、奴隷からの解放とか。)
じゃあ、ハーレイの場合は?
もちろん、ジョーカーですね。映画終盤、戦闘中に心の折れそうになった彼女に、ジョーカーの声が聞こえてきます。それは、「お前には俺しかいない」とか、「俺が守ってやる」とか。そういった抑圧、束縛、「保護」に見せかけた支配を想起させるようなジョーカーの声。
しかし、その声を振り切ってハーレイは、戦闘を続けます。
つまり、ジョーカーの保護、擁護の対象であった過去は同時にハーレイにとって抑圧でもあった。それを、今や自己破壊によって新しくなったハーレイは「守ってやる」という甘い言葉を振り払って、本当の解放そして自立を手に入れる物語なのですね。

あと、すげえいいなと思ったのは、ハニトラ的なものが登場しない点。
大体、ガールズパワーものってハニトラ、つまり色や女性らしさを敵である男性を対象に用い、その弱さにつけこむ方法。
つまり「女」を武器にすることですね。
しかし、もちろん敵に勝つ、という結果としていいのですが、この武器は女性だけが(多くの場合)使用可能、という点で少しフェアさを欠きます。
女性だという理由で男に守ってもらう対象には甘んじないために、女性の強さを見せるために戦っているのに、敵に勝つために「女性性」を用いる、というのは戦闘の視点では少し矛盾がありますよね。
この映画の戦闘場面では、基本的にパワーとクレバーさしか用いられません。

さてさて、ジョーカーとハーレイがどうやって恋に落ちたのかがかなり気になってしまったので原作の漫画、『マッドラブ』を購入。


すると、emancipation、を掲げる意味がもっと明確になりました。
原作のハーレイは、超ダメ女
ジョーカーにメロメロになり、彼にいいように使われていることにも気づかず、健気に仕えます。どう考えても虐待だろ、という場面も多数。
なるほど、この映画はそのコミックにおけるハーレイの「ジョーカーの女」、「ジョーカーに使われ、殴られ、でも彼が好きな女」の大破壊ムービーだった、ということですね。

原作版でハーレイは、ジョーカーと家庭を築き、主婦として子どもを設け、幸せに暮らす夢を見ていることが度々示唆されます。この「夢」は今風に言うと少し古い。ジョーカーの付属品である状態からの解放、としてこの映画のラスト、「ビジネス」での成功。家父長制の産物である「幸せな主婦」という女の夢から、経済的自立による豪遊、への「夢のシフト」がある。

そして、少し遡ってハーレイが博士号を取得した時のことが原作には描かれていますが、ここでは教授に色を売って学位を取得したことが示唆されています。しかし、映画版ではこの部分はカット。まあ、これは後付け的な修正ですが、individualなハーレイにはもうハニトラは不要。


④チーズサンドがクッソ美味そう。
映画にたびたび出てきた、ハーレイの朝食、エッグチーズサンド。
ゆるめのエッグに、濃いチーズをバターたっぷりのトーストでサンド。はー、最高か。
ちなみに、シカゴピザで有名なアメリカン料理のお店がコラボメニューを出していみたいです。これは行くべき。


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