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心理的安全性を高めるための要因や行動とは?
心理的安全性とは、「関連のある考えや感情について人々が気兼ねなく発言できる雰囲気」(Edmondson, 2012, p.153)を指し、チーム内でリスクのある行動をしても安全であるというチームメンバーに共有している考えであると定義しています。
今回は、職場における心理的安全性の要因についての論文についてまとめていきます。
論文名:職場における心理的安全性の要因についての考察/国分さやかさん
研究の目的:従業員の職場における心理的安全性を高めるための要因を明らかにすること。
心理的安全性に影響する要因
Edmondson(2012)は、心理的安全性に最も重要な影響をもたらすのは、一番近くにいる マネジャーや監督者や上司であるとし、心理的安全性を高めるためのリーダーシップ行動を8項目挙げている。
調査の目的
心理的安全性に影響する要因には、Edmondson(2012)の提唱する8
項目以外に、上司から信頼されていると感じることも含まれることと、役職別に心理的安全性の高低を調査し、その水準が低い属性における心理的安全性をどのように高めるかについて検証するために調査をした。
調査対象者と調査方法
調査対象者は、性別、雇用形態などを問わず企業で働く人とし、2020 年 11 月 23 日~ 12 月 8日に web アンケート形式により無記名で行った。
調査内容
調査における質問項目は、1)属性 2)心理的安全性 3)上司の行動の3項目とした。
1)属性
性別、社会人経験年数、勤続年数、雇用形態、 所属部署、回答するにあたって想定したチーム または同僚の人数、役職、勤務先企業について質問した。
2)心理的安全性
Edmondson(2012)の心理的安全性に関する 7 項目の質問を、回答者が具体的に想像できるよう日本語に翻訳し、5件法(「全く当ては まらない」「当てはまらない」「どちらとも言えない」「当てはまる」「とても当てはまる」)でたずねた。質問項目は表1の通り。
![](https://assets.st-note.com/img/1732107094-G5Ff2Kz0sS8PJtHL4VAqBWy7.png?width=1200)
3)上司の行動 Edmondson(2012)の提唱する心理的安全 性に影響する上司の8つの行動項目に、伊庭 (2020)や奥本(2018)の指摘する「信頼され ていると感じるか」という項目を加えて9項目とし、5件法(「全く当てはまらない」「当てはまらない」「どちらとも言えない」「当てはまる」 「とても当てはまる」)でたずねた。なお、チー ムリーダーが不在の場合には、直属の上司についての回答を得ている。質問項目は表2の通り。
![](https://assets.st-note.com/img/1732107188-aQBMOjYbpfvkZqTUcH4etr0C.png?width=1200)
分析方法
心理的安全性に関する質問7項目と上司の行動に関する質問9項目それぞれ に「全く当てはまらない(1点)」「当てはま らない(2点)」「どちらとも言えない(3点)」 「当てはまる(4点)」「とても当てはまる(5 点)」と5段階のリッカート・スケール(Likert scales)による線形のスコアを付した上で、それぞれの合計を「心理的安全性の合計点」「上司の行動の合計点」として評価をした。 心理的安全性の合計点には,どの上司の行動 項目が影響するのかを確認するために相関係数を測定した。また,相関係数の高かった項目については、IBM社の分析ソフト(SPSS)を用いて、ロジスティック回帰分析によって検証を行った。
結果と分析
(1)一般社員クラスの心理的安全性について
一般社員クラスの従業員においては、前述のとおり、上司から信頼されていると感じることで心理的安全性を高める傾向がみられた。また、一般社員クラスの従業員が、上司から信頼されていると感じることと、上司に躊躇なく直接話せること(Q.2-1 あなたは、躊躇なくチームリーダーに直接話をすることができる)との間に比較的高い相関関係がみられた。従って、一般社員クラスの従業員が 「上司から信頼されている」と感じ、心理的安全性を高めていくためには、上司と躊躇なく話 せる関係性を構築することが有効だと考えられる。
(2)上司と躊躇なく話せる関係性を構築する方法
一般社員クラスにおいて、「Q.2-9 あなたはチームリーダーから信頼されていると感じる」と、そのほかの上司の行動項目(Q.2-1 ~ 8)との相関関係を確認すると「Q.2-1 あなたは、躊躇なくチームリーダーに直接話をすることができる」の次に相関係数が高かった項目は「Q.2-7 あなたのチームリーダーは、あなたがやるべきことを明確にしている」であった。そのため、新入社員を含む一般社員クラスにおける 1on1 ミーティングにおいて、プライベートな話題以外にも「業務上の課題や進捗状況」を話題にする場合には、彼ら彼女らがやるべきことを具体的に明確に伝えることも、心理的安全性を高めるために重要であると考えられる。
(3)上司側の課題
リクルートワークス研究所の「人事マネジメント調査 2007分析報告書」では、辞令を境にプレイヤーからマネジャーに突然変 わることは困難であり、「見習い期間」が必要だとしている。マネジャーにとって、研修やトレーニングなくしてメンバーの心理的安全性を 高めることは困難であることを示しているといえる。
グジバチ(2019)は、「1on1と心理的安全性はセットで考える必要」があると指摘している。1on1 を実施したからといって心理的安全性が高まるとはいえず、心理的安全性が高い状態で 1on1 を行うことによって、より心理的安全性が高まると考えられる。
ここまでをまとめると、心理的安全性と「上司から信頼されていると感じる」との間に、比較的高い正の相関係数(0.514)が認められたことから、心理的安全性には、エドモンドソンの提唱する8項目の上司の行動のほかに、「上司から信頼されていると感じる」ことも影響する傾向がみられたほか、役職の有無も心理的安全性に影響を及ぼす傾向がみられた。
しかし、上司の立場となった従業員が、辞令と同時にリーダーシップを発揮することは困難であることが考えられる。企業には、上司の立場となった従業員がリーダーシップを発揮するための仕組みや企業文化を作り上げていくことが求められる。
所感
1on1を実施したからといって心理的安全性が高まるとはいえず、心理的安全性が高い状態で1on1を行うことによって、より心理的安全性が高まると考えられる、というのがなるほどな、と思わされました。
心理的安全性を高めることは目的ではなく、あくまでも手段です。心理的安全性を高めることを目的とした場合、「仲良しクラブ、ぬるま湯集団、また は責任のない言いっぱなし、やりたい放題集団になるリスクもある」(古野, 2017, p.30)という指摘もあります。
心理的安全性を高めたその先にどんなチームを作りたいのか?ということを忘れないようにしたいです。個人的には、自社内の講座や場づくりの中で、学びと気づきの促進を通して質の高いアウトプットを出すためにも、心理的安全性がチーム内で保たれているか(お互いに言いたいことを伝え合えているか、反論もその場で出せるか)は日頃確認し合うことを意識しています。