見出し画像

Macが壊れてコールセンターに電話したら、コールセンターのお兄さんが最高のエンターテイナーだったお話。

3年ほど前だろうか。カフェで仕事をしていたら、突然Macが動かなくなってしまった。

強制終了しても、ずっと同じ画面で固まったまま。中古で買ったものだったので「あちゃー、そろそろ寿命かな…」と思いつつ、急ぎの作業もあったので、少し気持ちが焦る。

とりあえず、すぐできることとしてMacのコールセンターに電話しようと思ったのだった。

Macのコールセンターに電話した人ならわかると思うが、Macのコールセンターは繋がるのが速いし、丁寧だ。何度か電話したことがあったので、今回もすんなりと繋がった。

「はい、担当の◯◯です!」

軽快な声のお兄さんが出た。

「Macが突然動かなくなってしまって、電話しました。強制終了しても、同じ画面のままなんです。」

私は、淡々と状況を説明する。

「なんと!動かなくなった!?!?それは困りますよねえ。大変だ!!!イライラしてませんか?しますよねえ。わたくしが全力でお客様の困り事を解決しますのでお任せください!!!」

率直に「この人、やばい」と思った。(良い意味で)これから演劇が始まるのか?と思うくらいの気持ちの込め具合とテンションの高さ。圧倒されつつ、「あ、ありがとうございます〜」とそのままお兄さんの指示に従う。

「まずはここのボタンを押してもらって良いですか?そうそうそう!ええっ!?お客様素晴らしい!!その調子!!!」

とにかくマジでずっと褒めてくれる。操作としては、ボタンを押す、待つ、キーボードを打つ、待つ、というだけなのだが、とにかくべた褒めしてくれる。なんかわからんけど、照れてきた。

「お客様のデスクトップ綺麗ですねーーーーそうそう、この調子ならもう直りますよーーーー!!!」

「ありがとうございます(笑)」とお礼を言う。なんか、わからんけど、楽しくなってきた。いつの間にか作業が止まってしまったという焦りは消えていた。

そして、作業中に、この画面が出てきて、これを見たお兄さんが、一言。

Macの写真設定する画面に自分の顔写真を入れていました

「素敵なぱあ!!!!」

素敵な「ぱあ」…..思わず吹いた。いや、確かに手を「ぱあ」はしているのだけども。マジでなんでも褒めてくれる人だ、この人。

そして話をしているうちにわかった。
この人、絶対、関西人だ。
なぜなら私も関西人なので、言葉の訛りでわかる。

好奇心で、恐る恐る尋ねてみる。

「お兄さん、関西の人ですよね….?」

「えーー、ひょっとして、お客様もですか?」

やっぱりそうだ。関西でもどこ出身の人かとか、色々聞きたかったが、電話した際に「品質向上のため、会話内容は録音させていただいております」と綺麗な声のお姉さんが自動音声で言っていた。

私が色々と根掘り葉掘り聞くことでこのお兄さんの職が失われるかもしれない(そんなことはない)と思うと聞くに聞けなかった。

とにかく最後までずっと褒めて、盛り上げて、無事にMacは復活していたのだった。私はずっと笑っていた記憶しかない。

一言でいうと、エンターテイメントだった。この人は、こうやってMacが壊れてイライラしている人の気持ちを明るい方向に持っていくことのできる人なんだろう。

素晴らしいな、と思った。プロフェッショナルだ。

一つの「体験」をさせてもらった感覚だった。どうしても、このお兄さんと友達になりたいなあと思ったけど、やはり「品質向上のため、会話内容は録音させていただいております」という自動音声を思い出して、プライベートなことは聞けず、その日はお礼を伝えて、そのまま終了したのだった。

後日談。
関西の人ならお馴染み、「探偵ナイトスクープ」という番組があって、とにかく訳のわからない色々な疑問や問題を、探偵の人が一緒に解決してくれるテレビ番組がある。

私はそこに、「めっちゃ面白かったMacのコールセンターのお兄さんにどうしても会って、お礼が言いたい」という調査依頼で応募をしたのだった。(残念ながら採用には至らず….)

それほど、面白かったし、記憶に残っている。

あのお兄さんは、今日も壊れたMacの持ち主を笑顔にしているかな。

そして、いつかまた、私のMacが壊れて電話した時に、言ってくれるだろうか。

「あ、あの素敵なぱあのお客様ですね!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?