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「場づくり」を生業としている私が、常に心がけている大切なこと。

私は、対話の場づくり、学びの場づくり、ファシリテーション、組織開発支援などを生業としており、現在も仕事やプロジェクトを通じて、様々な場に関わらせていただいています。

場をつくるということに何度も携わらせてもらう中で、このことだけは常に大切にしている、ということがあります。

それは、「場の感情を無視しないこと」です。

場の感情…?と思われた方もいると思うのですが、そうなんです。場には感情があるんです。(少なくとも私は、あると思っています。)

心理学博士のフェイス・フラーは、場の感情のことを「関係性を通じて生み出される複雑で常に変化している感情の流れのこと」と説明しています。

例えば、自分はその場にはいなかったけど、その部屋に入った瞬間、「なんか揉めたのかな…」と感じる雰囲気など感じたことないですか?

それは、その場にいる人たちが発している空気感、仕草、顔つきなど色々な情報から察知し判断をしていることをしていると思うのですが、この場の感情を読み取る、ということを場づくりにおいて私はとても大切にしています。

ちなみに場の感情に良い、悪いなどがあるわけではなく、どの場の感情も、活用できる材料として集めるようなイメージで、私は観察しています。

なぜ、場の感情を読み取ることが重要なのか。

それは、その場の感情を正しく読み取れているかどうかで、その場づくりの成否が決まると言っても過言ではないから、です。

例えば、とある会議でその場にいる全員が発言をしていて、意見交換が活発だった場を、「全員がこの場で発言して意見交換もできているし、良いチームだ」という判断をしたとします。しかし会議が終了した数時間後に「あの会議で決まったAという案ですが、本当は納得していないので、進めたくありません。」と参加者から意見が出た、と小耳に挟んだとしたら。

私が判断した「良いチーム」とは何だったんだろう、となりますよね。私は、その場の何をみて「良いチーム」と判断したのか?意見を全員が発言していること?活発であること?何を持って「良い」としたのか。

誰が一番に発言をしたのか?
発言していた全員の表情はどうだったか?
話している人たちそれぞれの話す尺度は?スピードは?
断定口調が多かったのか、問いかけはあったのか?
声の大きさは?口調は?

場の感情を読みとるためには、コンテントだけではなく、プロセスに着目することも非常に重要となります。

コンテントとは、目に見えているもの、話題・課題・仕事などの内容的なものです。その場に出ている言葉などがそれに当たります。

一方で、プロセスは、目に見えていないもの、その場にいる人たちの関係的な側面により起こっているものです。

出典)大学におけるリーダーシップ教育実践の比較研究/中村和彦


繰り返しになりますが、場の感情とは、「関係性を通じて生み出される複雑で常に変化している感情の流れのこと」です。

そして、この場の感情の読み取りの難しいところは、読み取ったとしても、「なかったこと」にしてしまう可能性があるということです。

この人のこの反応に違和感に感じたけど、自分の勘違いかな。
この人、何か言いたそうな気がするけど、まあなんかあれば自分で言うか。
何だか空気が重く感じる…けど気のせいか。
Aさんが話している時のBさんの身体が強張ってる気がするけど、考えすぎか。

といったように。だからこそ、私はこの自分の「違和感」や反応した「アンテナ」をなかったことにしない、と決めています。

本当に些細な違和感や自分の反応だったとしても、取り出して見つめるようにしています。何が違和感だったのか?どんな反応をしたのか?その理由は?なぜそう感じたのか?

この作業は、正直なところ非常にパワーを使います。「ま、いっか」「私の考えすぎか」と流したくなる時もあるのですが、そこをグッと堪えて向き合うようにしています。

この違和感や自分の反応を取り出して見つめる作業が、私自身の場の感情を読み取るという行為を磨き上げてくれている理由だと思います。

とはいえ、私もまだまだ修行中なので、場の感情を正しく読み取れる時ばかりではありません。場の感情をキャッチしたと思ってよく見つめてみたら、私自身の個人的な感情によって反応してしまっただけのこともありましたし、実際に私の勘違いだったこともあります。

だからこそ、場の感情を正しく読み取るために、自分の感情についても興味関心を持つことも重要だと考えています。

自分の感情はどんなシチュエーションの時に反応しやすいのか?どんな人と一緒にいると揺れるのか?どんな人と一緒にいると安定するのか?自分の感情に興味関心を持てていないと、誤った場の感情の読み取りをしてしまいがちです。

場の感情を正しく読み取るためにも、自分の感情に興味関心を持つこと。
そして、場の感情を読み取った時には、なかったことにしようとしていないかを問いかけること。

これが、場づくりやファシリテーションをする上で、私が最も大切にしていることです。

皆さんの今いる「場」はどんな感情が、流れていますか?

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