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職場でのユーモアと心理的安全性は、創造性の発揮に重要である!

ユーモアがある人って、一緒にいて楽しいですよね。私自身もユーモアを結構大事にしています。

職場で交わされるユーモアが、メンバーの知的活動を刺激し創造性を発揮
させ問題解決を促す可能性があるという指摘(Holmes, 2007)もあります。

今回は、職場ユーモアと心理的安全性に着目し、これらの要因と創造性(イノベーション)発揮との関係を検討する論文をまとめていきます。

論文名:職場ユーモアが創造性の発揮に及ぼす影響―心理的安全性の役割に着目してー/丸山淳市さん・藤桂さん


研究目的

本研究では、Carmeli & Schaubroeck(2007)に基づき創造性の発揮を「職場課題に対する、新規性があり役に立つアイデアの創出や問題解決行動の実施」と定義した上で、創造性発揮を促す心理的要因として、職場ユーモアおよび近年注目されている概念である心理的安全性に着目し、これらの要因と創造性発揮との関係を検討する。

ユーモアとは?

そもそもユーモア、とはなんでしょうか。定義や先行研究を見ていきましょう。

元来ユーモアとは、遊戯性・意外性・不調和という3つの性質を持つ高度な思考過程であるとされ(Gervais & Wilson,2005)、ユーモアを理解する際にも、文脈と言葉との不調和を感知し、次にその不調和を解消するという緻密な認知過程があるとされている(Suls,1972)。

Lang &Lee(2010)においても、324人の社会人を対象にした調査を通じて,「古い考えややり方に対し、ばからしい冗談で疑問を投げかける」といった解放的なユーモアが職場で交わされることで、職場の文化や考え方の枠組みを別の観点から見ることに役立ち、それが組織の創造性発揮(「組織メンバーは多くの独自性のあるアイデアを生んでいる」など)を促進することを 明らかにしている。

Morreall(1991)は、ユーモアを職場で用いることで、問題を客観的にみることに役立つだけでなく、ミスに対しオープンで合理的な姿勢を持つことができ、また新しい経験や考えへの受容性も高まることで、創造的に考え問題を解決したりリスクをとる能力を養うことに役立つことを主張している。

ユーモアの内容によって及ぼす影響が違う

ユーモアは、言えば良いかと言われると決してそうではないみたいです。ユーモアの内容によって 及ぼす影響が異なることが示されています。

Arif & Shah(2016)では、自己高揚的ユーモアと親和的ユーモアの使用頻度は、職場での創造的行動 (アイデアの創出,周囲への売り込み,実現)を促 進させる一方、自虐的ユーモアは職場での創造的行動を抑制することが明らかとなっている。また Romero & Cruthirds(2006)も,ユーモアの内容の中でも、親和的ユーモアがオープンな職場環境づくりに役立ち、自由にアイデアを語り合うことにつ ながるため、創造性の発揮に有効である可能性を主 張している。

丸山・藤(2016)では、 職場内で交わされるユーモア的話題の内容を、因子分析を通して5つに分類したうえで、職場内コミュニケーションに及ぼす影響について検討している。

体験共有的ユーモア(自らが見聞きした体験や知識を共有するユーモア)、人物想起的ユーモ ア(その場に居合わせた人達がお互いに知っている職場内の人物に関するエピソードを共有するユーモア)はユーモアが交わされている職場に対するポジティブな感情的反応を介して職場内コミュニケーションを活性化させる方向で影響する一方、規範抵触的ユーモア(職場内において遵守すべき規範に抵触する内容のユーモア)と職場遊戯的ユーモア(職場内のたわいのない刺激のユーモア)はネガティブな感情的反応を介して、職場内コミュニケーションを抑制する方向で影響することを明らかにしている。

さらに丸山・藤(2017)でも、国内の従業員 565名を対象とした調査より、体験共有的ユーモアと人物想起的ユーモアが、自分の成功や目標達成につながらなくても、他のメンバーに手を貸すといった職場内の仲間を重視する雰囲気を促進していたことを明らかにしている。

媒介要因としての心理的安全性

Palanski & Vogelgesang(2011)の社会人を対象にした質問紙実験においても、自チームに対する心理的安全性は、創造的に物事を考えようとしたり、リスクを取ろうという個人の態度に促進的な影響を及ぼすことを示している。こうした職場における心理的安全性と個人の創造性の発揮との関係に
ついては、136の実証的研究を対象としたメタ分析の結果からも支持されている(Frazier, Fainshmidt,Klinger, Pezeshkan & Vracheva,2017)。

心理的安全性を高める先行要因についてリーダーシップ行動の他、組織的な支援体制、ソーシャルサポート等の対人ネットワーク、チーム構成やチームの自律性といったチーム特徴、規範への順守意識や地位といった個人的・チーム的差異があるとされている(Newman, Donohue, & Eva,2017)。

しかし、Edmondson, Kramer, & Cook(2004) は心理的安全性に影響を与える要因として、フォーマルな要因だけでなく、チーム内のインフォーマル なダイナミクスへも注意を向けるべきと指摘している。 こうしたインフォーマルな要因の一つとして、職場内のユーモアが関与しうることが議論されてきた。

本研究の目的と仮説

これまでの議論を踏まえ本研究では、近年、特に職場で求められている創造性の発揮に対し、これを促す心理的要因として職場ユーモアと心理的安全性 に着目し、これらの要因が創造性発揮に及ぼすまでの影響過程を検討することを目的とする。その際、職場ユーモアとして体験共有的ユーモア(丸山・藤, 2016,2017)に着目し、この種類のユーモアが創造性の発揮に対し直接的な影響を及ぼすと同時に、心理的安全性に媒介されて創造性の発揮に影響を及ぼすというFigure1に示したモデルを想定し検討する。

p388より抜粋

方法

株式会社クロス・マーケティングのリサーチ会員を対象に、全国の民間企業などの組織に勤める20歳から64歳までの社会人モニターを対象として、2017年3月にweb調査を行った。

質問紙

職場について「あなたがメンバーの一員として所属し、普段から接している仕事上の集団(○○課、○○チームなど)を指す」と教示した上で以下の項 目を尋ねた。
※質問項目の詳細は割愛しています

職場での体験共有的ユーモア

現在勤務している職場でどのような内容のユーモア的話題が交わされているかについて回答するよう教示したうえで、丸山・藤(2016)の職場ユーモアに関する35項目を提示し、5件法(1.あてはまらない−5.あてはまる)で回答を求めた。本研究では先述した仮説に基づき、「体験共有的ユーモア」に関する6項目を以降の分析で用いた。

職場に対する心理的安全性

回答者が自身の職場集団について、 どのように感じているか、 Edmonson(1999)が作成したPsychological Safety Scaleの7項目を用いた。

職務での創造性発揮

回答者の普段の職場での創造性の発揮につながる行動として、Carmeli & Schaubroeck(2007) が作成したCreative work involvement Scaleの項目内容を参考に、業種・職種や職場における地位により、回答のしづらさが発生すると思われる項目を除外したものを独自に作成した。

個人属性

年齢、性別、業種、職種、現在の勤務先における勤続期間(単位はヵ月)を尋ねた。

結果と考察

本研究の仮説を支持する結果が示された。
まず職場での体験共有的ユーモアが創造性の発揮を促進することについては、ユーモア的なやり取りが、不調和の処理や遊戯性の理解といった緻密かつ高度な認知過程を必要とするとともに(Gervais & Wilson,2005;Suls,1972)、それが柔軟で多様な思考を促進したり(Belanger et al.,1998;Dienstbier,1995),、新たな視点の獲得につながったり(Martin,2007) することに関する主張と対応するものといえよう。

同時に、職場を対象として実施された、職場でのユー モアと創造性の発揮との関連を検討した実証的研究の知見(Holmes,2007;Lang & Lee,2010;Lehmann-Willenbrock & Allen,2014)とも整合する結果であると位置付けられる。

お互いの経験をユーモアとして話題に取り上げ他者と交流することは、先述したようなユーモアの特徴により、より柔軟性や多様性をもって自分の体験を振り返り、新しい視点から当該の体験を捉え直すことにつながるのみならず、その一連を他者と共有することで、自分とは異なる他者ならではの視点も交えて自らの体験についてさらに振り返る機会につながったり自分と他者との物事の捉え方の差異を認識する契機となる可能性も推察される。

心理的安全性が職場ユーモアと創造性の関係を媒介する可能性も示された。Romero & Pescosolido(2008)の主張から想定されるように、 自身に関する経験を他者と共有するユーモアにより、お互いの経験に対する共通理解の枠組みづくりや他者との親和性が高まり、それゆえに心理的安全性を高めている可能性が考えられる。また、自らの見聞きした出来事や体験を共有することで、その中に含まれるおもしろさやおかしさを味わおうとする体験共有的ユーモアは、他者に対し行動許容の境界線に関する判断材料を提供する機能を持つという可能性も考えられる。例えば、「自身の失敗をネタ」にする体験共有的ユーモアが日常的に交わされることで、失敗に対し否定的な見方をする者が少ない職場という認識を強めることにも寄与し、心理的安全性の促進につながるとも考えられる。

これまでの議論を総合すると、職場でのユーモアと心理的安全性は、創造性の発揮に対し両面から影響を与えていると考えられる。


ユーモアの内容に5つの種類があることも興味深かったですが、自虐的ユーモアは職場での創造的行動を抑制することや、体験共有的ユーモアと人物想起的ユーモアが、自分の成功や目標達成につながらなくても、他のメンバーに手を貸すといった職場内の仲間を重視する雰囲気を促進していたことなどの先行研究が面白かったです。

ユーモアをただ言うだけではなく、言う内容も意識しながら仕事やチーム内でユーモアを大切にしたいと思います。

ちなみに、自分自身がユーモアを大事にしているというnoteもエピソードと共に書いたので、もし宜しければ。


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