仕事の意味づけは測定できる!?意味深い仕事尺度(WAMI)
私は現在、立教大学大学院リーダーシップ開発コースに通っているのですが、英語の論文をまとめ、発表し合って学び合う授業があります。
今回のnoteは、その授業で取り扱った仕事の意味づけ(Meaningful Work:MW)の尺度を開発した論文について紹介したいと思います。
論文名:Steger, Michael F., Bryan J. Dik, and Ryan D. Duffy. 2012. “Measuring Meaningful Work: The Work and Meaning Inventory (WAMI).” Journal of Career Assessment 20 (3): 322–37.
どんな論文か?
•著者らは、仕事における肯定的な意味(positive meaning) を経験すること、仕事が意味を生み出す(making meaning) 重要な手段であると感じること、そして自分の仕事が何らかの大きな善(greater good) に役立つと認識することからなる、主観的に意味のある経験としての仕事の多次元モデルを提案しています。
•これらの次元を測定する尺度の開発について説明し、多様な職種の大学職員をサンプルとして、尺度のスコアの信頼性と構成概念妥当性の初期評価について報告しています。MW得点は、仕事に関連した幸福度(work related well-being) 指標や一般的な幸福度(general well-being) 指標と予測される相関を示し、職務満足度(job satisfaction) 、欠勤日数(absent from work) 、生活満足度(life satisfaction) といった一般的な予測因子を超えた独自の分散を説明しています。
•著者らは、この概念モデルが、MWに関心を持つ学者、カウンセラー、組織にどのような利点をもたらすかについて論じています。
研究目的
この論文の研究目的は3つあります。
Meaningful Work (MW: 仕事の意味づけ)の多次元モデルの提案
MWに関する研究は多岐にわたり、MW の定義や評価方法に関するコンセンサスが不足していることが指摘されています。この論文では、MWを主観的に意味のある経験と捉え、以下の3 つの主要な側面から成る多次元モデルを提案しています。
・仕事における肯定的な意味の経験(Positive Meaning )
・仕事を通じた意味の創造(Meaning Making through Work )
・仕事がより大きな善に貢献しているという認識(Greater Good Motivations )
MWの測定ツール(WAMI )の開発
提案された多次元モデルに基づいて、MWのこれらの側面を評価するための新しい尺度である「Work asMeaning Inventory (WAMI) 」を開発し、その信頼性と構成妥当性の初期評価を報告しています。
MWの関連性の検証
WAMIの得点が仕事に関連した幸福度(work related well-being) 指標や一般的な幸福度(general well-being) 指標とどのように関連するかを検証し、既存の職務満足度(job satisfaction) 、欠勤日数(absent from work) 、生活満足度(lifesatisfaction) の共通予測因子を超えて独自の分散を説明することを目指しています。
研究対象と方法
調査方法:Web による質問紙調査
参加者数:欧米の大規模研究大学から370 人の職員
仮説と結果
仮説1:Meaningful Work (MW: 仕事の意味づけ)の諸次元とコーリングの尺度(Brief Calling scale)との間には相関がある⇒支持
仮説2:WAMIの下位尺度および総スコアが組織市民行動、キャリア・コミットメント、組織コミットメント、職務満足度、内発的動機と正の相関があり、欠勤日数、離職意図、外発的動機と負の相関がある⇒支持
仮説3:WAMIスコアは幸福感(人生の意味、生活満足度)と正の相関があり、心理的苦痛(不安、敵意、抑うつ)と負の相関がある⇒不安を除いて支持
開発された尺度:WAMI(Work asMeaning Inventory)
WAMIは、仕事の意味を3つの側面(積極的な意味、広範な社会貢献、自己成長)に分け、それらを評価するための項目を設計、初期の項目プールは40項目で構成されていました。最終的な10項目は、探索的因子分析(EFA)や確認的因子分析(CFA)などの統計手法が用いられて絞られていき、完成しています。
開発された尺度の日本語版があったのでこちらにも掲載します。ご興味あるかたは、ぜひ回答してみてください!
学びと気づき
Steger, Dik, and Duffy (2012)の論文を通じて、仕事の有意味感が個人のWell-beingや組織へのコミットメント等に大きく寄与しているということを改めて説得力を持って実感しました。
私自身、仕事に対する「意味付け」について、とても重要だと思っています。
仕事に意味を感じられない、楽しくない、やっている意味がわからない、と感じてメンタル的に落ち込んでしまったり、苦しい思いをしている人たちを沢山みてきました。だからこそ、このような尺度の開発は、労働社会において非常に重要な役割になるのだと感じています。
研究のその先の未来、そして社会への影響力についてSteger, Dik, and Duffy は信念と熱意を持って取り組んだ論文だったんだと思います。純粋に、尊敬の念を抱きました。
私自身も、「どうすれば働いている人が活き活きできる組織をつくれるのか」という問いを解明したくて大学院に入学したことを思い出しました。
なんのために自分は研究をするのか、したいのかを常に忘れないように、明日も頑張ります!