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高校3年生の頃、受験結果を見た時のおばあちゃんの一言が、ずっと忘れられない。

この寒い時期になるといつも思い出すエピソードがある。

それは、高校3年生の頃の話だ。私は受験生で、毎晩遅くまで勉強をしていた。通っていた高校が、おばあちゃんの家から近くて、学校が終われば塾で勉強して、19時頃になるとおばあちゃんの家に行って美味しい夜ご飯を食べてからまた塾に行く、そんなルーティンで過ごしていた。

高校3年生の1年間は、おばあちゃんと一緒に受験勉強をしていたと言っても過言ではない。

おばあちゃんは、調理師免許の資格を持っている。
だから、ご飯がとても上手で、とても美味しい。
私はおばあちゃんがつくるぶり大根が今でも大好きだ。

私が「これ食べたい」と言えば、おばあちゃんは、張り切って作ってくれた。

ゆかは美味しい美味しいって言って食べてくれるから作りがいあるわ、と嬉しそうに話していた。

夜遅くまで勉強した日は、おばあちゃんの家にそのまま泊まって、次の日、そのまま高校に行った。

受験当日、第一希望の大学は大阪だったから、電車の乗り換えがとても苦手な私は、おばあちゃんに頼み込んで、一緒に大学(受験会場)までついてきてもらった。

大学に着いて、緊張している私に「ゆか、いっぱい頑張ってきたやろ。胸張って行ってき」と背中を押してくれたおばあちゃん。

おばあちゃんがいたから、私はあの1年間、これまでの人生を振り返っても1番勉強したと言える。(ストレスで10円ハゲができるくらい、当時は勉強した)

受験結果発表の当日の日も、もちろん、おばあちゃんと一緒に見ると決めていた。ここまで頑張ってきたから、と深呼吸をする。

何度も見ようとしてはやっぱり…と行ったりきたり。

意を決して、受験結果発表の一覧を見る。

自分の番号を必死に探す。


でも、私の番号はなかった。

落ちたのだった。

時が止まるってこういうことか、と思った。

しばらく現実を受け入れられなくて、固まる。
おばあちゃんも、そんな私の様子を見て、悟ったのか、「残念やったな」と一言発した。

じわじわと悲しい、悔しい、やるせない、色んな気持ちが湧いてくる。そんな感情が込み上げると同時に、目頭も熱くなる。

ああ、だめだ、泣いちゃう。

と思った時には、大粒の涙が目から溢れていた。

頑張ってきたけど、だめだった。努力が実らなかった。いや、もっと努力が必要だったのかもしれない。とにかくだめだった。おばあちゃんに受かったよって言えなかったな。

そんなことを思うと、涙は全く止まらないどころかどんどん溢れ出て、わんわんと小学生のように泣いた。小学生よりもうるさかったかもしれない。

とにかく私は泣き続けた。多分、1時間くらいは泣いていた気がする。あまりにも泣き続けて、声が枯れて、目がパンパンになった。

そんな私を見て、おばあちゃんが一言、大きな声で、ビシッと言った。

そのおばあちゃんの一言が、いまだに私は忘れられない。


「ゆか。泣いたって、合格するわけちゃうやろ!次のこと考え!」


涙が止まった。「え?」と聞き返していた。
なぜなら、私は、おばあちゃんは慰めてくれると思っていたから。でも、耳に入ってきたのは、全然違う言葉だった。

最初はびっくりしすぎて戸惑ったけど、「そうやな」と思っている自分もいた。

確かに、泣いても結果は変わらんわ、と冷静になった瞬間、涙が止まった。

続けておばあちゃんがいう。

「ええか、頑張ってもあかんときはあかんねん。でもな、ゆかが頑張ったことは事実や。そのことは胸張ったらええ。ほんで泣き終えたら、さっさと、次にいき!」

そういえば、おばあちゃんは、若い頃、おじいちゃんが興した会社をずっと手伝っていて、おじいちゃんが興した会社が倒産して、大きな大きな借金を背負っていた人生だった。今のおばあちゃんの家も差し押さえされたらしい。

でも、今の家だけは家族のために残すんだって、おじいちゃんとおばあちゃんは歯を食いしばってまた新たなビジネスを成功させて、全ての借金を返して、差し押さえされた家も取り戻したという話を、母から聞いていた。

他にも、おばあちゃんは、私が失恋してわんわん泣いてる時も、

「そんな男、見る目ないわ!次いき、次!」

と言っていた。おばあちゃんの切り替えのはやさとちゃきちゃきした力強さは、本当にすごい。いつも圧倒されている。

変に、優しく寄り添うことをしないし、でも冷たいわけではない。


この寒い時期にいつも思い出すこのエピソード。

たまにおばあちゃん元気かなと思って電話をして、受験結果見た時にこんなこと言ってたよなあ、って言ってもおばあちゃんはいつも「覚えてへんわ」という。

久しぶりに帰省して、「会える?」って聞いても、「月曜日は習字で、火曜日はコーラスで、水曜日は喫茶の予定あるから、無理やわ」と断られる。私より忙しい。どんな毎日なんだ。

そんなおばあちゃんと、来年の年始には会えるから、とても楽しみだ。

おばあちゃんと話すと、いつも、楽になれる。きっと、おばあちゃんの周りの人もそうなんだろう。

だから予定がいつもぱんぱんなんだね。
さすがに、年始は空けといてよ。


私が20歳の頃の成人式の首周りのふわふわをつけているおばあちゃん。







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