企業組織において高業績を導くチーム・プロセスとは!?
企業が高い生産性や業績を上げるためには、どのようなチームワークが必要なのでしょうか?
今回は、企業組織において高業績を導いているチーム・プロセスの解明について論じている論文についてまとめていきます。
論文名:企業組織において高業績を導くチーム・プロセスの解明/縄田健悟・山口裕幸・波多野徹・青島未佳
研究目的
企業組織のビジネスチームにおいて、チーム・プロセスがチーム・パフォーマンスへと結実する全体的過程の解明を目的としている。
従来のチームワークは、クルー(crew)を対象としている研究が多い。
クルーでは、チーム全体で一つの短期課題に取り組む。誰かが欠けるとチーム活動そのものが成り立たなくなるような、チーム全体での活動が求められる。スポーツの例で言うと、バレーボールチームやバスケットボールチームなどが挙げられる。
一方、今回の研究対象であるビジネスチームでは、成員個人に達成すべき課題が割り当てられているため、個人のパフォーマンスを高めるようなチーム・プロセスとして理解することが重要となる。
特に本研究では、日常的相互作用としての側面を重視して、ビジネスチームのチーム・プロセスを議論していく。具体的には、チーム成員とコミュニケーションを取り、情報を共有し、相談し、励まし合うといった行動などが挙げられる。このような日常場面でのチームワーク行動が、個人の業績向上や目標達成を促進させ、ひいてはチーム全体、組織全体の業績を向上させると考えられる。
理論的枠組み
Dickinson & McIntyre(1997)の チームワーク・モデルを、企業組織のビジネスチームに適用できるように修正し、以下の理論的予測を行っ た。
まず、企業組織のビジネスチームにおけるチーム・ プロセスの構成要素として、(a)チーム活動全体を促進する土台となる日常的相互作用としての“コミュニケーション”と(b)モニタリングや相互調整などから成る目標達成を目指した日常的チーム活動としての “目標への協働”の 2 側面から成り立っていると予測した。さらに、コミュニケーションは、目標への協働の先行要因であり、コミュニケーションが目標への協働を高めるというチーム・プロセスの結果、チー ム・パフォーマンスが高まるという因果過程を予測した。
方法
五つの企業の従業員を対象に、ウェブ上で質問票に回答してもらった。合計 1,433 名からの回 答が得られたが、回答者が 1 人しかいないチームを除外した結果、1,400 名(男性 1,125 名,女性 216 名, 不明 59 名)、161 チームが分析対象となった。平均年齢は 38.98 歳(SD = 28.11)であった。現在の会社の平 均勤続年数は 15.94 年(SD = 8.35)であった。平均チーム規模は 8.70 人(SD = 5.85)であった。
分析項目
チーム・プロセス三沢他(2009)を参考にして、新たに作成した 21 項目である。
本研究では、(a)定量、(b)上司評定、(c)自己評定の 3 側面からチーム・パフォーマンスを測定し、チー ム・プロセスとの関連を検討した。
分析
チームレベルの影響過程を理解するために、本研究ではマルチレベル分析(multilevel analysis)を用いた。マルチレベル分析とは、“集団”と“所属成員”などの階層的な入れ子構造のデータに用いられる分析である。これにより、集団レベルの効果と集団内の個人差の効果を弁別して検討できる。
結果
結果を Figure 1, 2, 3 にそれぞれまとめた。いずれも同様に、コミュニケーションが目標への協働を高めるというチーム・プロセスの結果、チーム・パフォーマンスが全体的に高まるという影響過程が得られた。
考察
ビジネスチームでは、コミュニケーションが目標への協働を高めた結果、チーム・パフォーマンスが高まるという因果過程が見られた。これは定量・ 上司評定・自己評定いずれの側面のパフォーマンスでも同様であった。
つまり、他成員を配慮し円滑な“コミュニケーション”を行うことを土台として、チーム成員間で目標を明確にし、情報を共有し、指摘しあうといった“目標への協働”が行われる。その結果、実際の成果としてのチーム・パフォーマンスが高まるという影響過程である。“コミュニケーション→目標への協働→チーム・パフォーマンス”という本研究の提示した理論モデルと合致しており、当初の予測は支持された。
ビジネスチームでは、ともに励ましあい人間関係を円滑にするような日常の対人配慮的なコミュニケーションも求められる。対人配慮としてのコミュニケーションはチームが課題遂行を行うための“潤滑油”のような役割を担うだろう。そのため、日常場面のコミュニケーションは、直接パフォーマンスを高めるというよりも、実際の目標達成に向けたチーム活動である目標への協働を高める形で、間接的にパフォーマンスを高めていたのだと考えられる。
高業績なチームというのは、円滑なコミュニケーションを土台として、チーム成員間で目標を明確にし、情報を共有し、指摘しあうといった“目標への協働”の結果、チームパフォーマンスが高まることがわかりました。
そもそもチームメンバーが安心できるコミュニケーションの土台があってこその、パフォーマンスですね。改めて、自分のチームがどのようなコミュニケーションをとっているか、どのようなパターンがあるかは、振り返ることが重要かもしれません。