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半端な年に思うアレコレ

昨年に引き続き、今年もAdvent Calendarに参加させていただきました。この記事は、『ゲームとことば Advent Calendar 2024』への寄稿記事です。

今年は翻訳者になって13年目の年でした。半端な数ですし、不吉だと言われる数字でもありますね。
今回の『ゲームとことば』はテーマが自由とのことですので、そんな節目とは無縁の年に思うことをいくつか書こうと思います。


11年ぶり2度目の登録解除依頼

自分のメモを見てみると、初めてゲームを翻訳したのは2012年とあるので、どうやら私はゲーム翻訳者としては12年目のようです。
この年には2社のゲーム翻訳会社さんとの出会いがありました。1社は毎月支払いが遅延するけしからん会社で、1年ちょっとで登録を解除してもらいました。そしてもう1社は、今も大変お世話になっている「育ててくださった」恩のある会社さんです。

なぜこのような話をしているかと言うと、つい先日、私の翻訳キャリアで2度目となる登録解除依頼をしたばかりだからです。
少し前にXに投稿した内容でもありますが、ポーランドにあるこの新興ゲーム翻訳会社には、納品後に「レートを間違えていた」という理由で勝手にレートを下げられた上に逆切れされるという非常に腹立たしい思いをさせられました(逆切れされたのは、私が「今回はそれでも構いませんが、納品後の減額はおそらく多くの国において法律に違反する行為であるということは知っておかれた方がいいと思います」と伝えたからです。日本でいうなら下請法違反です)。その後、短く素っ気なく無礼な返信が届いたり、登録解除を依頼するとギョッとするほど長く不愉快なメールが届いたり、支払いのことでもチクチク嫌味を言われたり、何だかんだを経て結局未払いのまま今にいたっています。

この出来事を通じて得た教訓は、フリーランスとして仕事をしていく以上は、常にさまざまなことに備える必要があるということです。もちろんこれは、絶えず臨戦態勢でいるべしということではありません。普段は波風が立たないよう努力し、すべき仕事をきちんとこなして、時間をかけて信頼関係を育んでいかなければなりません。ただし、信頼関係にひびが入るようなことをする相手に「あなたのしていることは間違っている」と伝えても、自分の生活が破綻しないようにしておくことが非常に重要です。そのためには、常にアンテナを張って新規開拓をすることと、横のつながりを大切にすること、そしてできるだけ多くの会社さんと良い関係を築くことが不可欠です。

海外で英日ゲーム翻訳をすること

正直に言うと、海外で英日ゲーム翻訳者をするのは不利なことが多いように感じています。参加してみたいゲームイベントはほとんどが日本国内で開催されますし、翻訳者の交流会も同様です。いつかお会いしてみたい翻訳者さんも、日本に住んでおられる方がほとんどです。海外在住ということでインハウスになれなかった経験も一度ならずあります。
ただ、海外だから完全に不利かと言うとそうでもないはずで、私がその機会を活かしていないだけで、例えば私がいま住んでいる場所でしたらPAX Eastとか、トロントやモントリオールのゲームイベントに行くという手もあります。昨日参加したJATの忘年会でも、とても良さそうなイベントを教えていただきました。開発さんと時差がないことも強みになるかもしれません。
どこに住んでいようと、「今ここでできること」を伸ばしていくのも、大事なことだと思う今日この頃です。

この13年で仕事はどう変わったか

完全に私個人の視点にはなりますが、MTPE案件がいったん増えたもののその後は特に増える様子がないこと、ゲーム翻訳会社またはゲームを扱う翻訳会社の数が世界的に爆発的に増えたこと、契約書が異様に厳しくなってきていること、直取引が以前よりも身近になったこと、ゲーム翻訳のレベルが全体的にとても上がっていること… などでしょうか。それらをふまえると、この業界に入る、または続けていくには高いスキルが要求されるものの、ゲーム翻訳者として活動する場は広がっているといえるのではないでしょうか。
そして契約書についてですが、最近の契約書にはえげつない条項がさらっと盛り込まれているため(損害は翻訳者がすべて負うとか、何かあったら翻訳者はXXXXドル支払うとか…)、罰則には特に注意して目を通し、必要なら変更・削除してもらうよう伝えないと恐ろしいことになりかねないと思っています。どの会社とどのような契約を結ぶのか、皆さんも十分気をつけてくださいね。

以上がいま思うアレコレです。長々と書いてしまいましたが、お読みいただきありがとうございます。
この記事が、誰かのお役に立てば幸いです。それでは皆さま、良い年末年始をm(❁_ _)m。