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倍音次数と音階の関係02 第7倍音も使える!

01で倍音次数ごとにどのくらい音程がずれているのかを述べた。ここでは、実際に発音される音の音程、すなわち基音=基本管長=運指やポジションによる管長生成と自然倍音次数の掛け合わせについて述べていく。

発音音程=基音音程x自然倍音音程

より正確には、
発音音程のズレ=基音音程のズレx自然倍音音程のズレ
とも言えよう。
端的には、以下の2種でしかない。
・高い基音(高くなる運指やポジショニング) x 低くなる倍音次数  → 相殺されて正しい音程
・低い基音(低くなる運指やポジショニング)x高くなる倍音次数 → 相殺されて正しい音程
実際、「正しい倍音次数」と呼ばれる1,2,3,4,5,6,8,9,10次であっても、多少なりとずれはあるので、意識して/無意識のうちはともかく実践している。

ただし、「ズレすぎている:高すぎor低すぎ」と知覚される場合(人にもよるが 例えば20セント以上)でも、以下のように認識すれば十分使い道はある。
・とても低い基音(低くなる運指やポジショニング) x とても低くなる倍音次数 → たし合わさって 半音ひとつ低い正しい音程
・とても高い基音(高くなる運指やポジショニング) x とても高くなる倍音次数 → たし合わさって 半音ひとつ高い正しい音程

実例:トランペットの13、123でのトリガーによる管長延伸

バルブスライドの機能として最も一般的なのは、バルブ1=半音x2下降、バルブ2=半音x1下降、バルブ3=半音x3下降である。しかし、足し算と掛け算の世界の交錯のため、複数組み合わせると音程が下がりきらない。そのため、いろいろスライド長=音程がどのくらい下がるか:を調整して帳尻を合わせている。それでもなお、13,123はとても音程が高い。これだけで文章一本かけるのだがそれはまたいつか。
以上を加味した 基音x倍音列の組み合わせにを表で示す。運指0,2,1,12,23は基音の音程が正確であるため、1,2,3,4,5,6,8,9,10,12倍音の音程も概ね正確である、反面7,11倍音の音程は大きくずれている。
一方、運指13,123は基音の音程が高いため、正確と言われる1,2,3,4,5,6,8,9,10,12倍音の音程も当然高い(グレー塗りの箇所)。
運指13,123の音程を正確にする:下げるには、管長を長くする。それはトリガー操作によって実現される。

基音x倍音列 バルブ組み合わせのみ トリガーなし

運指13,123の音程を正確にする:下げるには、管長を長くする。それはトリガー操作によって実現される。

基音x倍音列 バルブ組み合わせ +トリガー操作

ただし、この操作は、以下のいずれにも当てはまらない。
・高い基音(高くなる運指やポジショニング) x 低くなる倍音次数  → 相殺されて正しい音程
・低い基音(低くなる運指やポジショニング)x高くなる倍音次数 → 相殺されて正しい音程

実例:テナートロンボーンの実音G、Fis

以前の01に、トロンボーン奏者はポジションを手前に:基音が高くなる側に取って、第7倍音を正確な音程にしていることを述べたが、それを改めて通知表で示す。31.2セント低くなる第7倍音に対し、基音が31.2セント高くなるようにスライドを縮める事により相殺し正確な音程:実音G、Fisを発音することができる(水色)。それは、よりスライド帳が長い状態で第8倍音との組み合わせ(暗い青色)よりも演奏が容易である。しかし、バルブ式楽器では31.2セント分基音を上げる:管長を縮める手段が一般的には無いので、この手法は使えない。
・・・そう、一般的ではないバルブスライド長を設ければ可能である。B管ホルンのgestバルブスライド長を表中に示した。結論、第7倍音にて実音Fisを発音することができる。当然、運指23x第8倍音よりも演奏が容易である。

基音x倍音列 第7倍音用スライド補正

実例:運指13x第5倍音による実音A

運指:バルブスライドの組み合わせによっては基音の音程がずれているものがある。例えば、13は約18.4セント高い(トランペット等におけるトリガー操作をしないこと)。
一方、倍音次数には音程がずれていることは何度も述べている、例えば第5倍音は13.7セント低い。

ただし、フレンチホルンを除く殆どの金管楽器は、第5,10倍音が低くならないように設計上工夫がされている。ヴィンナホルンもフレンチホルンほど低くはならない。

そう、これらが相殺され、ほぼ4.7セント高いのみ、という非常に正確な実音Aを得ることができる。黄色の箇所となる。

基音x倍音列 運指13

実例:運指13,123x第7倍音による実音Es,D

同じ原理で、約41セント高い運指123と、約31.2セント低い第7倍音を組み合わせると、約10セント高いのみ、という十分正確な実音Dを得ることができる。オレンジ色の箇所である。上記の表、運指13でも約13セント低いのみ、という十分正確な実音Esを得ることができる。

基音x倍音列 運指123

バリー・タックウェルの教則本に「実音Aが出るフィンガリングのバリエーション」としてB管13が載っている。尚、B2はもちろん、F0、F12、F3、挙げ句 F123:B管123で実音Dが出せるのと同じ計算:も載っている。

以上をグーグルスプレッドシートで公開している。

次回は第11,13倍音について書きたい。

以上


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