2浪、受験、鹿児島へ 第42回月刊中山祐次郎
(5月3日南日本新聞一面の「朝の文箱」に掲載された中山のエッセイを、許可を得て転載しています)
今日から毎月一回、この欄を担当させていただく、外科医・作家の中山祐次郎と申します。一年間、どうぞよろしくお願い申し上げます。
初めて鹿児島空港に降り立ったのは、2000年の3月のことだった。僕は二浪してハタチだった。痩せた体に合わないスーツを着ていた。芋焼酎のポスターだらけの不思議な空港からバスに乗り、西鹿児島駅へ。当時、駅前の川沿いにあった「ホテルニューカゴシマ」に泊まった。「受験生応援プラン」の名の割には、夕食時には似たような暗い顔の受験生を一部屋に集め、冷たい弁当を食べさせた。一言も発せず、6人位で黙々と食べた。向かいのローソンでアサヒスーパードライを1本買い、飲んで落ちるように寝た。
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