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臨床実習、霧リハ、コップ 第72回 月刊中山祐次郎
こんにちは、中山祐次郎です。
今回は南日本新聞の連載を、許可を得て掲載させて頂きます。けっこう今回のは気に入ったなあ。
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2005年4月。鹿児島大学医学部の五年生になった僕は、生まれて初めて「医療側の人間」として白衣をまとって病院に入った。臨床実習が始まったのだ。 サッカー部の活動のおかげでよく日焼けをしていたが、半袖で丈の短い「ケーシー」というタイプの白衣はまあまあ似合い、いかにも医学生という雰囲気だった。初めて買った、2万円もする聴診器が配られる。耳に着けると、まるで深海にひとり潜ったような静けさに包まれた。Tシャツの下から、そっと自分の胸に当てる。どうん、どうん、と低い音。祭りの夜に聞くようなその心臓の音は、神秘的というよりはたくましかった。ああ、ついに僕は医者になるのだ。
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