さよなら、ニルヴァーナ
いやぁ なるほどなぁ
『ふがいない僕は空を見た』で初めてふれた小説家、窪美澄さん。
そのあと続いて、『晴天の迷いクジラ』、そして『さよなら、ニルヴァーナ』と連続して読んだ。
窪さんの小説には、その場に居る人物が感じたであろうこと、目に映ったであろうものが細やかに、しかしとても自然に描かれていて、好きだ。
現状も歴史も背景も考え方も何もかもが違う登場人物と、読んでいる自分の目線が共有される感じ。
主題として扱われているテーマは重く、自分なんかは毎度「うわぁ…」「うおぉ……」と思いながら読み進めるのだが、その心理描写の巧みさによって、自分とは絶対に相容れないと思っていた登場人物に思わず共振してしまったときや、粘度の高い暗闇の底に滲み出す光を感じたとき、彼女の小説の魅力にぴかりとあてられてしまうのだ。
冒頭のとおり、わたしには、頭で整理しきれていないことがある時、なるほど、と言ってしまう癖がある。
色んなものがぐるぐると頭の中を回っているうちに、おでこあたりにある出口からなるほどが飛び出てしまうのだ。
しかし、外に出た非常にアホっぽい反応とは裏腹に、四百ページほどの小説から受け取った他のモノたちは変わらず頭の中をぐるぐる回り続ける。
人間の多面性、状況、立場、やるせなさ、性、衝動、後悔、自己愛、殺人鬼とアイドル、希望。
そして、腹を搔っ捌いても人間の中身は分からないらしいことも。
これだから読書はやめられない。
本を読もう。