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なぜ今、ロボットが必要なのか
こんにちは、TechMagic創業者・代表の白木裕士です。
私が経営者という道に心惹かれたのは、小学生時代のある出来事がきっかけでした。父が営んでいた4代続く会社が倒産し、父と兄で夜に会社の整理をした日の光景は、今でも鮮明に覚えています。あの時、私は初めて父の会社を訪れ、それが最初で最後の訪問となりました。この出来事は、「経営とは何か」という深い問いを私に投げかけ、私の人生を大きく方向付ける原点となったのです。
「世界を舞台に挑戦する経営者になりたい」という夢を抱き、高校時代には亡き母方祖父の支援を受け、単身で海外留学をし、クラスメイトと共に初めての起業を経験し、その後、大学時代には事業に没頭。「もっと大きな事業で世界にインパクトを与えたい」という想いから、事業を売却してBCG日本支社に入社しました。そして2018年、「ロボットテクノロジーで人類の幸せの質を高める」という志で、TechMagicを創業しました。
創業期から共に歩んできたCTOの但馬をはじめ、素晴らしい仲間たち、クライアントの皆様、投資家やサポーターの方々の支えがあったからこそ、ここまで来ることができました。来月で創業7周年を迎える現在、私たちは従業員数75名を超え、シリーズCの評価額は123.9億円に到達。この成長の軌跡を振り返ると、感謝の気持ちでいっぱいです。
しかし、私たちの挑戦はまだ序章にすぎません。TechMagicを21世紀を代表する独自性のあるロボット企業へと成長させ、仕事や暮らしのあり方を変革することに貢献していきたいと思っています。
このブログを始めたのは、私自身の考えや想いを、より多くの皆様に直接届けたいという想いからです。初回の投稿では、「なぜ、今ロボットなのか」というテーマについてお話しします。今後も定期的に更新していきますので、ぜひお付き合いいただければと思います。
連絡先
Facebook:@yuji.shiraki1
X(旧Twitter):@shirakiyuji1
HP:techmagic.co.jp
はじめに
私たちが暮らす現代社会は、かつてないほど大きな変革と混迷の只中にあります。新型コロナウイルスのパンデミック、ウクライナや中東での紛争、気候変動に伴う自然災害の多発など、グローバルな課題が複雑に絡み合う中で、日本などの先進国では少子高齢化が進行し、深刻な労働力不足に直面しています。企業経営の不確実性は増すばかりで、「これまでの常識が通用しない」時代が到来しつつあるのです。
こうした予測不能な時代にあって、私たちが重要だと考えるのは、「潮目を読む力」です。社会や技術の大きな流れをグローバル視点で捉え、その中から新たな戦略を導き出すことが、企業の持続的成長を支える原動力になるのです。そして、その潮流の中心にあるのが、AIやロボット技術の急速な進化です。
ロボット技術は、ハードウェアとソフトウェアの高度な融合によってビジネスの生産現場を一変させつつあります。TechMagicのロボットを導入することで、すでに単なる効率化の「ツール」の域を超え、持続可能なオペレーション体制を構築し、競争力を高める必須のテクノロジーへと変貌を遂げる実績も出てきています。今後10年、20年にわたり企業の成長を左右する大きな鍵となることは明らかで、経営陣にはこれまで以上に的確かつ大胆な舵取りが求められています。
ただし、ロボットをただの「ツール」と捉えるだけでは、その真の価値を見落としてしまいます。重筋作業や単調作業、危険を伴う作業から解放する「解放者」であり、働く人々に新しい価値をもたらす「活人化」の存在でもあります。ロボットを導入することで深刻化する労働力不足を和らげ、従業員一人ひとりの生産性を大きく引き上げることが可能になります。その結果、企業はより魅力的な職場環境を実現し、優秀な人材を惹きつけやすくなるのです。
しかしながら、TechMagicが目指すのは、単なる効率化の追求だけではありません。私たちは「ロボットが社会や人々の暮らしに、どのような新しい価値をもたらすか」を問い続けることが大切だと考えています。創業以来7年間、TechMagicはこの問いを軸に事業を進めてきました。ロボット事業を通じて、社会や産業、企業、そこで働く人々、そして一人ひとりの消費者がAIロボットの恩恵を受け、人類の進化につながる未来を描きたい。それは、より持続可能な社会を築きながら、人間の幸福度を高めるという壮大な挑戦でもあります。
産業革命と人類の進化
人類の歴史を振り返れば、社会を根底から変革してきたのは常に技術革新でした。私たちは今、第4次産業革命の只中にいますが、その意義を正しく理解するためには、過去の産業革命を振り返ることが不可欠です。それぞれの時代で、技術がどのように人々の働く環境や生活、文化を変え、いかに新しい可能性を切り拓いてきたのかを知ることで「潮目」を理解し、今後の未来が見えてくるのです。
第一次産業革命 - 機械化がもたらした行動の自由
18世紀後半から、蒸気機関の登場が世界を一変させました。蒸気機関車が「物理的な移動の限界」を取り払い、人々の生活に「行動の自由」をもたらし、行動範囲を飛躍的に広げたのです。また、この頃から「時間」の概念が社会基盤として確立され、初めて機械が人間の労働を大規模に補完し、生産性を劇的に向上させました。
第二次産業革命 - 電気による生産と生活の変革
19世紀末からは、電気の普及によって製造業の大量生産が一気に加速。食品産業を含むさまざまな産業で、昼夜を問わない生産体制が整い、家電の普及による家事の効率化は、人々の生活に「時間の自由」をもたらすなど、技術が日常の深い部分に根づいた時代といえます。
第三次産業革命 - 情報革命による世界との接続
20世紀後半からは、コンピュータやインターネット、モバイル技術が登場し、情報革命が始まりました。知識や情報が瞬時にやり取りでき、地球規模でのグローバル化が加速。人々の生活に「情報取得の自由」をもたらすなど技術が「距離」の概念を大きく変え、人々がリアルタイムでつながる社会が現実のものとなりました。
第四次産業革命 - ロボットによる自律化と最適化
そして今、AIとロボット技術が主導する第4次産業革命へとステージを移しています。これは、従来の産業革命よりもさらに一歩進んだ「自律化」と「最適化」を目指すもので、人間が担ってきた単調な作業や重労働など「労働の解放」、「個別に最適化されたサービス」をスピーディに提供できる時代を切り拓いています。人々の生活に「労働の自由」、「経済活動の自由」やパーソナライズされたサービス・プロダクトによる「生活の自由」をもたらし、人類が創造的に生きる世界に進化させると考えられます。
TechMagicが解決したい課題
1. 労働力不足
日本の労働市場では、かつてない規模の労働力不足が深刻化しています。厚生労働省の推計では、2023年時点で約189万人分、1日あたり約960万時間の労働力が不足している状況です。この傾向はリーマンショック後から顕著に見られ、経済停滞を経てもなお、日本社会が構造的な人手不足に直面していることを浮き彫りにしています。
さらに、2035年には労働力不足が現在の1.85倍に拡大し、1日あたり約1,775万時間、384万人分に相当する欠員が予測されています。このシナリオは「経済が成長しない」という前提のものであり、仮に日本経済が成長を遂げる場合、その不足幅はさらに深刻化する可能性があります。外国人労働力の受け入れなどの一時的な対策だけでは、根本的な解決は難しいのが現実です。
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2. 生産性の低さ
日本の労働生産性は、主要先進国と比較して大きく遅れを取っています。一般財団法人日本経済研究所によると、2022年時点の日本の労働生産性は就業1時間あたり52.3ドル(5,099円)で、ポーランドやポルトガルと同水準にとどまり、G7諸国との差は開く一方です。
過去10年で、日本のOECD加盟国中の順位は20位前後から30位にまで後退し、1970年以降で最も低い順位となっています。この背景には、定型的な作業に労働力を集中させ続けた結果、人材が本来の創造性や問題解決能力を発揮できる環境が整っていないことが挙げられます。
ロボットとの協働を通じて、人間がより付加価値の高い業務に集中できる仕組みを構築すれば、日本経済の停滞を打破し、成長の新たな道を切り開くことが可能です。効率化を超えて、経済全体の「豊かさ」を再構築するための鍵が、ここにあります。
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3. 技術変化の加速と既存モデルの陳腐化
テクノロジーは常に産業と組織の在り方を再定義してきましたが、近年の生成AIの進化は、過去の産業革命やIT革命を超える影響力を持つ可能性を秘めています。一方で、急速に変化する技術環境に適応できない既存のビジネスモデルは、加速度的に陳腐化していくことは歴史が証明しています。
生成AIを活用した新しいサービスやプロセスは、今までにない速度と規模で生み出されています。これに対し、ロボット技術は単なる「業務プロセスの自動化」に留まらず、「人と機械の協働」を可能にする柔軟なビジネスモデル変革を推進していくと考えます。
例えば、反復的な作業をロボットが担うことで、人間は高度な意思決定や創造的な業務に集中できるようになります。また、これまで多人数で支えられてきたビジネスモデルも、汎用ロボットの普及により少人数で迅速に立ち上げることが可能となります。こうした取り組みは、企業が競争力を維持し、未来のビジネス環境に適応するために不可欠ではないでしょうか。
「なぜ今、ロボットが必要なのか」
日本が直面する社会課題は、労働力不足、生産性の低迷、そして急速な技術革新による既存モデルの陳腐化という、いずれも緊急性の高いテーマばかりです。これらの課題に対処するには、従来の延長線上の施策では限界がある一方で、こうした「危機」こそが新たな成長の機会を生み出す絶好のタイミングでもあります。まさに「ピンチはチャンス」という状況下で、「なぜ今ロボットが必要なのか」を3つの視点から整理してみましょう。
1. ロボットは労働力の量的不足を補完し、高度な仕事へのシフトを可能とする
日本では少子高齢化により、労働力の量的不足が深刻化しています。こうした背景の中、肉体的に厳しい作業や単調な定型業務をロボットが担うことで、人間はより創造的かつ戦略的な役割に集中することが可能になります。ロボット技術の導入は、「省人化」ではなく「活人化」となり、限られたリソースの中で競争優位を築く手段となるのです。
2. 協働の枠組みが生産性を根本的に押し上げる
ロボットは決して人間の仕事を奪う存在ではありません。それどころか、人間が本来持つ創造性や問題解決力を引き出す「共創関係」を築くカギとなります。この協働の枠組みを構築することで、業務プロセスそのものを再考し、付加価値を高める場を設計することが可能です。結果として、企業全体の生産性を根本から底上げし、新しい価値を創出する基盤を作るのです。
3. 技術変化が加速するからこそ、ロボットは事業変革の起爆剤となる
生成AIの進化が示すように、技術変化のスピードはかつてないほど加速しています。この急激な変化に適応するためには、ロボットとAIを既存事業に組み込み、従来の常識を塗り替える新たなビジネスモデルを構築することが必要です。「ロボット×AI」という組み合わせは、変化を乗り越えるだけでなく、企業が新市場を先駆けて開拓する柔軟性と俊敏性をもたらします。
「未来を形づくるパートナー」としてのロボット
これらの視点から見えてくるのは、ロボットを単なる「コスト削減」や「省人化」の道具として捉えるのではなく、「未来を形づくるパートナー」として位置づける必要性です。労働力不足や生産性の課題といった大きな社会的テーマが山積する今だからこそ、ロボットを活用した人材の質的転換や既存ビジネスモデルの大胆な再設計を進めるべきなのです。日本は長い歴史の中で数多くのイノベーションを興してきましたが、ロボットとの協働によって新たなステージへと移行できるかどうかは、今を生きる私たちがいかに意志を持って変革の一歩を踏み出すかにかかっています。
私たちが創り出すイノベーションは、やがて世界のスタンダードとなり、持続可能な社会とより良い生活水準を実現する核となるでしょう。 その第一歩を踏み出すタイミングが、まさに「今」なのです。
最後に
今回は「なぜ今、ロボットが必要なのか」と題して、産業革命の歴史が人類にどのような影響を与え、ロボットの必要性について概観しました。
私たちは、ロボット開発への想いを少しでも多くの方に届けたいと願っています。そこで、情熱にあふれ、何事にもあきらめずに挑戦を続けられる仲間を積極的に募集しています。毎月第3水曜日19時よりオンラインの採用イベントを行なっています。(※今月のみイレギュラーで1月29日開催です)
もし少しでもご興味をお持ちいただけましたら、ぜひHPのお問い合わせからお気軽にご連絡ください!
ロボットが切り拓く未来は、私たち一人ひとりの小さな一歩から大きく動き出します。共に学び、考え、大胆に挑戦し、新しい世界を創り上げていきましょう。これからのTechMagicの取り組みに、どうぞご期待ください!
次回は「TechMagicの誕生秘話ー会社の存在意義」について書きたいと思います。