![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/129249420/rectangle_large_type_2_f5d28de9e5d77cd6a12f851f9f145683.png?width=1200)
「STAND BY ME ドラえもん」では のび太は勝てない
2014年に公開された「STAND BY ME ドラえもん」。初の3DCG映画で、そのストーリーは原作のエピソードを繋ぎ合わせた物になっている。だが、肝心な所で成立していないのをご存知だろうか。
のび太は空き地の決闘でジャイアンに勝つのだが、実はこの映画のシナリオでは不可能なのだ。
この決闘、原作では真夜中に行われるが、本作では夕方になっている。おそらくコンプライアンスの関係だろう。しかし、これでは原作の巧妙に練られた設定を台無しにしてしまう。
藤子・F・不二雄はその短編集を読んで分かる通り、決して夢想家ではない。世の中気持ち一つで勝てるほど甘くないことを理解した上で、それでものび太を勝たせている。
なぜ真夜中だったのか。ここに緻密な考証が隠されているのだ。
原作の流れを見ていこう。
別れの前夜、寝つけないのび太はドラえもんに「ねむらなくても つかれない薬」をもらい散歩に出る。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/129417396/picture_pc_9d3240e6ca53931dd46488193b448d2d.png?width=1200)
そこで夢遊病のジャイアンと邂逅し、その姿を見られたジャイアンは激昂、決闘となるのだが、なぜ夕方では勝てず真夜中では勝てるのか。
ここで双方の戦力を分析してみよう。
まずジャイアンは寝起きであり、夢遊病で眠りの質も悪く、パジャマに裸足だ。本来のパフォーマンスが発揮できない。
そんなコンディションのため、モチベーションにも疑問が残る。おそらく2、3発殴って終わりと高を括っていたに違いない。
一方、のび太はフィジカルでは圧倒的不利だが「ねむらなくても つかれない薬」を飲んでおり、その身に無尽蔵のスタミナをたたえている。
そして自分が負ければドラえもんの後ろ髪を引くことになる。一世一代の大勝負だ。
この対照的な2人を見れば勝利の方程式が見えてくる。
つまり致命傷を避け、粘りに粘り長期戦に持ち込めば勝機はあるのだ。
果たして決闘はそのような展開をたどり、のび太はジャイアンを退ける。
少し生きれば、世の中気持ちだけでどうにかなるほど甘くない事は分かるであろう。
勝つということは、そのための戦略・行動の積み重ねだ。
意図したわけではないのだが、ジャイアンを倒す条件が一つ一つ積み上がり、勝利に導いたのである。
藤子・F・不二雄は勝つために必要な事をきちんと物語の中で伝えていたのだ。
もちろん、どんなに状況が整っても「気持ち」が無ければ勝ち切る事はできない。勝利の鍵を握っていたのは、のび太のドラえもんに対する思いであった事に疑いはない。