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「初めての人生の歩き方――毎晩彼女にラブレターを」(有原ときみとぼくの日記) 第257話:初めて娘を叱った日。

「ニュートンは『どうやって法則の発見を』と聞かれ、『考え続けて』と答えた。執念、ここが大事なのだろう」星新一


 相も変わらず机に向かってカタカタとキーボードを叩いている。
 プロットがもうすぐできそうなのに、最後の方で初期の設定との辻褄が合わなくなり修正を余儀なされている。
 気がつけば時間は刻一刻と過ぎていた。お昼前になって、「なんで今更ここを変えなくちゃならねーんだよ!」と叫びそうになるのを抑えつつ、大きく深呼吸をして頭の中で考える。

 どっちが面白くなるかなぁ?

 そして面白い方は大抵面倒くさい方なのだ。
 だから迷わず手を加える。修正する。時間? うん、なんとか頑張る。

 お昼になったので急いでご飯を片付けてベランダのハンモックで少しだけうたたね。ニコニコ動画から流れてくるメンタリストの声が眠気を後押ししてくれる。
 睡眠学習的な感じで一石二鳥のお昼寝だ。

 青空が美しく、鳥の鳴き声が心を洗う。
 先月まで大阪の車の音と排気ガスと酔っ払いの訳の分からん奇声しか氣来なかったのに、今では別天地のごとくに自然を感じられる。
 風が吹く。ハンモックが揺れる。気がついたら放送も止まり休憩時間はもう終わっていた。

 再び部屋に籠る。

 頭の中で物語が加速していく。
 その感覚を楽しみたくてぼくは何度もトイレに立つ。
 脳みその後ろ側がジリジリと締め付けられているような気がする。

 もうすぐ娘が帰ってくる。

 と、そのときインターフォンが鳴った。
 鍵でも忘れたのかなと思いカメラ画面を見るとそこには確かに娘の顔が写っていたのだが背後にもう二人ほど知らない子供もいた。

「ねえ、友達と遊びに行ってもいい?」

 初めてのパターンだった。いつもは家にまっすぐ帰ってきてそしてずっと家にいるのに。そしてまだそういうことを彼女と話し合っていなかったし、関係ないけどぼくはまだパパになって日も浅いし、うーん、とひねり出した答えが、

「いいよ、んじゃ5時までね。それまでに帰っておいで。ちなみにどこ行くの?」

 娘は○○公園! と元気よく答える。

「分かった。じゃあもし違う場所に移動することがあったら絶対に一度マンションに戻ってそのことをぼくに言ってね」

 娘は頷いて、そして友達と遊びに出かけて行った。
 しばらくして彼女のお母さんからラインが来た。ご飯を作ったから持っていきます、と。いやー、本当にありがたい、と思いながらその時間を待つ。

 五時前、再びラインが来たので、ぼくはマンションの下までおりてついでに後で娘を迎えに行こうと考えているときにお母さんが来られたので荷物を受け取って世間話をしているときにマンションの横の道路に娘の姿が見えた。

 ちょうど五時だ。ちゃんと約束を守って返ってきたんだと思いきや、娘は友達と玄関とは違う方向に行こうとする。
 ぼくは慌てて声を出す。
 駆け寄ってくる娘。

「今から○○ちゃん家に行こうと思って……」

 ぼくはどうしたものかと思ったが、ひとまず友達に謝って娘を連れて帰ることに。
 お母さんにお礼を言って、部屋に戻る。

「ねえ、約束覚えてた?」

 今にも泣きそうな顔。
 しかし、それはぼくも一緒だった。

 娘は頷く。
 そして謝る。
 ぼくも頷く。
 ぼくも謝る。

 ぼくは伝えた。
 もしきみになにかあったら、ぼくは悲しくてきっと自分をせめて死にたくなる。遊びに行くのが悪いんじゃない。ぼくの知らない場所に勝手に行ってもしなにかがあったらどうやっても探せないし連絡もとれないからその間にきみになにかあったら取り返しがつかないんだ。
 
 だから約束は守ってほしい。

 娘は頷いた。
 ぼくたちは抱き合った。

 もうすぐ彼女が帰ってくる。
 きっとそれまでに、ぼくと娘はまた一つ家族として成長している。

初めての娘と二人きりのときに叱ったけど、

胸が痛くなるね。

またよかったら後で話を聞いてほしい。

でもその前に娘の話をたくさんきいて、

そしてたくさん抱きしめてあげて。

家できみの帰りを待ってるよ。

今日も本当にお疲れさまでした。

愛してるよ。

初めての人生、予測できないことなんて多々起きる。

諦めよう。

生きるということは

楽しむということだ。

ゲームでもしているみたいに、

そのときそのといの状況をとことん楽しむからこそ

ぼくたちはきっと生きていけるんだ。

今日もありがとう。

今年も、残り94日。

またね。

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