詩「黄昏に乾杯を」
黄昏に乾杯を!
罪の意識なるや我が身を滅ぼせ
下らない色欲の焔を燃やせ
私は軽蔑する
目の前の惰性的な女と
その女の瞳に映る
いかにも気障でだらしのない
下卑た笑いを浮かべる金のない詩人を!
飲め
死ぬ気で飲め!
渇いた魂を潤すために
目の前が真っ暗になろうとも
お前は生きるしかないのだ!
――ドア
強固な扉を開け放て
空に飛び立つ無数の鳩が
万年床に糞を落とす
ああ 見ちゃいられない
黄昏は死んだ
首の長い女に殺されたのだ
頸動脈を爪で一掻き
まさか そんな
夢すらも見られないなんて!
鳴き声が聞こえる
ネズミが呼んでいる
地下深く流れる海底の
ヒステリックだった元カノの泣き叫ぶ声!
ああ
誰かが呼んでいる
誰かが私を呼んでいる
悲しみのセレナーデ
夢喰いの生臭坊主
遠く雲の上から聞こえる時計の針
チクタクチクタクチクタクチクタクチクタク
――無常
神は死んだのか
風呂場に向かう影に
昨夜の煙草が纏わりつく
寝癖のような朝日が昇る
歯を磨く
口内にこびりついた悪性の色を
何事もなかったかのように洗い流す
冷たい夏が歯茎に凍みる
あまりにも虚しい涙
なんというバカバカしさだ!
遠くに見える鳥がスピードを上げた
永遠の原風景は都会の男を溺れさす
美しいほどに弱かった幼少期
私は田舎の錆びた煙突のように
歯と歯の隙間から
海のような青空を仰ぐ
もういい
もういいんだ
力なく垂れ下がる右手を前に
私は私の瞳に嘘をつく
生きろ…
燃えるような空のように
追憶で死んでいった親兄弟親戚諸々のために
さあ
黄昏に乾杯を!
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※2021年6月の作品です。
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