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「初めての人生の歩き方――毎晩彼女にラブレターを」(有原ときみとぼくの日記) 第263話:私は幸せだ。

「幸福とは幸福を問題にしない時をいう」芥川龍之介


 なんだか久しぶりの平日のような気がして頭の中が休日の続きのような感覚だもんで、だから朝彼女と娘が家を出てから残った家事をぼんやりとやっているときもふと空を見上げては早く晴れてくれないかぁなどとのんきなことを考えていたのだけれども、私はなにも仕事がしたい訳では一切なく、それでもなにかをしなくてはいけないような気がするものだからしているだけで、とどのつまり私はたぶん今幸福なのだ。

 そんな日は仕事に没頭できる。
 いつもはだらだらとトイレに籠ったり買ってきたばかりの少年ジャンプをこれでもかと丁寧に読んだりするのに、こういうときは自分でも信じられないぐらいの集中力を発揮する。
 きっと集中力は自分の内側から出すものではなく、自分の周辺から空気のように吸着するんじゃなかろうか思うぐらい今日は集中できた。

 だから気がつけば夕方で、気がつけば娘が帰ってきた。

 そして娘が遊びに行くという。
 きた! と私は思った。
 先週、娘が友達と遊びに行くと言うのでこれだけは守ってほしいというのを作ったのだ。

 一、門限は五時。二、公園で遊ぶなら公園で。どこか違うところに行くのならい一度マンションによってその旨を伝えること。三、ぼくとママの知らないよそのお宅には勝手に行かないこと。

 しかし娘は先週これを以前破ったのだ。だから私は心配だったのだが、今日はそのまま娘の友達の家に遊びに行くという。それならと時間を確認し、向こうのお宅の場所も聞き、私の電話番号も渡してそして見送ったのだが、数分後にやっぱり公園で遊ぶと言いに来たのだ。
 約束を守っているというより、約束を覚えてくれていることが嬉しくて私は行ってらっしゃいと娘を見送った。

 思えば、私自身子供の頃は門限なんて守った記憶がなかった。好きに人の家に遊びに行き、適当な時間に帰って、怒られそうになったら嘘をついて誤魔化して……。

 本来は私はなにも言える立場でも大人でもないのだ。
 しかし私しかいないのだから言うしかなく、この言いたくないけどいうしかないというストレスを同居してから初めて経験しているのだが、なんとなくこの経験が多ければ多いほど自身の器が広がる気がしていわゆる「大きい人」になれる気がしている。

 だからきっと世のお母さん方は強いのだ。
 もちろんお父さん方も。

 そして時間を待っている間というのは、どうにもそわそわしてあれほどあった集中力もどっかへ飛散してしまったかのようになくなっていた。そのときの私は心配で不安だったのだ。

 もうすぐ五時。
 そのとき足音が聞こえた。

「ただいま!」

 娘が帰ってきた。
 私は感動した。なんという頭のいい子なんだろう。昔の私だったら間違いなく破っていたのに、と一人で感動に浸っていると娘の横に友達がいてその横にその子のお母さんが立っていた。
 私の表情が一気に余所行きになる。

「あー、初めまして! いつもお世話になっておりますー!」

 大人はときにダサくなる。それが大人のカッコいいところなのかもしれないが。
 友達とお母さんを見送って部屋に入る。娘を抱きしめる。「すごいね、よく返ってきたね! さすが! 約束守ってくれてありがとう!」といったところでお母さんがいたことに疑問を感じ「ずっと公園にいた?」と聞くと娘はもじもじしながら「途中で家に行ってた」と呟いた。

 そっか、そりゃそうだよね。

 私はなにも言いたくなかった。それでも言うしかない。だから叱った。褒めて褒めて、そして叱った。マンションによるのに1分もかからないのに、どうして言ってくれなかったの? と。もし帰って来なくて公園に探しに行って誰もいなかったらどこを探せばいいのか分からなくなるからすごくそれが心配なんだ……などなどとにかくなるべく怒らないように話をしたのだが、やはり私の心もギューッと誰かに鷲掴みにされているように苦しくなる。

 そして私たちはお互いに謝って抱き合った。
 きっとこの繰り返しで心は成長していくんだと思った。

 それから今、私はまた部屋に戻って、そして娘は宿題に取り掛かっている。
 もうすぐ彼女が帰ってくる。
 今夜の晩ご飯はなににしようか。

 私は今、とても幸せだ。

きみのいままでしてきた経験を少しでもできているのかと思うと、

それだけで心が強くなる気がするんだ。

本当にきみはすごいよ。

ぼくは本当にきみのことを尊敬しているんだ。

いつもありがとう。

きみが更に幸せになれるように心から願っています。

気をつけて帰ってきてね。

早くきみに会いたい。

初めての人生、思い通りに何ていいかないけど、

思い通りにいく人生はきっと何一つ楽しくないと思うんだ。

だから思い通りにいいかないということは、

ある意味思い通りにいっているということなんだ。

ん?

そうなのか?

よく分かんなくなってきたから、

こんどアメブロで考察してみます笑

今日もありがとう。

今年も、残り88日。

またね。

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