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「初めての人生の歩き方――毎晩彼女にラブレターを」(有原ときみとぼくの日記) 第242話:あの街にあの人たちにさよならを。

「このごとあたしは人間ってものにくたびれてしまって、人間をやってるのにも人間づきあいにも疲れてしまって、なんだかしみじみと、植物がうらやましい」『つきのふね』冒頭より 森 絵都


 久しぶりの大阪はなんだかひどい匂いがした。それでもなにも考えずに迷わずに前の家の前まで来れたのはまだ引っ越しをして日が浅いのとここにはあまりのも多くの思い出があったからだろうか。
 電車を降りたときからトイレに行きたかったのだが、まだ大丈夫だと思って我慢していた。それがどうしたことか以前のアパートの前についた瞬間に一気に尿意が臨界点を超えようとしたので、ぼくは慌てて下腹部に力を入れた。

 体が覚えている。

 そんな少し危ない独り言を言いながら、ぼくは目的の駄菓子屋まで歩いた。
 その駄菓子屋は昔ながらの駄菓子と文具を取り合っているお店でいかにも優しいそうな雰囲気の老夫婦が営んでいた。アパートの近所にあったのでぼくは少年ジャンプを買うために毎週のように通っていたのだ。
 そのお店は当たり前だけどよく子供も来ていた。今どきでは珍しく、子供が必死に小銭を数えながらおばあちゃんと一緒に世間話をしている。今はもう少ない昭和の景色がここにはまだ残っていた。

 引っ越しをする前に、挨拶をしようと思っていたけど、タイミングが合わずにできなかった。だからぼくは今日改めてきたのだ。ちょう月曜日でジャンプの発売日だったのもあり、図書館に行くついでに寄ったのだ。
 まだたったの二週間ぐらいしか経っていないのに、すでに何年も経ったかのような懐かしさが込み上げてくる。

「こんにちは!」

 奥でテレビを見ていた二人がこっちを見て、そして当たり前だけど以前となにも変わっていない笑顔で挨拶を返してくれる。

「今日は早いねぇ」

 ぼくはそこで引っ越しの旨を伝えた。
 もう多分ここには来れないことも。
 二人はなにも言わずにただ話を聞いてくれて、そしてそのあといつもと変わらない世間話をしてくれた。
 最後に変えるときに、振り返ったら二人が手を振っていてくれた。

 心の中にあったしこりが消えた気がした。

 ぼくはもう大丈夫。
 もうこの街に残してきたものはなにもない。
 人間として生まれて、人間として人と出会って、少しの出会うタイミングで出会いと別れは繰り返されていく。
 信号を待っているときに、沿道の雑草が風に揺れていた。

「こいつらもきっと同じなんだ」

 運なのか縁なのか、ぼくはたまたまこの街にきて、たまたま今の彼女と出会って、そしてたまたま一緒に生きていくことにした。
 ぼくに生えていた根はもう足になった。
 ぼくは歩いて行く。
 これからも、どこまでも、いつかの終わりまで。

 ありがとう、さようなら。

もう大丈夫。
ありがとう。
これからよろしくお願いします。

新しい街は自然が豊かできれいでとても住みやすいね。
なによりきみが傍にいてくれることが本当に嬉しく思うんだ。

ずっと夢見てきたこと。
まるで子供の頃の夢が叶ったかのようなそんな気持ちなんだ。

嘘じゃないよ。
だからぼくはもう迷わないんだ。

きみを愛してる。

おやすみなさい。

初めての人生でいつ誰にとこで出会うかなんてまったく分からないのに、なぜかいつもまるで図ったかのようにぼくたちはどこかで誰かと出会っている。

もし、

これを自分で決められるとしたらどうするだろうか。

もし、

これを自分で決めてきたとしたらどう思うのだろうか。

人生は人との出会いだ。

どんな人と出会っても、

向こうから見たら同じ思いだ。

誰しもが人生の主人公であり、

誰しもが人生の脇役なんだ。

うー、

めちゃくちゃ楽しいんだけど!!

今日もありがとう。

今年も、残り109日。

またね。

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