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「初めての人生の歩き方――毎晩彼女にラブレターを」(有原ときみとぼくの日記) 第244話:孤独の忘れ方を誰か知りませんか。

「人生で最も悲しいことの一つは、人は覚えているということです」アガサ・クリスティ -


 思い出はときに人を苦しめ、そしてときに人を変える。
 過ぎ去った過去を変えることはできないし、周囲に与えた影響を取り消すこともできない。
 だから思い出はいつか孤独の代名詞になる。
 それでもぼくたちは思い出に浸る。きっとぼくたちはなんだかんだ言って孤独が好きなのだ。人は生まれたときと死ぬときは一人だという。思い出だってそうだ。

 人は孤独だ。
 だからそれを忘れたいがために誰かを好きになる。

 今日は娘の授業参観の日。
 会社を半休した彼女が早々に帰ってきた。ぼくたちは二人で質素なランチを食べる。この家に引っ越してきて始めての二人きりのランチだった。お義母さんに頂いたメロンパンをかじっているときに、彼女が声を上げた。

「あっ!」

 なにかを怖いことを思い出したかのように固まっていた。ぼくは食べる手を止める。

「どうしたの?」

 彼女は自分の中でなにかを確かめているのかときおり頷きながらそしてようやく口を開いた。

「この光景、見たことがある」

 ぼくは少しゾッとして続きを促した。

「この光景、まだ実家にいるときに夢でみたの。二人でこうしてマンションにいてパン食べてた……」
「それはあれ? なんだっけなんとかってやつ?」
「デジャブ?」
「そうそれ! デジャブ! 日本語で既視感」

 彼女は少し微笑むと話を続けた。

「まだこのマンションに住むなんて決まってもなかったのに、はっきりと覚えてるの。いや、正確にはずっと忘れていた出来事をふとした瞬間に思い出したような感覚だわ。そっか、私たちはこうして一緒に住むことがはじめから決まっていたのかしれないわね」

 鳥の鳴き声が聞こえる。
 そして彼女はそそくさと娘の参観に出かけて行った。

 部屋に残ったぼくは一人で考える。
 どうしてバレてしまったんだろうか、と。
 人は思い出を忘れることができない。それは消すことができないのと同義なのだ。彼女はどうやらそのことを美化して思い出してくれたようだが、下手したらホラーになっていたかもしれない。

 ぼくは残ったみそ汁に口をつけた。
 そして明日の予定を手帳に書き始める。

「……そろそろ来年の予定も書いておこうかな」

 孤独は所詮思い出だ。
 だからぼくたちは人を愛する。
 その愛は決して誰にも改竄することはできない。
 決して誰にも……。

きみが今日言ってくれたその言葉、とても嬉しかったよ。

既視感。

もしかしたら本当にそれはきみが見た未来だったのかもしれない。

だからいまぼくたちはその未来にくることができたんだ。

ありがとう。

きみが好きだよ。

おやすみなさい。

初めての人生、不思議なこともとこいにはある。

ぼくも一度UFOをみたことがあるし、、、。

たぶん、、、。

世界は常識や科学では解明できなもので溢れている。

世にいうホラーやミステリー、それに恋愛やユーモアなんかもその一つなのかもしれない。

それらぼくたちを困らせるためにあるわけじゃない。

ぼくたちの人生をより豊かにするためにあるんだ。

うん、きっとそうだ。

だから怖いことなんてなにもない。

大丈夫。

ゆっくり歩いて行こう。

不安なことなんて本当は一つもないんだから。

今日もありがとう。

今年も、残り107日。

またね。

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