若手教師に板書スキルは必要なのか

このノートは、2年目になったばかりの高校教員による思考整理の為のメモです。また、小学校や中学校ではまた事情は変わってくると考えられます。

●とにかくICTを悪と捉えるベテラン教諭様たち

ICTを使用するということ自体に大きなプレッシャーを感じ、ICTは無駄な仕事を増やす諸悪の根源だと捉えている方はどんな職場にも一定数います。

中には、ICTを活用した授業をしようとする若手教員に対して、「若手なんだからまずは基礎の基礎である黒板の授業をしなさい!」と、若手教員にアナログを半ば強要する方もいたり…そしてそれは決してレアケースではありません。(直接言わなくても裏でそういう悪口を言っていたりw)

自分のこれまでの成功体験で物事を語り、それを否定されかねない新しいモノを嫌い、パワハラによって後輩に強要する、あまりにも視野が狭くとっても残念な上司だなあと思います。(かなりオブラートに包んだ)

●教育実習では板書の練習も必要

私は、教育実習先がICT完備(教室にプロジェクター、スクリーン有。生徒は一人一台タブレット所有。)だったのでICTをフル活用した授業をしたいと指導教諭に相談しました。すると、このようなことを言われました。

「たしかにICTを活用した授業はこれから大切だけど、まずは黒板をしっかり使った授業ができた方が良い。環境の整った学校に赴任できるとは限らないから。」と。

指導担当の先生は普段の授業でICTを活用されていて、その他のやり取りからも私はその先生をとても信頼していたので、先生がそう仰るのであればそうなのであろうと納得し、基本的には黒板を使って実習中の授業を行いました。そして、半年後にその言葉の意味を実感しました。

●板書に慣れておくことのメリット

たしかに、最初に赴任した学校では教室にプロジェクターもスクリーンも設置されていなかったので、黒板を使った授業をするしかありませんでした。その為、実習で板書の練習をしておいて本当に良かったです。

正直、板書に慣れておくことのメリットは、「どこでも授業ができる。」以外は特にありません。「先生が板書をしなかったら、『先生が楽をしている!』と生徒が考えて授業を聞かなくなる。」と、あるベテラン様から言われたこともありますが、とてもサンプル数の少なそうな話なのでスルーしましょう…。

●板書にこだわり続けることのデメリット

黒板にチョークで文字を書くことのデメリットは、

とにかく時間がかかる!そのわりにクオリティーは低い!手も服も汚れる!背が低いと上まで手が届かなくてすごく見ずらい板書になる!(私は折り畳み式の踏み台を持ち歩いて昇り降りしながら書いてました…)

デメリットだらけなんです。メリットは1つしかないのに。

これがパワポに切り替えると一気に解決するんです。

●パワポ授業に切り替えたことによるメリットと決定的な弱点

現任校では教室にプロジェクターが設置されており、最初はなんとなく教科の他の先生方のように黒板を使っていましたが、どんどん黒板に書く時間が無駄に感じられてきて、ほとんど使わなくなりました。

電子黒板的な機能は無いので、パワポにアニメーションをつけて板書を見せるのと変わりないスライドを予め作成しておき、それを提示しながら話をします。漢字の書き順を示す時や、生徒の発言をメモする時など、必要な時のみ使います。

とにかく時短です。

国語教師にありがちな、授業が始まる5分前に教室へ行って古文や漢文の本文を書いておくという作業が私は大嫌いでした。チャイムに間に合うかのプレッシャー、真っ直ぐ書けているかのプレッシャーなどなどで、授業が始まるころにはなんとなく疲れ切っています。連続授業だとトイレにも行けなかったり…。「休憩時間中に生徒に書かせればいい」なんて言う人もいますが、個人的には生徒の休憩時間は奪いたくないです。休憩時間は個人個人の休憩時間なので。

板書したいことが決まっているのなら、それは全てパワポで表示してしまえば良いです。最強に時短です。そしてその空いた時間で、生徒の様子をしっかり見ることができます

自分が授業で何を提示したかが完全に記録として残ることも、テスト後のトラブル対策になってメリットに感じます。

一つ決定的なデメリットとして挙げられるのが、黒板の横幅3分の1ぐらいしか一度に表示できないということです。黒板だけだと一面に収まる内容が、何枚ものスライドに分かれてしまう為、ノートを一生懸命書いている生徒に配慮が必要です。その時間の振り返りにも工夫が必要です。

●なぜ教師がICTをフル活用するべきなのか

子どもたちは将来かなり高い確率で仕事でPCを使うでしょう。今は存在していない、また新たなツールを使う可能性だってあります。一日の長い時間を一緒に過ごす私たちだからこそ、大人が新しいツールを積極的に活用して仕事をしている姿を見せるべきだと思います。

また、私は国語教師ですが、ICTをどのように活用してものごとを分かりやすく伝えるかということも、ある意味国語力の一つだと捉えています。その為、授業で使用するスライドは絶対に見やすいものにすることを心がけています。

なぜ得意でもないのにわざわざ非効率的でクオリティーも低くて手や服も汚れる黒板にこだわり続けないといけないのか全く分かりません。

先ほども書いたように、板書に適正がない教員が板書に慣れておくことのメリットは、どんな環境の学校へ行っても対応できることぐらいしかないんです。

●黒板しかなかったら黒板使ってやるか…ぐらいのノリで。

体感的には、板書のhow to 本を見ながら戦略を練って1か月も授業をしていれば黒板はそれなりにきれいに書けるようになります。それ以上は慣れ以上に向き不向きの世界な気がします。だから、実習生でないのならば、黒板しかない環境で授業をすることを考えるのは、黒板しかない環境に行ってからで良いと個人的には思います。

もちろん、自分は板書のクリエイトに向いていて、子どもたちにとってもそういった授業を見せる方が効果的で自分も楽しい!という方は黒板授業を続けるべきだと思います。手のひら返しみたいですが、一番大切なのは、先生自身が自分の得意不得意を見極めつつ、どのようにツールを使い分けることが生徒にとって最も効果的かを考えて授業を組み立てることです。

私のように、特段板書が得意でもないという方は、使えるICTを使わない理由は無いと思います。

●学校で使えるICTはどんどん活用して!

もし初任校がICT完備ならば、「今後もしかしたら…」とわざわざ黒板を使った授業に慣れるための練習なんてしなくて良いと思います。

使うか使わないか分からない上に非生産的なスキルの向上に時間を使うのは、あまりにもコスパが悪くないですか?目の前にあるICTを使えばいいのに、アナログで非効率的な授業に付き合わされる生徒の時間も無駄にしていることになります。

ベテランに反対されたら、一度、ICTだからこそできることを見せて、メリットを感じてもらうことが効果的です。(ただしやりすぎるとICTがめちゃくちゃ得意な人認定されて色々仕事が増えるのでご注意をw)

これまできっかけがなかっただけで、やってみるとICTの便利さにどんどんハマっていくベテランさんも案外多いです。若手教員がさも当然といった姿勢でICTを活用して、どんどん周りの先輩方を巻き込んで、学校の働き方もどんどん改善されたら良いなーと願っています。

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