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君が死んだ一年前と同じ、残酷なほど美しく、綺麗な夜だった。

空に打ち上がった花を憶えている。

海面は鏡のように反射し、一瞬の輝きを映しては消え灰が降り注ぐ。空に上がる抜けた空気の音、全身に響き渡り心臓さえも脅かすほどの爆発。咲いては消えを繰り返す夏の風物詩を見る人々は皆スマートフォンを手に一瞬を収める事へ躍起になっていた。

どうせ見返さないくせに。画面を通して空を見る人々を横目にそう思った。所詮SNSにあげるだけの映像。自慢、虚栄心、承認欲求に優劣。インターネットがある世の中が当たり前になって、多くの人の生活を覗き見る事が可能となった今、より良い生活を送っていると見栄を張る人間がほとんどで。等身大の自分がそこに映る事はない。

本当に美しいものはこの身体でしか感じられないと思っている。

空気、温度、音、色彩、匂い、衝撃。瞬き一度の間に過ぎ去った時さえ、その全てだと感じている。いくら写真を撮っても色彩しか映らないように、動画にしてもその瞬間に感じた空気や匂いは伝わらないように。

しかし残すのもまた一興だと思うのは、人は簡単に忘れてしまう生き物だから。脳は許容限界があって、新しい物を詰めていくには古い物から押し出されていく。

生まれてから今までずっと、人は無意識のうちに記憶をアップデートしてきた。バージョンが追い付かなくて消えた記憶はどれくらいあるのだろう。きっと、両手のひらを器にしても抱えきれないほどで、指の隙間からまた零れ落ちてしまうんだろう。

だから見返さなくても残すのは良い事なのかもしれない。もっとも、この場でスマートフォンを向けている人間のほとんどが自分が満ち足りた生活を送っているのだと見せびらかすためのものであるんだろうけど。

「爆弾みたいだ」

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