喪失
数年前に観た映画の中でこんな台詞があった。
「若い頃、私は人生とは得ていくものだと思っていた。でも今思うのは、人生は失うことの連続だ」(だいたいこんな内容)
また別のある映画監督はこう言っているそうだ。
「人は失ったもので構成される。人生は失うことの連続だ。失うことでなりたかった自分になるのではなく、本当の自分になれるのだ」
たしかに途中までは人生は獲得の連続だと思う。が、人によって差はあれど、ある時を境に急激に失うものが目立ち始める。若さ、時間、両親、これらは確実に失っていく。お金や友人も大なり小なり失っていくと言える。
自分が万能でないことを知り、時間が無限でないことを知り、欲しかったもの持っていたかったものは次々と手からこぼれ落ちていく。
寂しい気もするけど、悲しいことじゃない。引き算は大事。それこそ、失って失って失った先に本当の自分が現れるかもしれない。形あるものは死んであの世まで持っていけそうにないし、となると、この身滅びるその日まで自分の魂をピカピカに磨いておくことくらいしかできないんじゃないかなって。この世で拾ったものはこの世に置いていく。借り物の身体を返すように。
とまぁ、死んだ後のこと考えて生きるより、今を見つめて生きる方が良いと思うけどな。今を生きるを積み重ねて、死ぬ日を迎えたいものです。